2008年06月28日

HPV検査

子宮頚がんの発症原因は、HPV(ヒトパピローマウィルス)感染で、性交経験があれば誰でも感染の可能性があります。

その中で、高度〜中等度の危険群、とされるHPVは子宮頚がんの発がんに関連しているとされています。また低リスクのHPVは、尖圭コンジローマなどの病変を起こす、とされています。つまりHPVの種類によって、起こりうる病気が少し異なる、と言うことです。
また、高〜中等度の危険群、このHPVに感染したら必ず発がんするか、と言うとこれも必ずしもそうではありません。なぜなら、人間の身体には、免疫力、病気が出来ても自然に治る力が備わっているからで、発がんに関してもこの免疫力によって、極々初期のがんであれば治癒される、とも言われています。

現在HPVの検査法はいくつか行われています。一つ一つのHPVの型を判定するもの、高〜中等度のHPVがあるか、ないか、を判断するもの、低リスクの有無を判断するものです。一般的には、発がんが一番怖いので、高〜中等度があるかどうかをみる検査が行われています。ただし、これらの検査は、現在では保険適応がなく、自費で行われています。
子宮頚がん検査で一度でも疑陽性、すなわちclass III(IIIa)以上の判定をされたことのある方にはお勧めです。また最近では、これまでと同様に細胞診を行い、加えてこのHPV検査を行うと、子宮頚がん発生の発見が早くなる、とされ、自治体による子宮頚がん検査にも取り入れられているところがあります。

HPV検査は、1万円前後、かかると考えてください。検査は至極簡単で、子宮頚がんの細胞診の検査とほとんど同じです。産婦人科クリニック さくらでは、
・HPV(高〜中リスク):4,000円(料金改定しました)
・HPV(低リスク):4,000円(料金改定しました)
・HPV型判定:12,000円
で行っています。上記、HPVのリスク別検査ですが、一人でも多くの方に行っていただきたく、8,000→4,000円に改定しました。

6月から開始した女性健康外来でも検査のラインアップに取り入れ、結婚前のブライダルチェック、妊娠前のプレグナンシーチェックや性成熟期のリプロダクション・ヘルス外来で行われることが多いです。


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2008年05月06日

HPVワクチン

これまで子宮頚がんの、発症原因として、HPV感染がある、とお伝えしてきました。
また、HPVウィルスに対するワクチン接種、米国では既に開始しており、国内でも検討されている、とお伝えしました。

昨年末に子宮頚がんを予防するHPVワクチン(ガーダシル、Gardasil®)の承認を申請、と万有製薬が発表しました。

これによるとHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン、特に子宮頚がんの発症と関連のある高リスクHPVを含む、HPV6,11,16,18型のワクチンが臨床の場に登場、と期待されます。
子宮頚がん発症の主な原因はHPV16及び18型とされ、同じくHPV感染で発症する尖圭コンジローマの主な原因であるのは、HPV6及び11型で、これらのHPVの感染を予防するワクチンだそうです。
このワクチンは、海外における2万人以上を対象とした臨床試験において、HPV16及び18型に起因する子宮頚がん、外陰がん、腟がん、それらの前がん病変並びにHPV6及び11型に起因する尖圭コンジローマを予防し、また大きな副作用も無かったという結果が確認されています。

女性であれば、皆さん子宮頚がん、子宮頚がん検診については、気になるところだと思いますが、日本では毎年8,000人の女性に子宮頚がんと発症し、また残念なことに毎年2,500人が子宮頚がんのために亡くなっています。最近では特に20〜30歳代、ごく最近17歳の発症が報道され、性行動の低年齢化とともに、若い女性で増加していることが問題となっています。
現段階で、子宮頚がんを早期発見するには、検診を受ける以外に方法がなく、検診で異常を指摘された方、検診にオプションとして追加を希望される方には、これらHPV感染を受けているかの検査もできます。

このHPVワクチンは、2006年6月に米国、メキシコで承認され、現在までにEU27カ国、オーストラリア、台湾、カナダ、韓国など85カ国で承認されているそうです。
 米国では、疾病予防管理センター(CDC)が定める「子どものためのワクチン(Vaccine for Children, VFC)プログラム」に導入され、メディケイド(低所得者・障害者向け医療扶助制度)受給資格がある子どもたち、保険未加入または十分な保険に入っていな い子供たちに無償提供されているそうです。
またオーストラリアでは、政府によって、12〜26歳までの全ての女性がこの4価HPVワクチンを無償で接種できる予防接種プログラムが導入されているとのことです。

日本においても次世代の全女性にとって、福音となりうる可能性が期待でき、承認、投与が開始されると、婦人科検診のあり方や内容が、今後変遷していくかもしれません。


・関連記事一部修正
子宮頚がん検査のお勧め HPV感染??


