2008年04月17日

子宮内膜症治療の保険適応低用量ピル、「ルナベル」が承認されました。

昨日「ルナベル」が厚生労働省から承認されました。

OCの子宮内膜症治療効果について触れましたが、これまでOCは避妊目的に承認されていたので保険適応外でしたが、今回承認された「ルナベル」は保険適応され、「子宮内膜症による月経困難症」が適応となりました。
内膜症があって生理痛と闘ってきた患者さんにとっては福音となると思います。

「ルナベル」は、「オーソM」と同じ成分で、一相性のOCです。
薬価は未定なので、患者さんの負担額がどれくらいになるか、明らかではありませんが、適応となる患者さんはきっと多く、話題になることと思います。

(2008年6月6日補筆)
「ルナベル」の薬価が決定されました。実際の発売、処方が可能になるのも近日中だそうです。

(2013年9月、「ルナベル」の名称が、「ルナベルLD」に変更されました)


この記事へのリンクをアップしました。
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜


さくらトリートメントの竹本さんのブログ、女性の皆さんの多くの悩みの一つである、「フットケア・その2」について書かれています。


・産婦人科クリニック さくら スタッフブログ、子宮がん検診の結果の見方を一部修正しました。あわせてご覧下さい。


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2008年02月23日

ロイコトリエン拮抗剤補筆

子宮内膜症薬物療法の一つとして、話題になったロイコトリエン拮抗剤について書きましたが、誤解を招くような部分があったので補筆します。

ブログ掲載の時期が、子宮内膜症治療薬として新しく発売された「ディナゲスト」と同時期であったためか、両者を混同させてしまったようです。

ディナゲストは黄体ホルモン剤で、内膜症に対する治療効果が認められ、保険適応のある治療薬として認可されました。
一方、ロイコトリエン拮抗剤は、製薬会社が内膜症治療のために研究開発、発売をしているのではなく、一部の研究機関が内膜症組織の研究から、治療効果の可能性があると考え、内膜症患者さんに投与したところ、治療効果があったと発表、話題になりました。
この場合のエビデンス(科学的根拠)レベルは、比べようも無くディナゲストが上で、ロイコトリエン拮抗剤は、そのような発表があっても、治療効果の可能性とまでしかいえません。内膜症治療にあたる婦人科医師の中で普遍的な治療法として認知に至っていません。

現に内膜症に対する保険適応も認められておらず、内膜症患者さんに処方する場合は、自費処方となります。

アレルギー性鼻炎や気管支喘息と診断されている方は、これらの治療薬として保険適応がありますので、保険で処方が出来ますが、この場合の処方も、かかりつけの内科や耳鼻咽喉科で、処方について同時に相談していただきたいと思います。

関連記事更新
子宮内膜症の治療、ラインナップ
ロイコトリエン拮抗剤 〜子宮内膜症の治療法〜


産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんが待合室のアロマ、ブレンドしてくれています。ご存知でしたか?
1月末からの産婦人科クリニックさくらの待合室の香りもお読みください。
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2008年02月20日

子宮内膜症 再発時の治療

手術療法や薬物療法によっていったん治癒、または軽快した子宮内膜症が再発、あるいは再燃した場合、どのような治療をすべきでしょうか。

術後に再発した場合、よく質問されるのが、「また手術をしなければならないか」というものです。
通常、治療後のフォローアップの期間に再発が見つかるため、再発病変も本当に再発か? といった小さな病変のことが多く、再発=治療再開とはなりません。
ここが良性疾患とがんなどの悪性疾患との大きな違いだと思います。

良悪性疾患の進行.jpg

図にあるように良性疾患、内膜症も含めて、その病気の進行は階段式です。
進行する時期と変わらない時期があり、今ある病変がその後も悪くなり続けるとは限りません。これは再発、未治療のいずれでも言えることです。

原則、手術療法を行う方は、以前の内膜症の治療法にあるような子宮または卵巣摘出ではない、内膜症病巣摘出術を、根治手術と考え、2回目以降の治療を行う必要が内容と言った姿勢で我々も治療に臨みます。手術であまりにも病巣を摘出する際のリスクが高い場合、どうしても残存病変ができてしまう場合、手術自体は予定通り根治に近い形で行えた場合、それでも再発は免れません。
薬物療法も同様で、再発、再燃ともに起こりえます。

ただ、術後、薬物療法後のフォロー中に、比較的小さな、初期の病変で見出せた場合、前回と同様の治療まで要さない、あるいは治療が必要ないことが多いです。再発に対する治療は初回診断時の治療の適応とほぼ同様で、

・その疾患による症状などの弊害が生じている。
 ex.
  鎮痛剤が無効な疼痛(月経困難症、排便痛、性交痛、慢性骨盤痛)
  内膜症が明らかに不妊の原因となっている
・現在無症状でも、近い将来、たとえば妊娠を希望した場合、妊娠した場合など、明らかに障害を生じる可能性がある場合
・大きい病変、あるいは増大する速度が速く、上にあげた二つの条件に近い将来達する可能性が高い場合

です。

またその患者さんの状況に合わせた他の適した治療法がある場合が多いため、個々に相談しながら治療法を考えて行きたいと思います。

内膜症はとても再発率が高い疾患で、また女性のQOLを左右する、妊娠を考えているなどライフスタイル、人生設計に治療法が左右される病気ですので、心配な点、疑問な点は何なりと遠慮なく仰ってください。
繰り返しますが、個々に対応した対策・治療法を相談いたしましょう。



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2008年02月15日

手術療法 〜子宮内膜症〜

最近アクセス数が急増している子宮内膜症のシリーズです。

本日は手術療法を書きます。他の治療との比較は「治療のラインナップ」を、また「治療の適応」に関しては現在執筆中です。


1.単純子宮全摘術

文字通り子宮を摘出する手術法ですので、将来的に妊娠を考えていない方が対象になります。しばしば周辺臓器、卵巣・卵管や直腸、膀胱の癒着があるため、手術時間が長くなったり、出血量が多くなったりする場合も有ります。


2.卵巣摘出術(付属器切除術)

上記1.に加えて卵巣を摘出する方法もあります。また子宮は温存し、卵巣のみを摘出する方法があります。
卵巣摘出後は閉経の状態になりますから、月経そのものがなくなり、また内膜症病変は改善します。予定よりも早い年齢で閉経になるため、どうしても癒着がひどく子宮の摘出にリスクが高い方が対象になりますが、この場合は卵巣も癒着に巻き込まれていることが多いです。


3. 卵巣のう腫摘出術

卵巣チョコレートのう胞を摘出する術式です。最近ではほとんどが腹腔鏡下に行われるようになりました。しばしば卵巣・卵管の周囲の癒着を伴うため、これらの病変も同時に治療されます。
卵巣の正常組織は温存されるため、術後の排卵、妊娠は可能です。
肉眼的に見つからない小病変が残る可能性もあり、こういった病変が再発(再燃)につながることもあります。


4.(付属器周囲)癒着剥離術

内膜症ではしばしば卵巣・卵管周囲癒着を形成し、重症な例では膀胱、直腸などの癒着も形成するため、子宮や卵巣に明らかな内膜症病変が無くても、この癒着を剥離する目的に手術を行うことがあります。
卵巣・卵管の癒着は主に不妊症疼痛の原因となり、直腸の癒着は月経痛、排便痛、性交痛、慢性骨盤痛の原因となります。
ほとんどは腹腔鏡下に行われますが、あまりに高度の癒着が予想される場合や直腸に浸潤する内膜症が存在する場合は開腹手術が選択されることもあります。


5. 腺筋症病変摘出術

内膜症手術ではオプション的な存在です。基本的には腺筋症の手術は子宮摘出が選択されます。腺筋症病変のみの摘出は非常に再発率が高いため、手術のリスク、侵襲を考えるからです。
妊娠希望があるのに、他の方法で疼痛の改善が見られない場合、腺筋症に起因する流産を繰り返す場合に選択されます。


