2011年09月14日

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を打ったら、子宮がん検診は要らない?

2009年12月より、産婦人科クリニック さくらでも接種を行って来ているHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)ですが、我々が危惧しているような誤解が広がりつつあるようなので、正しい情報を共有して頂きたく、記事を書きます。

現在使用されているHPVワクチン「サーバリックス」は、日本の子宮頸がんの原因となっているHPVのうち、16、18番に罹らないよう予防する効果があります。

この16,18番は、子宮頸がんを起こしうる10数種類の高リスクのHPVの中でも日本では60%を占めるHPVです。
つまり、このワクチンを接種すれば、子宮頸がんの発症が40%くらいに低下させることが出来るのです。

さらに、近年の研究により、16、18のみならず、近縁のHPVまでも予防できる可能性が分って来ており、子宮頸がんの実に80%が発症しないで済むかもしれないのです。

ただ、この数字、決して100%では無いこと、お読みになればお分かりになると思います。

産婦人科医は、HPVワクチン+子宮頸がん検診をお受けになることで、子宮頸がんの発症を、少なくとも初期の段階で発見し、子宮頸がんによって亡くなる方を無くす、また、年々若年者の発症が危惧されている子宮頸がん、妊娠・出産を控えた方たちの発見により、子宮を取らざるを得ない悲劇を無くすことを目標にしているのです。

そんな活動をしている中で、最近当院に来院された患者さん。薬剤師の方で、当然我々からしたら、医療関係者ですし、何より薬のことは分ってらっしゃると思っていたのに、

私「子宮頸がん検査は最近お受けになりましたよね?」

患者さん「いえ」

私「じゃあ、今日は別件ですが、検査しておきましょうか」

患者さん「私、HPVワクチン受けたので、必要無いです」

私「...、でも予防効果は100%じゃないのはご存知ですよね?」

患者さん「はい。でもワクチンしたので、検査は希望しません」

このままでは堂々巡りになる可能性が大きいので、

私「それは貴女の考えですから、私も強制はできません。でも、貴女のように、プロフェッショナルの人が誤解していたり、それを周りの方たちに広めて欲しくは無いのです。お分かりですね?」

その後その患者さんは来院されなくなってしまいしたが、どこかで子宮頸がん検査を受けてくれれば良いのですが。また、私の「周りの方に、、、」の言葉は、医療情報について影響力のある人が、間違った情報を広めて欲しくなかった一心で伝えたのです。

このような患者さんが少なくありません。

ワクチンを受けた患者さんは勿論、助成対象の中高生ではもしかしたら意味がまだ分らないかもしれません。ですから一緒に来院されたお母さんたちに、一人ひとり、訴えて行くしかないのです

どうか、この記事をお読みの方たちは、誤解の無いよう、お願いします。

一人でも子宮頸がんを減らすべく、一緒に考えて下さい。


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2011年08月26日

子宮頚がん予防ワクチン接種を全年齢の方に対して再開します! 〜ガーダシルの接種を開始しました〜 〜ガーダシル料金を載せました(2011年8月28日)〜

こんにちはわーい(嬉しい顔)

大変お待たせしておりました、
子宮頚がん予防ワクチン接種
全年齢の方に対して再開をします
exclamation


予防接種は2種類ありますひらめき
現段階では以下のように接種が行なわれますexclamation

サーバリックス
対象者:横浜市公費助成の方。中1〜高2。
接種時期:半年間に3回接種。0,1,6ヶ月

HPV:16,18型
注意 @保護者同伴
   A全部公費で済ませたい場合、初回は9月中に接種を済ませてください。
   B来年以降は未定
   C完全予約制


ガーダシル
対象者:希望者→任意接種(キャッチアップ)世代のサーバリックスがないため、自動的にガーダシルとなります。
接種時期:半年間に3回接種。0,2,6ヶ月

HPV:16,18に加えて尖圭コンジローマの原因の6,11型も防げます。

接種料金
・1回につき、16,000円(税別)
・3回一括支払いの場合、47,000円(税別)
となります。いずれも初診、再診にかかわらず、診察料込です。

注意 @未成年の方は保護者同伴
   A基本予約無しで受けられますが、院内で接種後30分安静が必要なため、
    予防接種希望の場合は17時半までにお越し下さい。

   

全体的な注意
・新しいワクチンなので、接種後30分院内で安静にしていただきます。
・質問等は来院の上、医師に直接お尋ね下さい。


ご不明な点がありましたらお問い合せ下さい電話


関連記事のご案内です。

HPVワクチンで子宮頸がん撲滅

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を打ったら、子宮がん検診は要らない?

HPV予防ワクチン接種は痛い??

子宮頸がん予防ワクチン(ガーダシル)が不妊原因に、と言うデマについて

第26回国際パピローマ学会に参加して

posted by 桜井明弘 at 15:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月20日

子宮頚がんワクチン、無料接種対象の方の接種を再開しました!

こんにちはわーい(嬉しい顔)

子宮頚がん予防ワクチン(HPVワクチン)、サーバリックスについて、

横浜市から再度お知らせがありましたのでお伝えしたいと思います手(パー)

全国的に品薄状態とされていましたサーバリックスですが、

一定量が供給されるメドがつき、横浜市においても、公費助成の対象となるみなさん、

・平成23年6月10日より

高校2年生相当(平成6年4月2日生まれ~平成7年4月1日生まれ)の方を


・平成23年7月10より、

高校1年生相当(平成7年4月2日生まれ~平成8年4月1日生まれ)の方を

対象に再開しております。


・この度、平成23年7月20日より、原則として中学生相当

(平成8年4月2日生まれ~平成11年4月1日生まれ)の方も接種を開始出来るようになりましたグッド(上向き矢印)

上記をまとめますと、7/20からは中学生と高校1.2年生の初回接種再開となります。



しかしまだ、供給量が十分ではないため、助成対象の接種のみに限らせていただき、

任意接種を希望される方へはガーダシルを接種します。


中学生、高校1.2年生の方へ
接種回数 :3回(0、1、6ヶ月)
    
注意
   ◎横浜市の助成制度を利用してワクチンを接種する場合は、
   横浜市民であること、横浜市と契約した協力医療機関でお受け下さい。
   ◎横浜市であることを確認するため、本人・保護者の
   保険証や運転免許証・学生証を医療機関にお持ち下さい。
   ◎接種時は必ず保護者同伴のうえご来院下さい。
   接種には予約が必要です。
   ◎任意の予防接種です。ワクチンの効果、目的、副反応など十分理解した
   上で接種してください。
   


 ご不明な点などありましたら、お問い合せ下さい。
         産婦人科クリニックさくら 045-911-9936


追記:待ち時間短縮のため、土曜日のみサーバリックス接種時間を設けました。

毎週土曜日13時から13時半の間の受付であれば待ち時間が少なくご案内が出来ます。

ワクチン接種は予約制ですので必ずお電話にてご予約をお取り下さい。

接種について不明な点がありましたら、問診時に医師にお尋ね下さい。
posted by 桜井明弘 at 06:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月18日

子宮頚がん予防ワクチン(サーバリックス)が不妊原因となるというデマについて 〜2011年6月18日修正〜

以前に書いた記事は、国内ではまだ使われていないガーダシルの不妊デマについてでしたので、タイトルを変更しました。

今回は国内で使用されているサーバリックスについてです。

そういえば、子宮頚がん予防ワクチンについて反対していた団体が活動を休止したり、ツイッター上でもあまり不妊説がつぶやかれなくなってきました。やはりデマは一時的なもので、下火かな、と感じています。

サーバリックスには免疫賦活剤、アジュバントとして水酸化アルミニウムと、MPL(モノホスホリル脂質A)という脂質が含まれているそうです。どこからそういうデマが出たのか分りかねますが、これらのアジュバントでは、発がん性、不妊症ともに確認されていないそうです。

さらに、ラットに投与した際の生殖毒性(不妊となるか)についての試験でも毒性は確認されませんでした。

よくツイッターやネット上で、「アジュバントは愛玩動物の去勢(つまり不妊にさせる治療)に使われる」というものも散見しますが、免疫賦活剤としてのアジュバントにはこれまでそのような使い方をされているものは無いそうです。

これもよくつぶやかれていますが、「サーバリックスの重篤な副作用に、ラテックスアレルギーの方は注意」というものもあります。これはサーバリックスの薬剤によるものではなく、サーバリックスを投与する際に使われている注射器に、薬を押し込む生ゴムが使われていますが、生ゴム=ラテックスと言ってもいいもの。サーバリックスに限らず、すべての注射器に注意が必要ですし、サーバリックス投与前の問診票でもアレルギーについてチェックする項目があります。

最近の医学論文で、サーバリックス使用後3ヶ月間の妊娠では流産率が高い、というものがありましたが、これも他剤と比較して統計学的な有意差は無く、科学的には根拠がない、と判断されるものです。

どこからこのような噂が出始めたのか、分りませんが、科学的に証明されず、また我々産婦人科医の中でも、単なる誤った認識、と考えられています。

これまで産婦人科クリニック さくらでも、およそ100名ほどの患者さんにサーバリックスを投与してきましたが、大きなものは勿論、軽度な副作用もほとんどありません。

副作用と言っても注射剤ですから、注射部位の痛みくらいで、おひとりだけ注射後の気分不快を言ってらっしゃる方がありましたが、他の注射でも同じようなことが起こるとのことでした。
サーバリックスの痛みに関しては、こちらも御覧ください

確かに100%安全な薬、ワクチンは皆無と言っていいと思います。正しい知識、情報をもとに、その治療を受けるかどうかを判断してください。判断に迷った時には、我々医師が相談に乗りたいと思います。
posted by 桜井明弘 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月16日

子宮頚がんワクチン供給量不足について 〜2011年6月16日修正〜

子宮頚がんワクチンについての最新のお知らせです。

当院でも接種を行っている、子宮頚がんワクチン(サーバリックス)について、
全国的にワクチンが品薄状態となっており、新規接種をお受けしていない状況で、
ワクチンの入荷が夏頃と言われています
が、以下変更点があるため、該当される方は確認をして下さい。
 
 ◎1・2回目を既に当院で接種された方の残りの接種分は
  ご用意できていますのでどうぞご安心下さい。

 ◎平成23年6月10日より原則として
  高校2年生相当(平成6年4月2日生まれ~平成7年4月1日生まれ)の方を
  対象に再開することとなりました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
  無料接種対象である中1〜高1相当の方と任意接種を希望される方への再開につきましては
  ワクチンの必要量が確保された段階で改めて通知いたします。

 ◎上記無料接種対象の方たちは、現段階では今年9月までに接種を受け始め、
  最終接種を3月までにお受けにならないと3回すべての接種が無料とはなりません。
  ただ、現在ワクチンが不足し、流通していない現状のため、この措置はまだ未定と思われます。

詳細は決まり次第お伝えして行きます。
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2011年06月13日

子宮頚がん予防ワクチン助成接種再開のお知らせ

こんにちはわーい(嬉しい顔)

子宮頚がん予防ワクチン、サーバリックスについて、

横浜市からお知らせがありましたのでお伝えしたいと思います
手(パー)

全国的に品薄状態とされていましたサーバリックスですが、

一定量が供給されるメドがつき、横浜市においても、

平成23年6月10日より原則として

高校2年生相当(平成6年4月2日生まれ~平成7年4月1日生まれ)の方を

対象に再開することとなりましたexclamation


しかしまだ、供給量が十分ではないため、助成対象の接種のみに限らせていただき、

無料接種対象である中1~高1相当の方と任意接種を希望される方への再開につきましては

ワクチンの必要量が確保された段階で改めて通知いたします。



当院はこれらを受け、

@当面は横浜市在住の高校2年生のみ、予約をお受けします。

A供給量が十分でないため、予約を再度停止する可能性があります。

B任意接種の方、無料接種対象年齢の中1~高1の方は

ワクチンの必要量の確保が出来次第、接種を再開しますのでもうしばらくお待ち下さい。




かわいい高校2年生の方へかわいい
接種回数 :3回(0、1、6ヶ月)
    
注意
   ◎横浜市の助成制度を利用してワクチンを接種する場合は、
   横浜市民であること、横浜市と契約した協力医療機関でお受け下さい。
   ◎横浜市であることを確認するため、本人・保護者の
   保険証や運転免許証・学生証を医療機関にお持ち下さい。
   ◎接種時は必ず保護者同伴のうえご来院下さい。
   接種には予約が必要です。

   ◎任意の予防接種です。ワクチンの効果、目的、副反応など十分理解した
   上で接種してください。
   


 ご不明な点などありましたら、お問い合せ下さい。
         産婦人科クリニックさくら 045-911-9936


追記:待ち時間短縮のため、土曜日のみサーバリックス接種時間を設けました。

毎週土曜日13時から13時半の間の受付であれば待ち時間が少なくご案内が出来ます。

ワクチン接種は予約制ですので必ずお電話にてご予約をお取り下さい。

接種について不明な点がありましたら、問診時に医師にお尋ね下さい。

posted by 桜井明弘 at 12:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月26日

横浜市民公開講座 〜がんは予防できる時代〜(更新しました)

CCF20100927_00008.jpg10月9日(土)、
14時から16時、
慶應義塾大学日吉キャンパスで、
講演会が行なわれます。

協生館2Fの「藤原洋記念ホール」。

女子大生が活躍している子宮頸がん啓蒙活動を行う
リボンムーブメント」も共催で、
パネルディスカッションにも出られるそうです。
若い方が、若いうちから予防や検診をしなければならない
子宮頸がんの啓蒙活動を行なわれていることに、
共感を覚えています。


また横浜市立大学の宮城悦子先生、
第一線で活躍されており、お話が大変お上手です。
さらに「オレンジティ」理事長の河村裕美さん。
河村さんの講演、今日横浜市で行われ、拝聴しました。

地図.jpgご自身が子宮頚がんと告知されてからの日々、
そして子宮頚がん、乳がんの患者団体の設立、
さらにがん検診の啓蒙活動と、活動の場を次々と精力的に繰り広げ、
また子宮がん患者でなくては分らない身体の変化、
こころの変化から、
ぜひとも若い皆さんに子宮頚がん検診を受けてほしい、
という、切実な願いが伝わってきました。

ぜひとも、多くの方に耳を傾けていただきたい内容です。
posted by 桜井明弘 at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月08日

子宮頸がん予防ワクチン(ガーダシル)が不妊原因に、と言うデマについて

このブログの記事にも2人の方からの書き込みがありました。
Twitterでもこの話題が上がっているのをみると、思っているよりも多く世の中に出回っているのかも知れません。本当のことを知りたく、また皆さんに知ってほしいので、色々と調べました。現在まで分かっていることを書きたいと思います。

「子宮頸がん予防ワクチン」=「永久不妊」という図式を、根拠や出典もなく、または根拠に乏しいサイトを引用して、またデータや報告を誤解釈して不安を煽り立てる、もしくは不安に駆られている人たちがいらっしゃるように感じます。先日の予算委員会でも公明党の松たか子副代表が質問したため、ご存知の方も増えてきました。

それでもTwitterやネット上では、良識ある多くの方が「デマに惑わされないように」などと、啓蒙を続けてらっしゃいます。

さて、私が子宮頸がん予防ワクチン(HPV予防ワクチン)の普及に努めつつ、またその一方で不妊診療に取り組んでいる以上、上の図式が常識となっては、かつて麻疹ワクチンを駆逐し今や麻疹大国となったこの国の、ワクチンに対する心理的な「アレルギー」が全く改善されていない、全く進歩がない、全く経験が活かされていないことになりかねないと感じ、このデマの真相を私なりに探っていました。

いくつかみて行くとワクチンに含まれている免疫賦活剤、アジュバントが不妊をもたらすといった書き方が多いことに気づきます。さらに読んで行くと国内では未承認の4価ワクチン、ガーダシルのアジュバントに含まれる「ポリソルベート」がその原因であると。

ポリソルベート、我々もあまり聞きなれない薬剤ですが、果たして本当に不妊を引き起こすのか。ガーダシルに含まれているポリソルベート80は主たる薬剤の安定性をもたらすために添加されており、すでに多くの薬品や食品にも添加され、安全性が高いと言われています。

免疫賦活剤は、本来は目的とするウィルスに対する「抗体」をより多くより長い間産生し、ワクチンの効果を高める訳ですが、デマの大元は、ポリソルベートを 「免疫賦活剤」と位置づけています(この時点で誤っています)。そしてその産生された抗体が精子や卵子を構成するタンパク質に対する抗体である、とすり替えられているようです。
ここの根拠も実はよく分からず、人為的にすり替えたのか、または誤解からそうなったのか。
現にガーダシルの接種が不妊を誘発するというデータはなく、大規模臨床試験でもワクチン接種群とプラセボ(偽薬)群で、妊娠率、流産率に有意差はなかったとのことです。

ちなみにガーダシルに含まれている免疫賦活剤は、AAHSという物質だそうです。B型肝炎ワクチン、Hibワクチン、米国ではA型肝炎ワクチンなど、多くのワクチンにアジュバントとして使用されているため既に高い安全性が評価されています。

結局は「ワクチンの免疫賦活剤」→「抗体産生を高める」→「精子や卵子の抗体が産生される」→「精子や卵子が標的となる」→「不妊となる」という図式に発展し、最初に書いた「ワクチン」=「不妊」の部分だけが一人歩きしているように見えます。

その他の誤った情報については、近いうちに書きたいと思います。

医薬品、ことに色々なワクチンに対しては、新型インフルエンザの時もそうでしたが、いわゆる「ネガティブキャンペーン」というのがあり、とかく反対論が出るものです。

もちろん、新しい薬剤、ワクチンについては、既知の作用以外、ことに副作用が後で分かることも無いとは言えません。治療や投与により得られるメリットと、 極くわずかながら存在する可能性がある副作用を天秤にかけ、是非納得された上でワクチンをお受けいただきたいと思います。その際にご心配な点は、外来で遠慮なくご質問下さい。

私達が患者さんにお勧めするポイントの一つ、「この患者さんが身内だったら」。
このワクチンは、私は間違いなく身内に投与します。

これからもワクチンに関する情報を集め、皆さんにわかり易く情報提供出来たら、と思っていますので、忌憚ないご意見、ご質問を是非お寄せ下さい。

このブログ記事は、こちらの方の記事に接し、大変参考にさせて頂きました。改めて御礼申し上げます。
・follow after the truth 薬害:サーバリックス不妊説その1
・あんちういの時事速報 サーバリックス不妊説に関し、南出弁護士への公開意見書を送付しました
posted by 桜井明弘 at 01:47| Comment(30) | TrackBack(2) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月12日

第26回国際パピローマ学会に参加して

7月5日(月)より7月7日(水)まで、カナダ・モントリオールで開かれた第26回国際パピローマ学会(International papillomavirus )に参加して来ました。診療に支障を来たし、大変申し訳ありませんでした。

産婦人科医の中でも、この学会は「婦人科腫瘍学」の専門領域で、どちらかと言えば生殖医療や婦人科内分泌学、婦人科腹腔鏡下手術を専門とする私にとって、縁遠い分野であったとも言えます。
昨年末から開始されたHPV予防ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)が、今回の参加に大きく関与しています。

学会で見聞きしてきた事柄を、幾つか報告したいと思います。
ツイッターでも、「国際パピローマ学会 即席レポート」としてつぶやいていたので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょうか。

学会では、主催しているカナダや欧米の先進国からの報告が多かったですが、中南米、アフリカ、アジアの途上国からの発表も少なくありませんでした。
日本では世界的にもワクチン認可が極めて遅く、ましてや全面公費助成もまだ達成されていないため、この学会では日本からの発表がとても少なく、技術先進国としては大変残念で、これも新薬の承認に時間がかかる体制の負の部分だと感じました。

よって、日本ではまだ、公費助成を進めようとか、臨床的に果たしてどれくらいの効果があるのだろうか、みなさんも自分や家族が受けるべきか、などと議論されていると思いますが、国際学会では論点が大分異っていました。

国内で現在認可されているワクチンは、16、18型のHPVを予防する、「2価ワクチン」(サーバリックス)で、いずれこれに6、11型が加わった4価ワクチンが、認可される見通しです。おさらいですが、16、18は子宮頸がんを起こすハイリスクのHPV、6、11は低リスクに分類されますが、尖圭コンジローマを引き起こします。

今回の発表の中で、最もインパクトがあったのは、4価ワクチンのコンジローマ抑制効果。オーストラリアでは、HPV予防に4価ワクチンの全例助成が始まって3年。2年経過した所で既にコンジローマ発症率が18%から6%になったそうです。これはHPV予防ワクチンの、コンジローマ発症予防効果を実証する臨床データとして大きな意味のある発表でした。
コンジローマは子宮頸がんとは異なり、死に至る病気ではありませんが、しつこく再発する病変で、心理的にもダメージが大きい病気です。

その他、日本でも徐々に進んでいますが、性行動の多様化に伴い、オーラルセックスによるHPV陽性の口腔咽頭がんが増加傾向だそうです。ここには低リスクHPVによる良性腫瘍も出来ることがあり、呼吸困難や小児の突然死との関連との可能性も言われています。

また性行動との関連では、今のところ日本では余り発症が考えにくいですが、ホモセクシュアル男性のHPVによる、肛門がんも大きな話題の一つ。
日本はまだ女性の接種だけを啓蒙していますが、既に国際的には、男性に対する投与が話題です。
男性に対してHPV予防ワクチンを投与すると、男性の肛門がん、口腔咽頭がん、コンジローマの発症が明らかに低下する報告も相次いでいました。

その他、HPV感染から子宮の上皮内がん、進行がんへ進展する事が、喫煙と相関するという報告も注目されていました。
また日本でも子宮頚がん検査やSTI(性行為感染症、いわゆる「性病」)の自己採取キットが市販されていますが、HPV検査の自己キットも数多く展示。私は自己採取では、偽陰性が明らかに増えると思っていますので、基本的には反対ですが、キットによっては自己採取でも十分検査結果が信頼できるものもあるそうです。

その他、いろいろなテーマや議題がありましたが、多岐に渡るため今後アップしていきたいと思います。
posted by 桜井明弘 at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月26日

HPV予防ワクチン、サーバリックス接種始めました! 〜2011年6月10日修正〜

サーバリックスの接種を開始しました。

「サーバリックス」はHPVの予防ワクチンです。


子宮頚がんは全ての女性に起こり得る病気です。
また、子宮頚がんは発ガン性のHPV(ヒトパピローマウィルス)の感染によって起こる病気です。
HPVは性交渉によって感染しますが、男性が感染しても、命を左右する病気は発症しません。
性交経験のある女性の約80%が、一生のうちに一度は感染すると言われているほどありふれたウイルスなのです


サーバリックスの効果:サーバリックスは、HPV16型・18型の
   2つの発ガン性HPV感染を防ぐことが出来ます。
   しかし、発ガン性の型は他にもあります。
   そのためサーバリックスは
   全ての型の感染を防ぐものではありません。
   子宮頚がんの発症や前ガン病変を見逃さないためにも、
   ワクチン接種後でも定期的な子宮がん検診を行いましょう
exclamation

対象者:10才から45才までの女性。特に10歳から16歳くらいまでの、性交未経験の方への接種が強く勧められています。


接種費用:保険適用外のため、
     当院では、1回につき16000円(問診込・税別)、
     当院で3回受ける方に限り、exclamation
     3回セットで47000円(問診込・税別)です。



接種の注意:・この予防ワクチンは半年間に3回接種します。
       (目安は初回・1ヶ月後・初回から6ヶ月後です。)
      ・ご希望の方は予約をお取り下さい。

      ・受付にて問診票の記入がありますが、
       できるだけ事前に体温を測ってご来院下さい。
      ・接種は筋肉注射の為、注射に痛みを感じます。
      ・必ず問診と聴診をして接種しますので気になることがあればその際にお話下さい。

 

接種後:・ワクチンを接種した後、注射した部分が腫れたり痛むことがあります。
    数日間で治りますが、気になる事があれば病院までお問い合せ下さい。
   
    ・他のワクチンと同様、アレルギー症状が出ることもあるため、接種後は30分ほどクリニック内で安静にしていただきます。
    
    ・接種後1日は過度な運動は避けてください。

    ・接種当日の入浴制限はありません。


ご不明な点がありましたらお気軽にお問い合せ下さい電話

2011年3月10日修正
現在HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン、サーバリックス)の新規接種受付を休止しています。横浜市の助成金を受けられる高校1年生については、今後も受けられる予定です。詳しくは最新のブログ記事をご覧ください。


2011年6月10日修正

6月10日より、休止していたサーバリックスの供給が、一部再開される目途がつき、横浜市においても、
平成23年6月10日より原則として
高校2年生相当(平成6年4月2日生まれ~平成7年4月1日生まれ)の方を
対象に再開することとなりました

詳しくは上記のリンク先をご覧ください。
posted by 桜井明弘 at 09:00| Comment(15) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月16日

HPVワクチン発売へ

HPVワクチン発売へ。

いよいよ12月22日、HPV予防ワクチン、「サーバリックス」が、国内で発売されることになりました。

サーバリックスの特徴を挙げると、
・ 子宮頸がんの原因ウィルスである、HPV(ヒトパピローマウィルス) の血清型16,18に対する予防ワクチンであること。
・ ワクチン接種は3回、半年にわたり行うこと。最初の投与から1ヶ月後、6ヵ月後に同じワクチンを接種します。
・ 接種対象者は、10〜16歳の女性から、45歳以下の女性を念頭にしています。HPVは性交で感染するウィルスなので、性交未経験の女児に投与することが当初の開発目的でしたが、上に挙げたHPVに未感染の方ならどなたでも予防効果を発揮します。また、16,18のいずれかに感染している方も、他方の感染を防ぐことができます。
・ 予防効果はほぼ100%に近く、子宮がん検診と組み合わせることで子宮頸がんの発症を無くすことができます。
・ 対象である全女性が接種した場合、次世代では少なくとも16,18による子宮頸がん発症が皆無となり、子宮頸がんで治療を受ける女性が激減することが推測されます。国際的には、全員が公費負担で受けられる国、所得に応じて公費で受けられる国などが多いですが、残念ながら日本では現在のところ公費負担の目処が立っていません。よって全員が自費負担でお受けいただくことになり、数万円の負担は決して安いものではありませんが、これによって子宮頸がんのリスクを限りなく減少させる、ということは、ある意味では先行投資、万一罹患したときの肉体的、精神的、経済的ダメージを考えると、価値はあると思います。

当院でも同日より投与開始の準備を進めており、すでに数名の方から依頼されております。

ご質問等、診察室でも、スタッフにも、気軽にお声をおかけください。

・2009年12月18日一部修正
上記記事の中に「接種対象者は9〜16歳」としていたのですが、日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本婦人科腫瘍学会の「ワクチン接種のステートメント」に掲げられていた年齢で、今回承認発売されるサーバリックスは、上に修正したように「10」歳からを対象としていましたので、訂正します。
posted by 桜井明弘 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月04日

子宮がん検診、乳がん検診、無料クーポン

さる6月の臨時国会で、今年度の補正予算に盛り込まれた保健福祉対策のひとつに、子宮がん検診、乳がん検診の無料クーポン券配布が決定されました。

日本におけるがん検診の受診率の低さが問題とされていますが、子宮がん検診も例外ではなく、約20%程。
100%の女性が受けるべきと思いますが、政府目標の50%からも程遠い現状です。

すでに横浜市においても対象となる女性に無料クーポン券が郵送されました。

といっても、全女性が対象になるわけではなく、子宮頸がんの場合、今年節目に当たる20歳、25歳、30歳、35歳、40歳の方が無料対象です。通常横浜市の子宮がん検診をすでにお受けになっている場合、2年間はお受けになれませんが、クーポンをお持ちの方は、再度お受けになれます。また、今年すでに受けてしまった方も、クーポン券により、支払った1360円が返金されます。

乳がんは40歳、45歳、と60歳まで5歳きざみの方が対象となります。

対象となった年齢の方は好運ですね、対象外の方は不公平感を感じるかもしれません。確かに現在のところ今年限りの単年の施策のため、不公平は確かにあるのですが、国の考えでは、低迷するがん検診の受診率を向上させ、早期発見、早期治療を行うことが目的。まずは対象年齢の方々に無料で受けていただき、検診の重要性、必要性を広めて行きたいのです。繰り返しますが、子宮がん検診の受診率は現在約20%。国の目標は50%です。産婦人科医の立場から言えば、がんの早期発見のため、すべての女性にお受けいただきたく思っています。

衆議院議員選挙も終わりましたが、野党に転じた公明党がこの無料クーポンの継続をマニフェストで表明していました。

どうぞこの機会に対象となる方は是非、また対象外のご年齢の方も市の検診など、公費負担でできる検診もあります。一年に一度は最低でも検診をお受けください。
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2009年05月17日

HPVワクチン接種と妊娠

HPVワクチン、まだ国内では発売されていませんが、すでにいただいているお問い合わせの中に、「接種後いつから妊娠しても良いのか」と言うのがあります。

HPVワクチンは不活化ワクチンのため、インフルエンザワクチンなどと同様、ワクチンに含まれるのは病原性を持つものではないため、ワクチンによってその病気を発症することはありません。
同様の理由から、接種後に妊娠しても、お腹の赤ちゃんへの影響はありません。ただ妊娠中の接種は、ワクチンによって何も異常が起こらない、とまでは現段階では分からず、妊娠中の接種は避けたほうが良いと考えられています。

まだ国内での発売が認可されていませんが、このようなお問い合わせは調べた上で回答させていただきますので、遠慮なくお寄せください。


さくらトリートメントブログ、「ルームスプレー」。貴女もお気づきになりましたか?