さくらトリートメントの竹本さんのブログ、「ねむの木便り」が、お引越し、リニューアルしました。リフレクソロジーサロン「ねむの木」を開業されて、2周年を記念して、のことだそうです。
さくらトリートメントでも、「アロマテラピー無料講習会」や新しいサービスをさらに考案中です。
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2008年01月26日

子宮がん検診未受診者に警鐘

昨日の読売新聞夕刊に掲載された記事です。
子宮がん検診、初めて受診された方の子宮頚がん発見率は、再受診の方のなんと9倍にも上る、と「ちば県民保健予防財団」(千葉市、藤沢武彦理事長)の解析で分かったそうです。

一方で、記事によると初めて子宮がん検診を受ける「受診者数は全体の1割に低迷している」そうです。
つまり、子宮がん検診、9割の方が複数回受診しているのに、初めて、と言う方が少なく、また以前にも受けた方はやはりこれまで異常が見つからなかったため、がんが見つかることは多くは無く、一度も受けていない方には9倍も子宮がんが潜んでいる、と言うことです。

と記事を解説しながら、自分の経験でも思い当たることがありました。
「婦人科とは縁が無かった」とか「お産の後は婦人科受診する機会が無かった」と言う方。不正出血や性交後出血、痛みを感じて来院され、診察すると一目で子宮がんと分かるほど進行しているような場合。
検診を受けていればここまで進行するより前に、いえ、通常であれば前がん病変である子宮頚部異形成の段階で発見できたのに、と思ってしまいます。

昨年の開業以来、地元横浜市の患者さんを診療するようになってからも、健康意識の高い地域で皆さん気を遣ってらっしゃる、大きな病気を持っていない健康な方が確かに多いとは思うのですが、都内の患者さんと比べると、検診受診率が低いと感じました。
横浜市の子宮がん検診サービスをご存じない、または受診年齢を勘違いされている方も多く、それこそ産婦人科クリニック さくらで初めて受けられる方も沢山いらっしゃいます。

記事からの引用を続けます。
「調査対象は、(中略)27万4985人。(中略)3年間で85人に子宮がんが見つかり」「初回受診者の発見率は0・144%で、再受診者(0・016%)の9倍もがんが見つかった」「初回受診者数は(中略)受診者全数の11%しかいなかった」
「実施主体である市町村は過去にがん検診を受診した人にのみ個別に受診を呼びかけ、それ以外の人には、広報紙などで検診日程を掲載するだけの例が多いことが背景にある」

この最後の部分、これも大変重要な部分です。上に書いたように、横浜市の子宮がん検診ですが、実際には市や区の広報誌に掲載されているだけなのが現状で、自ら調べる手だてがほとんどない、ですから他の件で受診された際に、こんながん検診があります、と勧められて初めて受けるのでしょうね。
この点、記事にあるのと全く同感で、私も行政の広報に責任の一端があると思います。

再び記事から。「国は20歳以上の女性を対象に2年に1回、子宮がん検診の受診を勧めているが、全国の平均受診率は18・9%(05年度)に過ぎない。藤沢理事長は「がん検診は、未受診者に検診の意義や日程を知らせる工夫こそ大事だ」と話している」。私も全く同感で、そのためこのブログでも、クリニック内でも、皆さんに告知しているのです。ただ、この文にある2年に1回、は医療財政上の問題でこの間隔に設定されていますが、がんを未然に、前がん病変、または早期がんで発見するためには、1年に1回の検診が必要です。

そう、検診が受けられるのも、我々が必要、と考えているのも、20歳以上なんです。

耳にした噂ですが、17歳の子宮頚がん患者さんが発生したそうです。
posted by 桜井明弘 at 00:01| Comment(3) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする