1月17日の
厚生労働省の発表を受け、朝日新聞、NHKをはじめ、多くのメディアで取り上げられたので、ご存知の方も多いと思います。
この話題は12月半ばより浮上してきていました。
発表内容は、当院でも処方している月経困難症改善薬(低用量ピル)、
「ヤーズ」を服用している3名の女性が、昨年血栓症のため亡くなった、というものです。
治療の副作用で生命を落とされた事は大変重く、ご遺族の方々にも深く哀悼の意を表します。
低用量ピル(OC、LEP)は避妊や月経痛の改善に限らず、様々な
「副効用」があり、当院でも多くの方が服用されております。
もちろん100%安全な薬ではなく、その最も重篤な
副作用が「血栓症」です。
今回の報道にもあったように、最も重い場合は亡くなることもありますし、生命に支障が無くても、血栓溶解剤を長い間服用しなければならなくなることもあります。
当院ではこれまでも血栓をはじめとした
副作用対策を行ってきました。
これは国内のOC処方ガイドラインでは、問診のみで血液検査は不必要、とされているにもかかわらず、当院で処方している患者さんたちには血栓症を絶対に起こして欲しくないからです。
また、血栓症が増えてくる
40歳以降の患者さんには処方を開始しない、また他の代替治療を提示しています。
この1週間、多くのヤーズを服用されている患者さんたちからの質問を受けたため、その回答をまとめました。
そのご質問は主に次の2つです。
・ヤーズは危険なのか、血栓で亡くなってしまうのか
・他のピルに変更した方がいいのか
まず、一番目の質問に対する回答として、ヤーズを服用されている患者さんの数をみてみましょう。
厚生労働省の資料から、ヤーズは発売後3年余りの間に、推定で18万7,000婦人年の処方があります。
幾つかのサイトでこの数字が誤って書かれていますが、これは1年間にヤーズを13 シートを使用すると仮定した場合の推定使用患者数で、これまでに、とか、昨年1年に、と言う数字ではありません。
つまり年間に18万人以下の方が服用されています。
今回亡くなった方は3名の方。多くの方は特に大きなトラブルも亡く服用されていることに留意して下さい。
さらに低用量ピルよりもずっと血栓症のリスクが高いのが、妊娠、出産です。
誤解を恐れずに書くと、血栓が怖くて低用量ピルを服用しない、と言うことは、血栓が怖いので妊娠出産を希望しない、とことになります。
また複数の医療機関でも指導されている、「ヤーズが他の低用量ピルよりも血栓のリスクが高い」と言うことはまだはっきりと分かっていません。
これは調査発表された論文によって、「ヤーズは他の低用量ピルよりも血栓の高い(後ろ向き試験)」とか「ヤーズと他の低用量ピルの血栓リスクが同等(前向き試験)」と、異なるのですが統計学的には、後者の方が信頼性が高いです。
いずれにしろ、血栓症の発症頻度が低いため、多くの患者さんのデータを集計しなければならず、なかなかはっきりとしたことが言い切れないようです。
是非とも国内での大規模な調査研究を行って頂きたいものです。
患者さんの皆さまに知って頂きたいのは、
・ヤーズを服用していても、今すぐ多剤に変えたり、中止したりする必要はありません。
・血栓の初発症状を知り、対応しましょう。
血栓の症状は以下の通りです。足下から覚えて下さい。
1.ふくらはぎや膝の後ろの痛み
2.四肢の脱力、麻痺
3.息切れ、息苦しさ、胸の痛み
4.激しい頭痛
5.視野狭窄(視界の一部が見えにくい)、嗅覚異常、構語障害(しゃべりにくい)
これらの症状が出る場合には、直ぐに連絡を頂くか、連絡が付かない場合には服用を中止して、なるべく早く当院、または救急医療施設に連絡の上、受診して下さい。
・医師が処方を制限したり、服用の中止を勧めることにしたがって下さい。
・当院ではOC/LEPを服用されている場合、上記に示した
副作用対策として、服用中の血液検査を行っていますので、必ずお受け下さい。
この期間、ヤーズをサイトで購入している方も受診され、質問されました。
国内のヤーズは医薬品であるため、医師の処方箋が必要ですが、タイなど海外から直接送られてくるそうです。
サイトを見ると、「トラブル、健康被害には一切関わりを持ちません」のような責任放棄。
また、国内で医薬品指定されているものは、医師または薬剤師の免許が無ければ輸入することが出来ません。
このような販売方法が違法であることは明確であり、それを購入している方も法に抵触するのか現在調査中です。
何よりサプリメントのような食品とは異なり、医薬品である以上、医師、薬剤師の指導が無ければならないため、このような販売形態、購入する姿勢には危惧を感じています。
コンタクトなども販売されているようですが、健康に関するものは、値段だけで無く、きちんと管理してもらうことを強くお勧めします。
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