ねむの木便り、「ラベンダー」、興味深いです。
ラベル:HPVワクチン
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2009年05月09日

HPVワクチン承認前の現況 〜第61回日本産科婦人科学会に参加して〜

4月3日から5日、桜咲く京都で第61回日本産科婦人科学会が行われました。
休診など、診療にご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。

様々な発表や講演を聴いた中のひとつ、HPVワクチンに関する国際シンポジウムが行われ、世界的なHPVワクチン投与の現況と、現在ワクチンの承認申請を出している日本の現況についての講演があり、大変興味深いものでした。

いくつかトピックス的に羅列すると
・ 国内での承認時期が年内から来年にかけて見込まれていること。
・ 現段階でなお、HPVワクチン接種を公費負担で出来ないか考えられていること、または保険承認されるよう交渉されていること。
 現在の国や自治体の経済状況からは、公費負担は困難であると、われわれの中でも共通した認識でしたが、国内でHPVワクチン承認に奔走されてる先生方が、何とか承認にこぎつけ、また公費負担の可能性を模索されているそうです。さらに厚生労働省だけでなく、公明党や民主党議員にも働きかけており、国民の健康福祉に意識の高い議員からはよい反響があるとのことです。

まだまだ子宮頸がん、HPV感染、HPVワクチンについては、皆さんに知っていただかなければならず、国内のトップリーダーたちが中央に働きかけ、同時に我々も広めていかなければならない、と思っています。


さくらトリートメントブログで「第6回なちゅらるHAPPY LIFE教室 バスボム&ミツロウキャンドル作り」のレポートがあります。

・「ねむの木便り」と「産婦人科クリニック さくら スタッフブログ」に5月12日(火)に行われる「第7回なちゅらるHappy Life 教室 リキッドソープ編」の予告が載っています。まだ定員に達していないようです。さくらのトイレにも手作りリキッドソープを置いていますが、興味のある方はぜひご覧ください。
ラベル:HPVワクチン
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2009年03月02日

HPVワクチンの効用

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウィルス、HPVには、その型が約100種類知られています。そのすべてが発がん性を持つわけではなく、発がん性に強く関与する型(ハイリスク)が分かっています。

今年から来年には使用可能となることが期待されているHPVワクチンですが、ハイリスクの型すべてに対する予防効果があるわけではありません。子宮頸がんの主な原因となるHPVの型、「16」、「18」に対する抵抗を獲得できます。その感染予防効果は非常に高く、米国のデータでは99%の予防効果が報告されています。

子宮頸がんにおける欧米でのHPV保有は、「16」、「18」が70%といわれ、日本ではその比率が若干低く、50〜60%で、「52」「58」の比率が欧米に比べて多いとされていますが、若い世代では「16」、「18」が多いようです。
では、HPVワクチンを投与しても、HPVウィルスの半分にしか効果がないか、というと必ずしもそうではなく、ワクチンには「交叉防御性」というものが認められます。すなわち、「16」、「18」に対するワクチンを投与することにより、構造の類似した他のHPV型に対しても予防効果が期待できる、というものです。
この交差防御性に関する臨床試験の結果、実際にどれくらいの割合で予防効果が認められるか、HPVワクチンの真価に期待したいと思います。


・子宮頸がん、HPVについての記事が多くなってきました。
これまで左欄、「カテゴリ」の中の「産婦人科一般」に含めていましたが、新たに独立させ「子宮頸がん・HPV」というカテゴリを作りましたので、記事をまとめて読む際に使ってください。

産婦人科クリニック さくら スタッフブログ、「3月4月の待合室の香り」紹介しています。
posted by 桜井明弘 at 23:57| Comment(4) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月01日

HPVワクチン 4価ワクチンと2価ワクチン

子宮頸がんの原因、HPV(ヒトパピローマウィルス)に対する、HPVワクチンには「4価ワクチン」と「2価ワクチン」があります。

それぞれの○価は、いくつのHPVの型に対するワクチンである、と言うことを示します。

現在各国で承認され、日本国内の発売が待たれているHPVワクチンは、4価と2価のものがあり、それぞれ子宮頸がん発症の高リスクグループである、「16」、「18」を対象とし、また4価は低リスクグループの「6」と「11」をも対象としています。

低リスクグループは、子宮頸がんを発症することはまれで、HPV由来の病変である、「尖圭コンジローマ」の発症に関与しています。

尖圭コンジローマは、膣の入り口の柔らかい粘膜や外陰部、時に膣内に、小さな乳頭状の腫瘤を形成します。「小さないぼいぼ」「つぶつぶ」と言う風に表現されます。
かゆみを伴うこともありますが、無症状であることも多く、婦人科診察で初めて指摘される方も多いです。HPV感染によるものなので、コンジローマが存在する状態では、パートナーへの感染も起こします。また悲しいことにコンジローマを治療しても繰り返し再発することがよくあります。

2価ワクチンがハイリスクを対象とした子宮頸がん予防に重点を置くのに対し、4価ワクチンは子宮頸がんのみならず尖圭コンジローマまで対象を広げたワクチンであり、投与を受ける際には、どちらのワクチンであるか知っておく必要があります。


メディカルモール・たまプラーザブログ、「地下に咲く花」は、ちょっといい話です。モール内の院長が集まる「親父の会」でも話題になりましたが、いまだにどなたか分からないのです。

さくらトリートメントの「3月の営業日について」、アップしています。

産婦人科クリニック さくら スタッフブログ、「健康Q&Aシリーズ 血の巡り」は、女性の皆さんなら、一度ならずも気にかかっていることではないでしょうか。
posted by 桜井明弘 at 23:34| Comment(2) | TrackBack(1) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月17日

HPVワクチンで子宮頸がん撲滅

HPVワクチンについて、以前に記事にしました。
ワクチンの承認申請をしている製薬会社の担当者の方とお会いする機会があり、情報交換を行いました。

これまで子宮頚がんの、発症原因としてHPV感染がある、とこのブログで繰り返し書いています。

萬有製薬が承認申請を出しているHPVワクチン(ガーダシル)は、対象が9歳から26歳となっています。またこのワクチンはHPV(ヒトパピローマウイルス)の中でも、特に子宮頚がんの発症と関連のある高リスクHPVを含む、HPV6,11,16,18型のワクチン(4価ワクチン)です。

すでに海外における2万人以上を対象とした臨床試験において、HPV16及び18型に起因する子宮頚がん、外陰がん、腟がん、それらの前がん病変並びにHPV6及び11型に起因する尖圭コンジローマを予防し、また大きな副作用も無かったという結果が確認されており、効果には大きな期待を寄せられています

このワクチンは産婦人科臨床医の立場としては、強く勧めるワクチンですが、果たして、日本国内でこのワクチンが広められ、投与されるのか、という点で幾つかの疑問点があります。