これらの手術、手術のみを行うこともありますが、多くの場合、手術中の出血、手術時間の短縮、手術の完遂を目的に、術前に偽閉経療法を行う場合があります。
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2008年02月14日

子宮内膜症の再発

子宮内膜症は、良性の疾患でありながら、しばしば再発、また時として転移するため、「良性のがん」、という表現をされます。

内膜症治療の根治術は、治療のラインナップでも触れたように、子宮または卵巣の摘出手術です。厳密に言うと卵巣摘出で、エストロゲン分泌がなくなるため、閉経後と同じホルモン状態となり、これにより内膜症は再発をしません。子宮の摘出は、内膜症がもたらす症状の多くが月経痛、性交痛、排便痛、慢性骨盤痛などで、これらは子宮を摘出すると改善が期待できますが、卵巣が機能する限り卵巣チョコレートのう胞卵巣周囲の癒着をもたらす可能性が残ります。

さて、「再発」と表現するからには、一度は根治を目指した治療が終え、内膜症病巣がすっかり無くなってから再度内膜症病変が出現した状態を指します。
手術により、卵巣チョコレートのう胞、周囲の癒着、これらの病変が摘出しきったはずなのに、ある一定期間経過すると同じような病変が術後の経過中にみられます。

内膜症の術後再発はいくつかの医学論文も発表されていますが、おおむね、3割の方に再発が見られる、とされています。

私が再発に驚くのは、手術前に偽閉経療法を行い、これは手術時の根治性を高めるためですが、手術を終了、手術時には内膜症病変がすっかり無くなります。術後1〜3ヵ月後に、偽閉経療法後の月経が開始しますが、第1回目の月経の後の診察で再発を疑う病変を見つけることがあります。
再発の時期はたいてい半年から1、2年が多い印象です。
また、年齢の若い患者さんほど再発の率が高く、20歳くらいまでは8割くらい、25歳くらいまでも半数近くの方に見られます。また手術時に内膜症の病気が進行しているほど再発率が高く、これは上に挙げた様な発表でもよく言われることです。

ここで「再発」としているのは、「再燃」とは異なります。医学用語で「再燃」とは、病変が再び活動性を持つことで、内膜症であれば手術時に摘出できなかった病変が術後に再び大きくなってくる、または薬物療法で病変が小さくなった、または超音波など画像上無くなった(様に見える)のに再度増大する、という場合で、治療により内膜症病変がすっかり無くなったわけではない状態です。

では、そんなに再発率が高いのであれば、あえて手術などしなくても良いのでは、といった意見があり、最近では治療による副作用も軽い低用量ピル(OC)が内膜症の第1選択、とさえ言われてきています。

OCによる治療、確かに効果の高い方も多いですが、反対にOCを服用していても内膜症が進行したり、月経痛などの諸症状が改善しない方もあります。

また妊娠を希望されている方、QOLが著しく障害され、日常生活に支障をきたしている方、既に病変が大きく、このまま放置できない状態の方はやはり手術の適応となります。

我々も手術を選択した以上は、子宮や卵巣を摘出する根治療法でなくても、根治を目指し、手術前に偽閉経療法を行った後、手術に臨み、内膜症病変を徹底的に無くそう、という姿勢で治療を行っています。


関連記事一部補筆
生殖医療の相談・検査・治療
不妊スクリーニング検査 〜内診・経腟超音波検査・子宮頸がん検査〜


産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんが、ブログで書かれている「冷え」について、お読みいただいてますか?
冷えチェック、是非どうぞ!
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2008年02月07日

ロイコトリエン拮抗剤 〜子宮内膜症の治療法〜

子宮内膜症に対する治療法として、手術療法と薬物療法がありますが、薬物療法の中に、アレルギー治療に対する治療薬、ロイコトリエン拮抗剤が3年ほど前に読売新聞で取り上げられ、注目されました。

以前このブログでも、内膜症は「炎症」に似ている、と書きましたが、アレルギー反応ではその中で炎症が起こっています。抗アレルギー剤を用いることで、炎症を抑えることが可能で、つまり内膜症においてもその活動性を抑制できる可能性が示唆されます。
報道されている記事によれば、アレルギーに深くかかわる「肥満細胞」が内膜症組織に多く見られ、ロイコトリエン拮抗剤は肥満細胞を抑制しやすいのだそうです。
また内膜症の患者さんが、アレルギー性疾患を持っていることが多いそうで、両者の関わりの点からもロイコトリエン拮抗剤の効果が期待されています。
さらにロイコトリエン拮抗剤服用後に手術を行うと、内膜症特有の癒着組織が剥がしやすくなり、手術中の出血や手術時間の短縮につながったそうです。副作用は少なく、胃がもたれやすくなる程度、とも。

ここまで書くと、夢のような内膜症治療薬? と思ってしまいますが、我々産婦人科医師の中でも、EBM(科学的な根拠がある治療法)が得られているとは思えない、と言うのが一般的だと思います。産婦人科医師の学術団体である、日本産科婦人科学会が編纂している「子宮内膜症取り扱い規約」でもそうですし、国際的にも知れ渡った治療法、と言うわけではなく、治療効果の可能性がある、とまでしか言えません。

ロイコトリエン拮抗剤についてまとめました。

ロイコトリエン拮抗剤.jpg

上記の価格は薬価です。気管支喘息の治療目的に処方する場合は保険適応となるので、その3割負担となります。服用方法は気管支喘息の場合で、まだ子宮内膜症に対する至適量は明らかではありません。
また薬価は2008年4月の診療報酬改定で変更になる可能性があります。

内服方法から判断すると、シングレア、キプレス(これらは全く同じくすりで、発売元で名称が異なるだけです)に軍配が上がりますね。価格面ではアコレートを40mg/日服用するのが最も安価です。副作用的なものはどの薬剤もほとんど同じですが、注意点として、妊娠・授乳中の影響を添付文書から拾ってみました。

内膜症治療としてのロイコトリエン拮抗剤の利点の一つに、治療中に妊娠が可能であることです。
偽閉経療法ディナゲストOCはいずれも妊娠中の投与が禁止されていますが、そもそも治療中は理論的には妊娠をしません。ロイコトリエン拮抗剤は服用中に妊娠が判明したらすぐに中止すれば、いずれの薬剤でも臨床的には問題なさそうです。

効果としては、自治医科大学附属さいたま医療センター婦人科の発表では、約7割の患者さんで、内膜症の疼痛が軽減されたそうです。効果が強かったのは、症例数が少ないためエビデンス(科学的根拠)レベルが低いもののオノンよりもシングレア、キプレスだったそうです。


子宮内膜症の治療法.jpg

現段階での薬物療法の効果、副作用を除いてランク付けすると、以前の「子宮内膜症の治療法」で掲げた表を再掲しますが、偽閉経療法(GnRHアゴニスト)、ディナゲスト、低用量ピル(OC)に次ぐ? 鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症剤、NSAIDs)、漢方療法、女性ホルモン作用のある健康食品より上位にランクされるかな、という印象です。
偽閉経療法で内膜症が増悪することはほとんどないといってよく、OCでは軽快傾向を示すことが多いですが、内服中に増悪することも経験します。鎮痛剤の一部では効果が示唆されていますが、漢方療法や健康食品はほとんどエビデンスがなく、効果ある方もあるかもしれない、位で、我々としては積極的に治療法として勧めるものではありません。

この抗アレルギー剤ですが、鎮痛剤と同等、もしかするとOCと鎮痛剤の間に入るかな、というのが私の印象です。あるいは他の方法と併用することにより、効果を増強できるかもしれない、とも思われます。

ただ、これはEBMが得られていない、治療経験がない、と言う段階のものなので、内服治療を希望される方、興味のある方には相談していきたいと思います。


ロイコトリエン拮抗剤について補筆しました。あわせてお読みください(2008年2月23日)

関連記事
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜 (一部補筆)
不妊と子宮内膜症 その原因 (一部修正)

記事タイトル修正
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産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんが、万病の元、「冷え」について執筆を始めました!
産婦人科クリニック さくらの患者さんのこと、こんなに考えてくれています
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2007年12月17日

子宮内膜症と疼痛

子宮内膜症の病態 〜「炎症」と「癒着」〜 で、これらの病態が痛みを引き起こす、と紹介しました。

「生理痛」=「子宮内膜症」ではない、と書きましたが、それでも子宮内膜症患者さんの多くが生理痛、月経困難症に悩まされています。子宮の周囲に癒着性病変が形成されている場合、特に直腸のある子宮の後方や、卵巣など側方の癒着が月経痛に深く関与しています。
また子宮腺筋症は、子宮内膜症の中でも特に、強い月経痛を伴うことが多いです。どんな鎮痛剤もOCも効かず、偽閉経療法を行っても終了後にすぐに再発、どうしても我慢できず「子宮をとってください」と相談にみえた、結婚後間もなく、まだ妊娠の経験がない患者さんが涙ながらにお話されたことが忘れられません。この方は腺筋症の病変を部分切除しましたが。

月経痛以外の「痛み」にはどんなものがあるのでしょうか。
特に重症の子宮内膜症では、子宮後面に直腸が癒着した場合、「排便痛」や「性交痛」がみられます。排便痛は月経のときにみられ、ひどくなると月経と関係なく痛みます。便は、小腸から大腸に入り、どんどん水分が腸から吸収され、水様から泥状、腹部左側の下行結腸にいたって、ほとんど固形となり、これがS状結腸、直腸と通過して排出されます。つまり、子宮と癒着した直腸に、固形の便が通過する際、排便時に子宮との癒着部分が引き伸ばされ、痛みとして感じられます。同様に性交時には、この部分が刺激されますので、やはり痛いのです。
ひどくなると月経痛よりこれらの痛みのほうが辛く、女性のQOL(Quality of life、生活の質)を低下させる大きな因子となっていることもあります。

内膜症が進行し、さらに癒着の程度がひどくなると、月経痛、排便痛、性交痛の程度もますます重くなり、やがて、「慢性骨盤痛」に至ります。
痛みは生理と関係なく起こり、ほぼ慢性的に鎮痛剤を服用しなければならない方もあります。

子宮の前面には膀胱があり、これらが癒着しているとき、「排尿痛」があり、膀胱炎と勘違いすることがあります。排尿時だけでなく、尿を我慢して膀胱に尿がたまるとこの部位の癒着が引き伸ばされ、痛みを感じる方もあります。

その他、これは明らかに言われているわけではありませんが、私が内膜症患者さんたちから聞く症状で、「排卵痛」が強い傾向がある気がします。排卵痛はご存知の通り、排卵時に感じる下腹痛で、敏感な方は、どちらの卵巣から排卵しているか、分かるそうです。排卵痛は生理現象の一つで、月経痛と比べて軽いことが多く、鎮痛剤など治療することは少ないですが、重い症状のため、内膜症治療をすることもあります。

子宮内膜症による痛み、痛みだけを対象とするなら、治療法の第一選択はやはり鎮痛剤です。他の理由から、手術や他の治療法が優先されることもあります。
治療法の詳細に関しては、鎮痛剤も含め、今後書かせていただきます。

前にも書いた、子宮内膜症が女性のQOLを低下させる2大症状、「不妊」と「疼痛」の後者について触れました。内膜症のある方は勿論、これは内膜症症状かな?と思われる方、また内膜症のない女性、男性にも、内膜症がいかにQOLを低下させるか、が、少しでもご理解いただけたら、と思います。
患者さんにとっては、病気の特徴と症状の原因を理解し、個人個人の状況、価値観、症状に適した治療法、疼痛管理が必要と考えています。
posted by 桜井明弘 at 10:25| Comment(44) | TrackBack(8) | 子宮内膜症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月12日

子宮内膜症は増えているのか?

よく内膜症の特集などで、「子宮内膜症は増えている」と言うフレーズを目にします。実際にどれくらい前と比較しているのか明らかではなく、現在の患者さんたちのお祖母さんたちの時代と比較したらどうか、もっと近年のお母様方の時代では、と考えますが、内膜症という病気の概念がなかった、もしくは乏しかったため、当時の内膜症の発生率などは分かりません。

「内膜症は生理のたびに悪くなる」これもよく耳にしますが、これは本当だと思います。もちろん進行の速さや、再発の有無など、個人差がありますし、同じ患者さんでも内膜症が進んだり止まったり、また進んだり、と生理が来ているときでも一概に言えません。また「妊娠すると内膜症がよくなる」も本当で、妊娠で内膜症が治ったり、進行が止まったり、と言う患者さんをよく経験します。
「産むと生理痛が軽くなる」とは言われてきたことで、これを考えると、昔からきっと内膜症はあったのでしょう。

現代女性は上の世代の方々と比べると食生活の欧米化などで明らかに栄養状態がよく、初経年齢が早まっています。また進学や就職があるため、結婚年齢が上昇し、初産年齢が30歳を超えました。妊娠回数は少なく、出産は多くて3回くらいでしょう。さらに平均的な日本人の閉経年齢は52歳だそうです。これに対し、上の世代の方々は個人差があるものの、初経が遅く、まもなく結婚し、妊娠、出産をしました。出産の後、すぐにまた妊娠、と出産回数が多く、また閉経が早かったです。
こう考えてくると、現代女性と上の世代の女性では、最も異なるのが生涯の月経の回数です。「内膜症は生理のたびに悪くなる」が真であれば、現代女性のほうが内膜症にかかりやすい人生を送っている、といっても過言ではありません。
他に増えている理由として、以前にも触れましたが、数年前にはダイオキシンなど環境ホルモンの影響があるのではないか、と大分騒がれました。確かに土壌汚染など環境の悪化により病気が増えている、と言うのはわかりやすいですし、センセーショナルです。当時はこれを単なる統計的なデータとしてだけではなく、実験的に証明すべく、各方面で研究も盛んでした。
最近あまり学会発表も目にしなくなりましたが。

現代女性に内膜症が増えている最も大きな要因は、上に挙げた、月経回数が増えたことによる、と思われます。
posted by 桜井明弘 at 00:53| Comment(2) | TrackBack(2) | 子宮内膜症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月28日

子宮内膜症の病態 〜「炎症」と「癒着」〜

子宮内膜症の原因、分からないことが多いのですが、内膜症により引き起こされる病態は、主に「炎症」と「癒着」がキーワードです。

内膜症の病変は、細菌の感染を起こしているわけでもなく、「炎症」という組織の変化がもたらされているのとは厳密には異なりますが、あたかも慢性炎症のごとく、病変の進行と沈静化が繰り返されています。

「炎症」の起こった組織はやがて「癒着」を形成します。

「炎症」「癒着」ともに、疼痛の原因となります。

子宮や卵巣の周囲で一番痛みに対して敏感な組織は腹膜です。
内膜症の「炎症」的変化によっても、形成された「癒着」によっても、腹膜は痛みを感じます。

卵巣にチョコレートのう胞が発生している場合、ほとんどの方で、卵巣周囲の癒着、ことに骨盤の壁にあたる腹膜への癒着が見られます。さらに卵管との間や子宮の後壁、直腸など腸管との間にも癒着を形成します。とくに腹膜、子宮後壁、腸管との癒着は痛みが強いようです。

「癒着」はこのように痛みを生じるほか、その臓器の機能を損ねます。
例えば卵管が癒着していると、不妊の原因となります。卵管は卵子を取り込み、精子を通し、受精卵を作る場であり、さらに受精卵を子宮に送る役割を担う、妊娠成立のためにとても大切な臓器だからです。

このように前に述べた「子宮内膜症の女性のQOLを低下させる2つの症状」すなわち「疼痛」と「不妊」は、「炎症」と「癒着」によって引き起こされている、といえます。


*不妊症の原因の一つ、「卵管因子の原因」をアップしました。


*女性の病気について、分かりやすくまとめられたブログTBして頂きました。
posted by 桜井明弘 at 23:33| Comment(40) | TrackBack(7) | 子宮内膜症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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