第一にワクチン(予防接種)という観点から、公費負担が受けられるか、国や自治体が一部でも負担をするか、という点です。現在の経済不況がさらに進み、また、いかに医療費を削減しようとしているか、という時代に、例えば9歳から26歳の女性を対象としたワクチン事業を国や自治体が取り上げるでしょうか。
医療経済的に試算しないと分かりませんが、ある年齢以下を公費接種対象にすると、理論的には数十年後にはワクチンの効果があるHPVをもつ女性がほとんどいなくなります。そうするとそのころには子宮頸がんにかかる女性が少なくなるので、子宮がん検診のシステムも大きく変わり、全女性が毎年受ける必要が無くなってきます。また子宮頸がんがほとんど発症しなくなると、現在子宮頸がん治療にかかる医療費の激減が期待されます。
何より子宮頸がんで苦しむ女性が激減することが大きいです。
子宮頚がん検診で異常を指摘されると、悪性の診断が下らなくても、たびたび細胞診や組織診を受けなければならず、そのたびに結果が出るまで不安な時間を過ごします。通院の手間や時間、コストも徐々にかさみます。
ひとたび重度異形成の診断が下ると、手術の対象となります。子宮頚部だけを切除する円錐切除や、初期の上皮内がんでは子宮摘出が行われます。さらにそれが進行がんとなると広汎子宮全摘術、子宮はその周囲組織を含めて大きく切除しなければならず、卵巣、骨盤内のリンパ節と手術範囲は大きくなります。広汎子宮全摘術では手術時の合併症もリスクとして高くなります。膀胱や尿管の損傷、手術時の出血は多くなり輸血を要することも多いです。術後、尿の流出が悪くなり、尿意の減少に悩むこともあります。たいてい術後は放射線療法が必要となり、最近では化学療法(抗がん剤治療)も行われるようになりましたが、放射線も抗がん剤も副作用、合併症が多いです。
手術が不可能な進行がんでは放射線・化学療法が行われますが、ここまで進行すると完治はほとんど望めません。
年間8,000人もの女性が子宮頚がんを発症し、こういった治療が行われているのです。また治療もむなしく毎年2,500人が子宮頚がんのために亡くなっているそうです。最近では特に20〜30歳代の前がん病変、子宮頸がんが増えているのが問題となっています。

第2の問題点は、接種費用です。開発国である米国で約360ドルほど、他の薬剤と同様、日本に輸入され流通されると、投与は50,000円を超える予想です。それだけ高いワクチンなので、自費診療で受けるのは誰にでも大きな負担となるでしょう。保険診療の対象とはならないため、自費か公費で全額、といわないまでも一部負担をして欲しいものです。なお、米国では、疾病予防管理センター(CDC)が定める「子どものためのワクチン(Vaccine for Children、VFC)プログラム」に導入され、所得に応じて無償提供されているそうです。フィリピンでは検診を行うほうが負担が大きいと判断し、国が国民に投与しているとのことです。オーストラリアでも、12〜26歳までの全ての女性が無償で接種できる予防接種プログラムが導入されているとのことです。

最後の問題点は、HPV感染が、日本人が苦手とする性の問題に関係していることです。
繰り返し書いていますが、HPV感染は性行為によって感染し、長期間にわたる感染状態が持続すると(時に短期間で)子宮頚部に前がん病変といえる子宮頚部異形成を形成し、やがて最初は子宮頚部上皮内がん(初期がん)、進行がんと進展します。
短絡的に考えれば、性交渉が将来の子宮頚がんの発症の発端です。ワクチン使用年齢の9歳以降の女の子に、「将来、性交渉をするようになり、子宮頚がんの原因であるHPVに感染するかもしれないから、今のうちにワクチンを使っておきましょう」という理論でワクチンを使います。

どうでしょうか、少々違和感を感じませんか?

ただ、性交を持つようになるのは人間として自然なことですし、日本では性の低年齢化が確実に顕著に現れているのも事実です。我々は現実を直視し、次代にHPV感染の惨禍を残さないようにしなければならない、これも現代医療とその技術を享受する我々が背負う、使命、とも考えられます。

私の夢のひとつに、HPVワクチンの開発、承認によってもたらされた、子宮頚がん撲滅が出来ました。
承認、投与が可能になったらこの夢の実現のために新しいプロジェクトを立ち上げたいと思います。


さくらスタッフブログ、「新型インフルエンザ対策」シリーズが始まりました。医療関係者だけではなく、国民全体の問題として共有していきたいと思います。
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2008年11月16日

ノーベル医学生理学賞にHPV、HIV発見者

今年のノーベル賞は、4人の日本人、南部陽一郎、小林誠、益川敏英氏の3人の物理学賞、下村脩氏の化学賞で大いに沸き立ちましたが、それに先立ち、ノーベル医学生理学賞が発表されました。
興味深いことに2種のウィルス、HIV発見した、リュック・モンタニエ氏とフランソワーズ・バレシヌシ氏、HPVを発見したハラルド・ツア・ハウゼン氏の3名の研究者が選ばれました。

HIV、ヒト免疫不全ウィルスは、AIDSを引き起こすウィルスとして知られています。一方でHPVの認知度はとても低く感じます。

HIVはAIDSを発症すると、現在では治療法がありますが、死に至る恐ろしい病気、このためしばしば取り上げられます。

一婦人科医として、HPV発見者が選ばれたのを嬉しく思うのは、HPVの重要性が確立した、と言う点です。
このブログでは何度もHPVを取り上げていますが、ヒトパピローマウィルス、HPVは子宮頸がんを引き起こすウィルスです。
子宮頸がんも進行すれば当然命を落とす病気ですし、HIVよりもずっと感染率の高いウィルスです。しかしなぜHIIVに比べてその存在が知られていないのでしょうか。

HPVもHIVと同様、性行為で感染します。パートナーがHPVを保有していればうつされる可能性があります。
HPVは男性にはがんを作ることはありません。女性だけです。HIVと異なり、感染からがん発症までは数年から10年ほどかかるとされています。もちろんそれよりもずっと早い可能性もあります。
またHIVと異なり、がん化に時間がかかるため、その間の検診などで前がん病変、早期がんの状態で発見することができます。

このように、HIVに比べて経過が緩除である点、女性に病気を引き起こす点、などが原因のためか、知られていないものと思われますが、そのウィルスの保有率、将来がん化する危険性、子宮頸がんの頻度(有病率)を考えれば、むしろHIVよりも着目されてしかるべきだと思いますし、われわれも一層の普及活動、啓蒙活動をしなければならないと感じています。

どうか皆さん、少なくとも年に1回の子宮がん検診だけは、必ずお受けください。またHPV保有の検査も出来ますので、外来でお問い合わせください。


画像 1546.jpg

↑クリックすると大きくなります。
「倒木更新」で、親木を苗床にして育った新しい木です。
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2008年09月14日

がん征圧月間 2008年9月 〜がん検診でがん撲滅を!〜

9月は「がん征圧月間」です。この記事は昨年の記事を一部修正してアップしています。

がんの征圧には、様々な治療の開発、発がんの研究などが大きな役割を持ちますが、一方でわれわれが健康を享受し、がんにならないためには規則正しい生活や喫煙、節酒が勿論必要です。
しかしながら、人体にがんが発生するのは100%防げるものでは有りません。

これまでお伝えしてきたように、がんの治療、予後は早期のがんと進行がんでは大きく異なります。

いかにがんを早期に見つけるか、子宮頚がん子宮体がんのように「前がん病変」といえる状態のうちに発見し、それ以上進行しないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか。

答えは「がん検診」です。

婦人科の3大がん検診は
子宮頚がん
子宮体がん
卵巣がん
です。

子宮がん卵巣がん.jpg.JPG

それぞれ発生する可能性がある方は異なります。

子宮頚がんは以前書いたように、HPVというウィルスが原因です。これは性交渉で感染するため、性交渉の経験が有る方は1年に1回お受け下さい。HPVが感染してすぐに発がんするわけではないので、年齢の目安は20歳です。最近、当院を受診される20代前半の方でも前がん病変が数人見つかっています。出産や閉経を迎えても検診の対象となります。

子宮体がんは子宮内膜のがん化。40歳代から閉経後に見られ、不正出血が症状として見られます。また超音波検査で子宮内膜が非常に厚い場合、不整に見える場合、子宮内膜ポリープがある場合は検査をお勧めします。
若年性体がん」といって、まれではありますが、20,30歳代くらいでもみられることがあります。無排卵周期の方にみられ、数ヶ月生理が来ない方や不正出血がある場合には検査を行います。

卵巣がんは原因がはっきりしませんが、10、20歳代でみられる「胚細胞腫」といわれるもの、20歳代以降、40-60歳代をピークに発症する卵巣がんがあり、やはり全年齢が対象になります。

検診の方法もそれぞれ異なり、いずれも内診が必要ですが、

「子宮頚がん」は子宮頚部の細胞診、綿棒でこするので痛みはありません。
「子宮体がん」は子宮内膜の細胞診、内膜細胞を採るため、多少の痛みがあります。
「卵巣がん」は経腟超音波検査。性交経験のない方は肛門から診たり、お腹から診ることもあります。通常痛みは有りません。

よりよい、効果の高い治療の開発や研究は、研究者や医師の努力によりますが、自分の身体は自分で検診を受けることが必要です。

是非1年に1回の検診をお勧めしたく、がん征圧月間である今月は、産婦人科クリニック さくらでもがん検診を啓蒙して行きたいと思います。

当院で行っている女性健康外来もあわせてご覧ください。
posted by 桜井明弘 at 23:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月01日

7月は、「子宮頚がん検査、再確認しましょう」 〜産婦人科クリニック さくら 診療キャンペーン〜

7月は、「子宮頚がん検査、再確認しましょう」

6月は、新しく開始した女性健康外来、キャンペーンを行いました。
多くの方にお受けいただき、皆さんの健康意識増進に少しはお役に立てたかな、と思います。またお受けいただかなかった方にも、検査の意義やラインナップを、少しでも知っていただけたかと思います。

女性健康外来は、通年お受けになれます。これまで産婦人科クリニック さくらに通院していたものの、こういったアプローチで健康チェックをしなかった方も、今後もいつでもお受けいただけるので、ぜひ診察室で、またはスタッフにご相談ください。

さて、桜井加那子医師が書いたように、20代、30代の癌死のトップが子宮頚がんであることに大変反響をいただきました。

子宮頚がんは、もう何度も書いてきましたが、検診を受けることにより、いかに前がん病変で捕らえるか、または早期がんの状態で診断をつけるかが重要です。
HPV感染、と言う点から、現在のところ有効な予防法がなく、やはり検診が第一です。

外来診療をお受けいただいていると、お気づきかと思いますが、よく我々からの質問・説明に「前回の子宮がん検診はいつですか?」「1年以上経ってますから検査をお勧めします」「前回6ヵ月後に再検査、とありましたね、そろそろ6ヶ月になりますよ」というのがあります。
ご本人が忘れないように、結果説明の際には次回の検査予定を告げていますが、検査時期を迎えても検査がもれてしまうことがあります。ご本人も忘れてしまっていることがありますよね。

そこで今月はこういった検査の漏れがないように、皆さんも、われわれも再確認をしましょう。子宮頚がん死トップ、正直恐ろしい現実です。

HPV検査については、型判定で説明しましたように、一つ一つのHPVの型を判定するもの、高〜中等度のHPVがあるかないか、を判断するもの、低リスクのHPVの有無を判断するの3種があります。発がんが一番怖いので、高〜中等度があるかどうかを見る検査が最も多く行われています。
ただし、これらの検査は、現在では保険適応がなく、自費で行われています。

産婦人科クリニック さくらでは、今月の子宮頚がん再確認キャンペーンに伴い、一部価格改定を行い、一人でも多くの方にHPV検査も行っていただけるよう便宜を図りました。

・HPV(高〜中リスク):8,000円→4000円
・HPV(低リスク):8,000円→4000円
・HPV型判定:12,000円

子宮頚がん検査で一度でも疑陽性、すなわちclass III以上の判定をされたことのある方にはお勧めです。また最近では、これまでと同様に細胞診を行い、加えてこのHPV検査を行うと、子宮頚がん発生の発見が早くなる、とされ、自治体による子宮頚がん検査にも取り入れられているところがあります。

HPV検査も子宮頚がんの細胞診の検査と同様、子宮頚部を綿棒で擦過するだけです。
posted by 桜井明弘 at 01:21| Comment(2) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする