2008年07月03日

卵巣膿瘍 〜卵巣チョコレートのう胞への感染〜

卵巣膿瘍(のうよう)とは、卵巣に膿、つまり「うみ」がたまった状態を指します。

卵巣はお腹の中にある臓器で、外部との接触もないため、あまり感染を起こすところではないはずです。しかし一度感染を起こすと、なかなか抗生物質も効きにくく、手術的に膿を排出しなければならないことも多いです。
原因の第一に卵巣チョコレートのう胞が挙げられます。
細菌はどこからやってくるのか、血液に乗ってわずかな細菌が卵巣までやってくるのか、隣接する腸の壁を通じて細菌が入り込むのか、その患者さんによっても異なるでしょうし、まだ定説があるわけではありません。よって防ぎようもないのですが、チョコレートのう胞は卵巣に血液が貯留した状態なので、細菌にとっては格好の栄養源があることになります。

ほかの原因に、体外受精を行う際の採卵があります。経腟的に卵巣にある卵胞を穿刺するため、腟内の菌を卵巣に移植するかたちになるのです。ですから採卵前には、しつこい、と思われるほど腟内の消毒、洗浄を繰り返していますし、採卵の後に抗生物質を感染予防の目的に内服していただいています。

症状は腹痛、発熱で、進行すると腹膜炎に伴い全腹部に痛みが波及し、あたかも虫垂炎に伴う腹膜炎のようになります。

治療の第一は卵巣にたまった膿を排出する手術、ドレナージ術ですが、まず抗生物質の投与が試みられることが多いです。抗生物質だけで炎症が治まり、手術を避けることもできますし、手術をするにしても、細菌感染が沈静化してからのほうが、術後経過を改善し、再発を少なくします。
ただ、手術的な方法に踏み切るタイミングを逸すると、感染が重症化します。現在でも重症感染から敗血症、多臓器不全やショック、そして不幸な結末を迎えることもあるのです。よって、治療法の選択とそのタイミングはとても重要で、また難しいことがあります。

また手術法もドレナージ術にとどめるか、可能であれば卵巣摘出を行うかという選択、卵巣摘出を選択できない患者さんで、残すべきか切除すべきか、の選択もあり、その患者さんの将来も見据えて多くの問題点を抱えた疾患といえます。


関連記事補筆修正
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜
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2008年06月14日

健康食品 〜ピクノジェノール、子宮内膜症による月経痛の治療法〜

「ピクノジェノール」というと、男性の私よりも女性の方はずっと耳にする機会が多いかもしれません。

薬品ではなく、さまざまな効果が期待される健康食品で、国内でも多くの種類が販売されています。

持田製薬からも発売されており、同社からピクノジェノールの資料を提供していただき、その効果について調べてみました。

ピクノジェノールは「フランス海岸松」の樹皮より抽出された成分とのことです。既に35年間もの販売実績があり、大きな副作用などの報告は見られていないそうです。

国内に限らず、国際的にも広く使われている傾向がある健康食品で、その効果は
1.抗酸化作用(病気や老化の原因である活性酸素から守る)
2.抗炎症作用(体内の炎症、痛みを和らげる)
3.美肌効果(コラーゲンに結合して保護)
4.血流改善、血小板凝集抑制作用(血管内一酸化窒素産生を促進)
といった機序によりもたらされているようです。

期待できる効果は、話題のメタボリックシンドローム、月経困難症(子宮内膜症によるものを含む)、更年期障害、日焼け、気管支喘息、骨関節炎、創傷治癒、肩こり、浮腫(むくみ)などで、メタボリックシンドロームでは高血圧、血栓症、高脂血症(脂質異常症)、糖尿病、に効果があるそうです。更年期障害ではほてりや発汗を始め、さまざまな身体症状、うつ症状、不安感、不眠症、腰痛、膣の乾燥、性への不満など、すべての症状に効果があるとされています。
実際に私も患者さんから効果を聞かれることもあるのですが、不勉強であったため良し悪しについては触れませんでした。

ここまで書くと、わたしがピクノジェノールの宣伝をしているかのようですが、まだピクノジェノールに対する私の意見は定まっていません。健康食品ではありますが、医学論文も出ており、かといって効果がある、と科学的根拠が確立されたわけではありませんが、もしかしたら今後、効果が期待できる治療法の一つになるかもしれません。

残念ながら医薬品と比べると、健康食品は、医学的検討の対象になりにくく、また製造元も医療機関へのPRをしないため、我々も評価対象としにくいのが現状です。

むしろご使用になられた皆さんのご意見をお聞きして勉強していきたいことの一つ、と思っています。


今回の記事で、長い間書き続けてきた子宮内膜症のシリーズを一旦終えます。
しかしながら、後で考えると書き足りないこと、新しい知見もあり、今後は記事内容を再考しながら補筆修正もしていきたいと思います。


・関連記事修正
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜

・桜井加那子医師記事「今月のきらきら人」、アクセス、コメントを頂いています。
今後もブログに登場していきます。乞うご期待ください。


さくらトリートメントの竹本さんのブログで、産婦人科クリニック さくらの待合室の紫陽花、「ミセスクミコ」が紹介されています。


産婦人科クリニック さくら スタッフブログ、連載中です。
「小旅行、」では、楽しい画像が載っています。
またスタッフブログも、おかげさまでアクセス数急増です。
いよいよ1万位台に入ってきました!
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2008年06月06日

子宮内膜症治療薬「ルナベル」薬価決定

子宮内膜症に伴う月経困難症の治療薬、低容量ピル(OC)の保険処方が可能な「ルナベル」の承認についてお知らせしましたが、ようやく薬価が決定したそうです。

1周期21日で服用する計算で、1周期2100円+処方代、となります。約3000円弱、といったところでしょうか。
現在自費処方されている低容量ピルは、大体2000円から5000円で処方されているため、負担が軽くなる方もあるかと思います。

ただ、保険で認められた新薬ですので、処方は1か月分、が処方単位となり、発売から向こう1年間は何か月分も処方できる、ということはありません。
それでも通常新薬は14日が限度。ルナベルに限って、特別に1ヶ月の処方が認められたのは、21日内服、1週間休薬、というOCの特性に合わせて、新薬でも1周期分処方の認可を求め続けてきた日本産科婦人科学会や子宮内膜症協会、製造販売元の製薬会社の尽力の賜物で、通常は考えられない認可だったのです。
本日、早速薬剤シートのサンプルを見せていただきましたが、21日用のシートに作られているので、1シート処方が可能になって本当によかったと思います。

ルナベルについては、このブログでもお知らせしましたし、早くも患者さんの中でも情報が出回っているようで、産婦人科クリニック さくらの外来でもよくあるご質問の一つとなっています。発売され、処方可能となるのはもう少し先になるようですが、保険診療の「ルナベル」と、自費診療で処方されるこれまでのOCと、どちらの処方がいいか、よくお考えの上、外来で相談して下さい。


休診のお知らせ
6月7日(土)、産婦人科クリニック さくらの外来診療を休診とさせていただきます。また、6月9日(月)、桜井加那子医師の診療を休診いたします。9日の院長外来は平常どおり行います。
皆様にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

女性健康外来のお知らせ
6月より新しいサービスとして女性健康外来を開始いたしました。既に多くのお問い合わせや検査を行っております。このブログ内や院内でもご案内しております。お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

・関連記事補筆修正
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜
OC(低用量ピル) 〜子宮内膜症の治療法〜
子宮内膜症治療の保険適応低用量ピル、「ルナベル」が承認されました。
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2008年04月27日

ディナゲストの効果

4月12日から15日、横浜で日本産科婦人科学会の第60回学術講演会が行われました。

ディナゲスト発売から初めての学会だったため、ディナゲストの話題もありました。

発売元の持田製薬から紹介されている治療効果について、補足したいと思います。
128名の卵巣チョコレートのう胞のある患者さんに24週間(6ヶ月間)投与したデータがあり、月経時以外の各種疼痛症状(下腹痛、腰痛、排便痛、性交痛、内診時疼痛)の改善率が、「著明改善」「改善」をあわせて78.1%にも上ったそうです。
またチョコレートのう胞の縮小度も、「著明縮小」「縮小」をあわせて83.5%とも。

期待していたよりも効果は高そうな印象です。

また気になる治療後の月経回復ですが、約1ヶ月で排卵周期が戻り月経が回復するようです。

数名の方が、産婦人科クリニック さくらで既にディナゲスト治療を行っていますが、内膜症が重く、OCの消退出血(月経として自覚される出血)でさえあまりに重いため、痛くなければ不正出血のほうがよい、とディナゲストを選択された患者さんや、内膜症の再発を繰り返し、以前に行った偽閉経療法の副作用がつらいため、選択された患者さんなどがいらっしゃいます。
今後、処方する患者さんが増えてくると、さまざまな理由で選択する方がいらっしゃると思います。


産婦人科クリニック さくら スタッフブログ
開業1周年に頂いた素敵なプレゼントをご紹介しています。とっても不思議な面白いものです。
posted by 桜井明弘 at 23:04| Comment(7) | TrackBack(1) | 子宮内膜症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月19日

漢方療法 〜子宮内膜症の治療法〜

子宮内膜症によく使われる漢方薬に「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」があります。
当帰芍薬散は、主に虚証、どちらかと言うと痩せ型の方に使われる処方で、内膜症をはじめ、婦人科疾患には様々な効果があるとされています。月経困難症やPMS(月経前症候群)、不妊症、妊娠中の流早産予防などです。骨盤内の血流改善効果と考えられています。
その効用の中に子宮内膜症もあるため、実際に処方されたり内服中の方も多いのではないでしょうか。

漢方療法を行われている患者さんの中には、大変効果がある、内服してよかった、と実感されている方もあると思いますが、反対に漢方療法、全く効かなかった、と相談にみえる方も大変多いです。
漢方療法自体、効果発現までに1〜2週間の時間が必要で、効果判定には最低1ヶ月継続しなければなりません。

一方、EBMの観点からは、子宮内膜症に対する漢方療法は、それ自体にほとんど治療効果は証明されず、例えば子宮内膜症の主症状である月経困難症の改善効果はあるかもしれません。漢方療法は他の薬物療法などをサポートする治療で、他の治療と併用するものと位置づけることができるかもしれません。

他に内膜症では、「偽閉経療法の工夫 〜継続のための副作用対策〜」でも述べたように、偽閉経療法の副作用軽減の目的に「桂枝伏ュ丸(けいしぶくりょうがん)」を用いることもあります。

これら当帰芍薬散と桂枝伏ュ丸とともに婦人科3大漢方と称される加味逍遙散(かみしょうようさん)を用いる場合もあり、漢方の効果は証、体質にも左右されるため、ご自身にあったものを探し、試してみる必要があります。

産婦人科クリニック さくらでも漢方療法を行っている多くの患者さんがいらっしゃいます。お一人お一人に適した治療法を提示して行きたいと思います。


さくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんのブログや、このブログで紹介しました、竹本昌栄さん、橘誠子さんによる「アロマテラピー講習会」、参加申し込み有難うございます。
お申し込み、まだの方は、上のページから入って、どうぞ御連絡いただきたいと思います。
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2008年04月17日

子宮内膜症治療の保険適応低用量ピル、「ルナベル」が承認されました。

昨日「ルナベル」が厚生労働省から承認されました。

OCの子宮内膜症治療効果について触れましたが、これまでOCは避妊目的に承認されていたので保険適応外でしたが、今回承認された「ルナベル」は保険適応され、「子宮内膜症による月経困難症」が適応となりました。
内膜症があって生理痛と闘ってきた患者さんにとっては福音となると思います。

「ルナベル」は、「オーソM」と同じ成分で、一相性のOCです。
薬価は未定なので、患者さんの負担額がどれくらいになるか、明らかではありませんが、適応となる患者さんはきっと多く、話題になることと思います。

(2008年6月6日補筆)
「ルナベル」の薬価が決定されました。実際の発売、処方が可能になるのも近日中だそうです。


この記事へのリンクをアップしました。
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜


さくらトリートメントの竹本さんのブログ、女性の皆さんの多くの悩みの一つである、「フットケア・その2」について書かれています。


・産婦人科クリニック さくら スタッフブログ、子宮がん検診の結果の見方を一部修正しました。あわせてご覧下さい。
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2008年04月15日

OC(低用量ピル) 〜子宮内膜症の治療法〜

ご好評頂いている、この子宮内膜症シリーズも、いよいよ佳境に入ってきました。

現在の産婦人科診療において、非常に大きなウェイトを占めるOC、今さら低用量ピル、と説明しなくてもいいくらい、OCは市民権を得ています。
ここでは、子宮内膜症治療に対する効果を中心にお話をさせていただきます。

OCが登場する前には、内膜症の治療法、手術療法と薬物療法がある中で、非常に薬物療法の選択肢が少なかったと思います。
偽閉経療法は、薬効は大きいですが、その副作用、更年期様障害に対する抵抗が無いとは言えません。また、無月経や月経不順に対する治療薬、中用量ピルも内膜症に対する治療効果がない、とはいえませんが、OCは中用量に比べて断然エストロゲンレベルを下げることが可能です。
このため月経痛の軽減に寄与するだけでなく、内膜症そのものに対する治療効果を有しています。
現在では内膜症の第1選択薬、と言っても過言では無いとさえ言えます。

OCはもともと避妊目的に開発されたピル。避妊目的だからなるべく副作用を減らすため、最低限のエストロゲンで最大の効果を、と言う概念で開発されました。さまざまな主作用(避妊)以外の効果、これを副効用、と呼びますが、この副効用が大変大きく、OCの評価が飛躍的に向上しました。
主な副効用を列挙します。

・ 月経痛
PMS(月経前症候群)
・ 排卵痛
・ 不正出血、月経不順
・ 過多月経
・ にきび、肌荒れ
・ 子宮内膜症(子宮腺筋症も含む)
・ 子宮筋腫
・ 卵巣がん、子宮体がん
・ 良性乳房疾患
など

産婦人科クリニック さくらでも主作用のみを目的とする方の比率が少なくなり、副効用を第一目的に内服している方がどんどん増えています。

さて、内膜症に対するOCの効用、科学的に根拠のある治療法なのでしょうか。我々医師は、従来の経験のみに頼った治療を行う時代は過去のものとなり、常に治療や検査の意義について科学的な根拠を求める必要があります。医学論文はこういった根拠となりえますが、一つ一つの論文をあたっても、この著者は効果あり、この著者は効果なし、と結論していることが、内膜症に限らず多々あります。この場合、多くの文献データを統計学的に処理したものがあり、その代表であり権威であるCochrane Libraryはよく引用されます。最近調べなおしたところ、数年ほど前から、結論はさほど変わりがないようですが、かいつまんで列挙すると、

・「内膜症による月経困難に対してはOCは偽閉経療法より劣る」
・「OC、偽閉経療法ともに副作用がある」
・「このため、第一選択としてOCが勧められる」
・「腹腔鏡下手術は内膜症第3期までの疼痛改善に効果があるが、4期では再発率が高いため、OCが勧められる」

また米国のNIHでもOCの内服が推奨されていますが、様々な裏事情もあります。NIHは医学治療の標準化を目指すため、国際的に信頼度は高いのですが、どうしても製薬会社などの意向を汲むことが多く、米国社会にありがちな事情から標準的治療が作成されることもあるようです、OCも同じかどうかは分かりませんが。

さて、OCはなぜ内膜症に対する治療効果を有しているのでしょうか。
OCはその名の通り、含有される女性ホルモン、特にエストロゲンがまさに低用量。とはいえ、エストロゲンを飲むのだから、内膜症には悪影響ではないか、とは誰もが抱く疑問です。内因性(自分の卵巣から出る、の意味)のエストロゲンと相まって、本来よりも高いエストロゲン状態になってやはり内膜症が悪くなるのでは? こういったご質問も良く受けます。

理論的には、外因性(OC)のエストロゲンを服用すると排卵が抑制され、卵巣からのエストロゲン分泌が低下します、ほとんど無い状態まで。要するに血液中はOCのみによる低いエストロゲンレベルが維持されるので、内膜症には治療効果もある、と言う理論が成り立つのです。

私も以前はOCの効果に懐疑的でした。OCは内膜症の治療ではなく、内膜症による月経困難症に対する治療、と位置づけられるべきと考えていました。子宮腺筋症はほとんどの方で小さくなり、効果が実感されますが、治療を終えると残念ながらすぐに元の大きさに戻ります。
一方で、内膜症、特に日常の診療で超音波などで治療経過をみやすい卵巣チョコレートのう胞ですが、これまた驚く程よくなる患者さんがいらっしゃいます。数cmのチョコレートのう胞ですと、ほとんど超音波で見えなくなってしまうほど軽くなる方、実際に手術でごく小さな病変に縮小した方もありました。反対にOC服用中にチョコレートのう胞が大きくなる方も時に見られまし、なかなか小さくならない方もいらっしゃいます。
内膜症の病気の進行を決定付けるのは、エストロゲンだけでなく、内膜症病変の活動性にも左右されると感じます。それでも偽閉経療法のように徹底的にエストロゲンを抑えると、内膜症の進行を止めることができます。

OCが偽閉経療法に比べて治療として行いやすいのは、治療効果や副作用の点だけではありません。偽閉経療法の治療期間が、薬物療法として行われる場合、6ヶ月間、と決められているのに対して、OCはすぐに止める、とか、妊娠を希望するまで続ける、といった選択ができます。
内膜症の手術はしたくない、またはするほどひどくないが今すぐの妊娠は希望していない、という場合、進行を抑え、できれば内膜症をよくする、服用中の月経痛を軽くする、という目的にOCを開始、という使い方は現代の女性のライフスタイルによくあった使い方だと思います。
Reproductive Rights、という概念がよく提唱されるようになりました。Reproduction、は「再生」、つまり妊娠、出産をすること、Rightsは「権利」ですね。女性が妊娠、出産する、子育てをすることを自らの意思で決定し、調節できる、という概念です。
OCはまさにこのReproductive Rightsによくあった治療方法だと感じます。

さて、OCの副作用について触れましょう。
様々な副作用のうち、最も頻度が高く、ご自身にも自覚されるのが内服した後の吐き気です。時に胃痛を感じる方もありますが、中用量ピルでみられる頻度、重さではありません。軽く、また内服していると徐々になくなってくることが多いです。
ほか、自覚症状としてむくみを感じる方もありますが、言われているほど多くはないと感じます。
副作用といえませんが、不正出血がみられることも。エストロゲン値が低すぎると子宮内膜が支えきれなくなり不正出血を起こします。OCは、ぎりぎり不正出血を起こさない程度にエストロゲンを低容量にしたものですが、患者さんによっては起こってしまう場合があり、その場合は異なるOCに変更をお勧めしています。
以上は自覚症状、他に高く症状として、最も重症なものは血液凝固傾向と肝障害です。
血液は血管内ではさらさらと流れていますが、怪我をしたり、手術を受けて血管が傷害されるとその障害部分では血液が固まり、止血の働きをします。これが血液凝固です。OCに含まれるエストロゲンは血液を凝固傾向に働かせることがあり、血管内で凝固すると「血栓」を形成します。血栓が血管内に詰まる、下肢深部静脈血栓や、一番恐ろしいのは肺血栓・塞栓症です。
血栓症の既往のある方や、血液検査で凝固傾向が強い方はOCは禁忌となります。また統計的に「35歳以上で喫煙している」方は血栓のリスクが高く、基本的にはOCの内服が勧められません。
「肝障害」はどんな薬物療法でも起こりうる副作用ですが、エストロゲンやプロゲステロンの製剤は少し頻度が高いです。といっても起こる頻度は低く、定期的に血液検査で肝機能を見ていれば心配は要りません。

内服の方法はとても簡単です。どの製剤も1日1錠、忘れずに内服すればいいようにできています。
よく21日製剤と28日製剤はどう違うのか、という質問も頂きますが、もともとOCは21日間内服して7日間休薬、その休薬期間に消褪出血があります。内服しないこの7日間の休薬期間を忘れないようにするため、28日製剤には薬の入っていない偽薬(プラセボ)が7日分入っているだけで、この薬はカウント用なので飲んでも、毎日一つずつ捨ててしまっても構いません。

価格は処方する病医院、薬局によって異なります。自費診療のためです。
産婦人科クリニック さくらでは、1シート(1か月分)トリキュラー28が2000円、マーベロン28が2200円です。また来院・処方時に1000円の診察費がかかります。

(2008年6月6日補筆)
子宮内膜症治療の保険適応低用量ピル「ルナベル」が製造承認薬価決定されました。これまで自費処方のみであったOCを、子宮内膜症の月経困難症と闘ってきた皆さんの福音となることを願っています。

さくらトリートメントの竹本さんのブログ、女性の皆さんの多くの悩みの一つである、「フットケア」について書かれています。


・産婦人科クリニック さくら スタッフブログでは、子宮がん検診の結果の見方をアップしています。あわせてご覧下さい。
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2008年03月24日

偽閉経療法の工夫 〜継続のための副作用対策〜

偽閉経療法は、子宮内膜症薬物療法の中で、最もエストロゲンの分泌レベルを低下させる方も最も効果も最も高い治療法です。

反面、副作用としての更年期障害様症状が見られ、このため治療を継続できない方があります。

偽閉経療法は、子宮内膜症や子宮筋腫の治療として

・術前投与
・薬物療法のみ

の2つの使い方がありますが、前者では3〜6ヶ月、後者では6ヶ月の投与が効果的なため必要です。

しかし副作用のため、継続できず、せっかく高価な治療を開始したのにもかかわらず、治療効果が現れる前に断念してしまうのは残念です。

そこで私が行っている、偽閉経療法継続のためのいくつかの工夫をご紹介します。

エストロゲン値.jpg

繰り返しますが、副作用はエストロゲンレベルの低下によってもたらされている、ということです。したがって、エストロゲンの分泌値を少しでも正常に戻すことが副作用軽減となりますが、正常に近づいてしまっては偽閉経療法になりません。そこでほんの少しだけ、上昇させてあげるのです。
血中エストロゲン値と更年期障害用症状の出現、その重さは非常に個人差が大きく、一概には言えませんが、通常は治療効果が期待できるエストロゲン分泌値のほうが、副作用出現レベルよりも高い、と言われています。

この治療法で副作用が見られた場合、身体に障害をもたらすような重篤なものは当然偽閉経療法の中止をしなければなりません。そこまでではないものの、日常生活に支障をきたす更年期障害様症状が見られた場合は、積極的に副作用対策を行い、偽閉経療法を中止することのないようにします。

偽閉経療法の工夫.jpg

まず副作用対策には対症療法を行います。
副作用には対症療法が可能なものとそうでないものがありますが、可能なものの代表は鎮痛剤、睡眠剤、時には抗うつ剤や抗不安剤の投与も行います。
頭痛には内服の鎮痛剤、肩凝りには内服、湿布、塗り薬の鎮痛剤が用いられます。
不眠もいくつかのパターンがありますが、偽閉経療法でも多く見られるのが「入眠障害」。寝つきが悪い、と言うものでこれには睡眠導入剤を用います。常習性が無く安全に用いられる「マイスリー」の処方が多いです。寝つきはいいけど、数時間で目が覚めてしまい、その後寝付けない、というのは「中途覚醒」とされ、入眠障害よりも少し長めに効く睡眠剤が適しています。夜間のほてりが強くて目が覚めてしまう、と言う方もあります。
抗うつ剤では即効性が期待できる「ドグマチール」を、抗不安剤では「デパス」が安全です。
よくお話を伺って処方しています。

対症療法の効果が上がらない、または使えないといった場合、もう少し根本的な方法を取らなければなりません。最もよく見られる症状である「ほてり」も対症療法ができないので、ここからの治療を採ります。
副作用対策、上に書いたようにエストロゲンレベルを上げることが近道ですが、治療効果が見られないレベルにまで上げるとせっかくの偽閉経療法が無意味になってしまうので、まずはエストロゲンに影響を与えない漢方療法から始めます。
様々な漢方療法がありますが、偽閉経療法の副作用軽減には「桂枝伏苓丸(けいしぶくりょうがん)」が適しているようです。
桂枝伏苓丸はほてりのみならず、肩凝り、いらいらなどの諸症状に効果が期待できます。

対症療法、漢方療法でも効果が現れない場合に初めてエストロゲンレベルを上げる方法を考慮します。

偽閉経療法には注射剤と点鼻薬の2通りの投与方法がありますが、この中でも注射剤、リュープリンのエストロゲン低下作用が最も強い、とされています。このため私も手術前には、確実な効果を期待してほとんどの方にリュープリンを使っていただいてますが、他のスプレキュアMP、ゾラデックスの製剤に変更するだけでも若干副作用が軽減できます。ゾラデックスはリュープリンと同等のエストロゲン抑制作用、とされていますが、臨床経験からはリュープリンよりも効果が弱いと感じます。その分副作用が軽いです。点鼻薬は全般に注射剤に比べてエストロゲン低下作用が低いので、やはり副作用軽減に適していると思いますが、投与法が面倒なためコンプライアンス(患者さんの受け入れ、適合)の点で劣り、また鼻炎などで薬剤の吸収が劣る方もあります。

次に考慮するのがDraw-backとよばれる方法で、通常注射剤の投与は4週間間隔ですが、エストロゲンレベルが低下してくるのを確認してから、5週間隔、6週間隔、とあけていきます。間隔が開くほど、投与してから次の投与期間まで、エストロゲンレベルが若干回復する期間ができ、副作用軽減になります。やむなく6ヶ月と言う治療期間を超えて偽閉経療法を行わなければならない患者さんで、最長7、8週間隔でも投与可能な方があります。5,6週間隔くらいは大丈夫です。

最後に最も効果的である方法、Add‐back法を紹介します。これは少量のエストロゲン製剤を投与する方法です。完全にエストロゲンレベルが高くなるほど使ってはいけませんが、上にあげた副作用出現域を脱し、治療レベル内にとどめる方法で、私が良く行うのは合成エストロゲン製剤である「プレマリン」0.625mg錠を、2日に1錠だけ内服してもらう方法です。簡便に内服でき、効果も実感できます。他にも様々な方法があると思いますが、くれぐれも通常のホルモン治療のように内服しては意味が無いことを念頭に置かなければなりません。

いろいろな方法を紹介しましたが、私は手術をやる立場から、いかに偽閉経療法中断、断念を無くすか、と言う観点で行ってきました。ご紹介したように、どの方法が良いか、向いているのか、その患者さんが抱えている疾患とその重症度、症状、そして何の目的に偽閉経療法を行っているのかを踏まえて一人ひとりにあった方法を一緒に考えて行きたいと思っています。


記事修正しました
排卵に関するいくつかの誤解 〜基礎体温〜
手術療法 〜子宮内膜症〜


さくらトリートメントの竹本さんのブログ、アロマトリートメントの効果について、です。
記事を読むと、思い当たる節が多いですね。
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2008年02月29日

偽閉経療法

子宮内膜症や子宮筋腫、といったエストロゲン依存性疾患は、エストロゲンが分泌されている年齢に特有の病気です。つまり、月経がある間に悪化し、閉経後は徐々に病変が小さくなっていきます。
偽閉経療法は注射や点鼻薬により、卵巣の活動性を停止させ、ひいてはエストロゲン分泌を低下させる方法です。つまり、嘘の、一時的な「閉経」状態を作り出しますため、「偽閉経療法」と呼ばれています。

投与法は上にあげたように注射剤と点鼻薬があります。
注射剤は4週間毎の投与、1回の注射に約12,000円の自己負担があります。価格が高いため、保険がきかないの?と質問されることもありますが、もちろん保険適応になっています。
点鼻薬は毎日2〜3回、決まった時間での使用が必要で、月に約8,000円の自己負担です。
価格の点では点鼻薬に軍配が上がりますが、薬のコンプライアンス(受け入れやすさ)から言って、また治療効果も注射剤のほうが強く、現在点鼻薬を選択する方はほとんどありません。

副作用は「閉経」の状態になるため、自覚症状として更年期障害症状が見られます。主な症状は「ほてり」「肩こり」「いらいら」で、他にも「不眠」などありますが、症状の種類や程度は患者さんそれぞれが異なります。更年期障害用の副作用は強く出る方と軽く出る方と様々です。
うつ症状が出ることもあるため、うつ病、うつ傾向のある方には注意をしています。

他覚症状として最も重篤とされるのは骨密度の低下、つまり骨粗鬆症(そしょうしょう)です。他にも更年期と同様、高脂血症(高コレステロール血症、脂質異常症)が見られることもあります。
骨密度の低下は、6ヶ月間投与の後、6ヶ月で元に戻る、とされ、これが偽閉経療法の治療期間を6ヶ月間、としている根拠です。高脂血症は投与終了後、エストロゲンの回復とともに改善します。

偽閉経療法の一番の特徴はやはりエストロゲンのレベルを極度に低下させることで、偽閉経療法中に内膜症が増悪することはほとんど無いと言っていいと思います。反対に増悪してくる、大きくなってくる場合は、偽閉経療法が効かないため、悪性なのではないか、とさえ疑います。

薬物療法として用いる場合、ディナゲストOC、と言った選択もありますが、子宮内膜症や子宮筋腫の手術前、特に腹腔鏡下手術の際には、原則として偽閉経療法の術前投与をお勧めしています。
病気の活動性を低下させ、より安全に、より根治的な手術を行うためなのです。
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2008年02月26日

子宮内膜症 「治療の適応」

良性疾患の進行については、子宮内膜症、再発時の治療で述べたように、悪性疾患が右上がりに増悪する一方であるのに対して、階段状、悪くなる時期と変わらない時期を繰り返します。

脱線しますが、上に書いた「増悪」、正しい日本語の読み方と意味は「ぞうお、憎むこと」ですが、医療界には医療専門用語と、医療スラング的に用いられたものが専門用語化したものがあります。
「増悪」はそのいい例で、「ぞうあく、だんだん悪くなること」として使っています。
私自身、大変面白く興味を持っていますので、また気付き次第ご紹介します。

さて、子宮内膜症は良性のがん、と称されていますが、良性疾患であることには変わりありません。

良性疾患の治療適応を示します。

良性疾患 〜治療の適応〜.jpg

この適応に沿って、子宮内膜症の治療適応について触れると、

・「症状がある」は、その疾患による症状などの弊害が生じている、という意味で、

 例えば、
  鎮痛剤が無効な月経困難症、排便痛、性交痛、慢性骨盤痛。
  内膜症が明らかに不妊の原因となっている。
などがあります。

・ 「近い将来、障害をもたらす可能性がある」。現在は無症状でも、近い将来、たとえば妊娠を希望した場合、妊娠した場合など、明らかに障害を生じる可能性がある場合。これには卵巣・卵管の高度の癒着が考えられる場合、大きなチョコレートのう胞、一般的には約5cm以上を大きい、と表現します。
また、大きさはがん化の指標にもなります。

・ 「大きい、または進行が速い」上の「近い将来の障害」に通ずるところがあります。これらは上の二つの条件に近い将来達する可能性が高い場合と判断されます。また進行が速い、とは障害をもたらす可能性が高いことと、今現在、悪性なのではないか、という疑問も生じます。

一般的な良性疾患の治療適応を提示し、子宮内膜症の場合、どのように考えるか、代表的な病態をあげましたが、全ての方に当てはまるわけではなく、またその方それぞれによって、治療方針が異なります。
子宮や卵巣・卵管といった生殖臓器の疾患は、妊娠の希望を踏まえて考えなければならず、大変多くのバリエーションがあり一概には言えません。

子宮内膜症に限ったことではありませんが、外来ではどんな症状に困っているのか、どんな所見があるのか、将来どうなる予想がされるか、ということとその方の状況を加味して、最も適した治療法を一緒に考えています。どうぞ思ったことを遠慮なさらずにお伝えください。


関連記事修正情報
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜
卵巣チョコレートのう胞
子宮内膜症 再発時の治療
卵巣チョコレートのう胞のがん化


産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんのブログ、益々好評執筆中です
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年末にお配りしたクリスマスプレゼント、今週限定ですので、あと2日です。お使い忘れのないように〜。
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2008年02月23日

ロイコトリエン拮抗剤補筆

子宮内膜症薬物療法の一つとして、話題になったロイコトリエン拮抗剤について書きましたが、誤解を招くような部分があったので補筆します。

ブログ掲載の時期が、子宮内膜症治療薬として新しく発売された「ディナゲスト」と同時期であったためか、両者を混同させてしまったようです。

ディナゲストは黄体ホルモン剤で、内膜症に対する治療効果が認められ、保険適応のある治療薬として認可されました。
一方、ロイコトリエン拮抗剤は、製薬会社が内膜症治療のために研究開発、発売をしているのではなく、一部の研究機関が内膜症組織の研究から、治療効果の可能性があると考え、内膜症患者さんに投与したところ、治療効果があったと発表、話題になりました。
この場合のエビデンス(科学的根拠)レベルは、比べようも無くディナゲストが上で、ロイコトリエン拮抗剤は、そのような発表があっても、治療効果の可能性とまでしかいえません。内膜症治療にあたる婦人科医師の中で普遍的な治療法として認知に至っていません。

現に内膜症に対する保険適応も認められておらず、内膜症患者さんに処方する場合は、自費処方となります。

アレルギー性鼻炎や気管支喘息と診断されている方は、これらの治療薬として保険適応がありますので、保険で処方が出来ますが、この場合の処方も、かかりつけの内科や耳鼻咽喉科で、処方について同時に相談していただきたいと思います。

関連記事更新
子宮内膜症の治療、ラインナップ
ロイコトリエン拮抗剤 〜子宮内膜症の治療法〜


産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんが待合室のアロマ、ブレンドしてくれています。ご存知でしたか?
1月末からの産婦人科クリニックさくらの待合室の香りもお読みください。
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2008年02月20日

子宮内膜症 再発時の治療

手術療法や薬物療法によっていったん治癒、または軽快した子宮内膜症が再発、あるいは再燃した場合、どのような治療をすべきでしょうか。

術後に再発した場合、よく質問されるのが、「また手術をしなければならないか」というものです。
通常、治療後のフォローアップの期間に再発が見つかるため、再発病変も本当に再発か? といった小さな病変のことが多く、再発=治療再開とはなりません。
ここが良性疾患とがんなどの悪性疾患との大きな違いだと思います。

良悪性疾患の進行.jpg

図にあるように良性疾患、内膜症も含めて、その病気の進行は階段式です。
進行する時期と変わらない時期があり、今ある病変がその後も悪くなり続けるとは限りません。これは再発、未治療のいずれでも言えることです。

原則、手術療法を行う方は、以前の内膜症の治療法にあるような子宮または卵巣摘出ではない、内膜症病巣摘出術を、根治手術と考え、2回目以降の治療を行う必要が内容と言った姿勢で我々も治療に臨みます。手術であまりにも病巣を摘出する際のリスクが高い場合、どうしても残存病変ができてしまう場合、手術自体は予定通り根治に近い形で行えた場合、それでも再発は免れません。
薬物療法も同様で、再発、再燃ともに起こりえます。

ただ、術後、薬物療法後のフォロー中に、比較的小さな、初期の病変で見出せた場合、前回と同様の治療まで要さない、あるいは治療が必要ないことが多いです。再発に対する治療は初回診断時の治療の適応とほぼ同様で、

・その疾患による症状などの弊害が生じている。
 ex.
  鎮痛剤が無効な疼痛(月経困難症、排便痛、性交痛、慢性骨盤痛)
  内膜症が明らかに不妊の原因となっている
・現在無症状でも、近い将来、たとえば妊娠を希望した場合、妊娠した場合など、明らかに障害を生じる可能性がある場合
・大きい病変、あるいは増大する速度が速く、上にあげた二つの条件に近い将来達する可能性が高い場合

です。

またその患者さんの状況に合わせた他の適した治療法がある場合が多いため、個々に相談しながら治療法を考えて行きたいと思います。

内膜症はとても再発率が高い疾患で、また女性のQOLを左右する、妊娠を考えているなどライフスタイル、人生設計に治療法が左右される病気ですので、心配な点、疑問な点は何なりと遠慮なく仰ってください。
繰り返しますが、個々に対応した対策・治療法を相談いたしましょう。



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2008年02月15日

手術療法 〜子宮内膜症〜

最近アクセス数が急増している子宮内膜症のシリーズです。

本日は手術療法を書きます。他の治療との比較は「治療のラインナップ」を、また「治療の適応」に関しては現在執筆中です。


1.単純子宮全摘術

文字通り子宮を摘出する手術法ですので、将来的に妊娠を考えていない方が対象になります。しばしば周辺臓器、卵巣・卵管や直腸、膀胱の癒着があるため、手術時間が長くなったり、出血量が多くなったりする場合も有ります。


2.卵巣摘出術(付属器切除術)

上記1.に加えて卵巣を摘出する方法もあります。また子宮は温存し、卵巣のみを摘出する方法があります。
卵巣摘出後は閉経の状態になりますから、月経そのものがなくなり、また内膜症病変は改善します。予定よりも早い年齢で閉経になるため、どうしても癒着がひどく子宮の摘出にリスクが高い方が対象になりますが、この場合は卵巣も癒着に巻き込まれていることが多いです。


3. 卵巣のう腫摘出術

卵巣チョコレートのう胞を摘出する術式です。最近ではほとんどが腹腔鏡下に行われるようになりました。しばしば卵巣・卵管の周囲の癒着を伴うため、これらの病変も同時に治療されます。
卵巣の正常組織は温存されるため、術後の排卵、妊娠は可能です。
肉眼的に見つからない小病変が残る可能性もあり、こういった病変が再発(再燃)につながることもあります。


4.(付属器周囲)癒着剥離術

内膜症ではしばしば卵巣・卵管周囲癒着を形成し、重症な例では膀胱、直腸などの癒着も形成するため、子宮や卵巣に明らかな内膜症病変が無くても、この癒着を剥離する目的に手術を行うことがあります。
卵巣・卵管の癒着は主に不妊症疼痛の原因となり、直腸の癒着は月経痛、排便痛、性交痛、慢性骨盤痛の原因となります。
ほとんどは腹腔鏡下に行われますが、あまりに高度の癒着が予想される場合や直腸に浸潤する内膜症が存在する場合は開腹手術が選択されることもあります。


5. 腺筋症病変摘出術

内膜症手術ではオプション的な存在です。基本的には腺筋症の手術は子宮摘出が選択されます。腺筋症病変のみの摘出は非常に再発率が高いため、手術のリスク、侵襲を考えるからです。
妊娠希望があるのに、他の方法で疼痛の改善が見られない場合、腺筋症に起因する流産を繰り返す場合に選択されます。


これらの手術、手術のみを行うこともありますが、多くの場合、手術中の出血、手術時間の短縮、手術の完遂を目的に、術前に偽閉経療法を行う場合があります。
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2008年02月14日

子宮内膜症の再発

子宮内膜症は、良性の疾患でありながら、しばしば再発、また時として転移するため、「良性のがん」、という表現をされます。

内膜症治療の根治術は、治療のラインナップでも触れたように、子宮または卵巣の摘出手術です。厳密に言うと卵巣摘出で、エストロゲン分泌がなくなるため、閉経後と同じホルモン状態となり、これにより内膜症は再発をしません。子宮の摘出は、内膜症がもたらす症状の多くが月経痛、性交痛、排便痛、慢性骨盤痛などで、これらは子宮を摘出すると改善が期待できますが、卵巣が機能する限り卵巣チョコレートのう胞卵巣周囲の癒着をもたらす可能性が残ります。

さて、「再発」と表現するからには、一度は根治を目指した治療が終え、内膜症病巣がすっかり無くなってから再度内膜症病変が出現した状態を指します。
手術により、卵巣チョコレートのう胞、周囲の癒着、これらの病変が摘出しきったはずなのに、ある一定期間経過すると同じような病変が術後の経過中にみられます。

内膜症の術後再発はいくつかの医学論文も発表されていますが、おおむね、3割の方に再発が見られる、とされています。

私が再発に驚くのは、手術前に偽閉経療法を行い、これは手術時の根治性を高めるためですが、手術を終了、手術時には内膜症病変がすっかり無くなります。術後1〜3ヵ月後に、偽閉経療法後の月経が開始しますが、第1回目の月経の後の診察で再発を疑う病変を見つけることがあります。
再発の時期はたいてい半年から1、2年が多い印象です。
また、年齢の若い患者さんほど再発の率が高く、20歳くらいまでは8割くらい、25歳くらいまでも半数近くの方に見られます。また手術時に内膜症の病気が進行しているほど再発率が高く、これは上に挙げた様な発表でもよく言われることです。

ここで「再発」としているのは、「再燃」とは異なります。医学用語で「再燃」とは、病変が再び活動性を持つことで、内膜症であれば手術時に摘出できなかった病変が術後に再び大きくなってくる、または薬物療法で病変が小さくなった、または超音波など画像上無くなった(様に見える)のに再度増大する、という場合で、治療により内膜症病変がすっかり無くなったわけではない状態です。

では、そんなに再発率が高いのであれば、あえて手術などしなくても良いのでは、といった意見があり、最近では治療による副作用も軽い低用量ピル(OC)が内膜症の第1選択、とさえ言われてきています。

OCによる治療、確かに効果の高い方も多いですが、反対にOCを服用していても内膜症が進行したり、月経痛などの諸症状が改善しない方もあります(「ディナゲスト」参照)。
また妊娠を希望されている方、QOLが著しく障害され、日常生活に支障をきたしている方、既に病変が大きく、このまま放置できない状態の方はやはり手術の適応となります。

我々も手術を選択した以上は、子宮や卵巣を摘出する根治療法でなくても、根治を目指し、手術前に偽閉経療法を行った後、手術に臨み、内膜症病変を徹底的に無くそう、という姿勢で治療を行っています。


関連記事一部補筆
生殖医療の相談・検査・治療
不妊スクリーニング検査 〜内診・経腟超音波検査・子宮頸がん検査〜


産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんが、ブログで書かれている「冷え」について、お読みいただいてますか?
冷えチェック、是非どうぞ!
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2008年02月07日

ロイコトリエン拮抗剤 〜子宮内膜症の治療法〜

子宮内膜症に対する治療法として、手術療法と薬物療法がありますが、薬物療法の中に、アレルギー治療に対する治療薬、ロイコトリエン拮抗剤が3年ほど前に読売新聞で取り上げられ、注目されました。

以前このブログでも、内膜症は「炎症」に似ている、と書きましたが、アレルギー反応ではその中で炎症が起こっています。抗アレルギー剤を用いることで、炎症を抑えることが可能で、つまり内膜症においてもその活動性を抑制できる可能性が示唆されます。
報道されている記事によれば、アレルギーに深くかかわる「肥満細胞」が内膜症組織に多く見られ、ロイコトリエン拮抗剤は肥満細胞を抑制しやすいのだそうです。
また内膜症の患者さんが、アレルギー性疾患を持っていることが多いそうで、両者の関わりの点からもロイコトリエン拮抗剤の効果が期待されています。
さらにロイコトリエン拮抗剤服用後に手術を行うと、内膜症特有の癒着組織が剥がしやすくなり、手術中の出血や手術時間の短縮につながったそうです。副作用は少なく、胃がもたれやすくなる程度、とも。

ここまで書くと、夢のような内膜症治療薬? と思ってしまいますが、我々産婦人科医師の中でも、EBM(科学的な根拠がある治療法)が得られているとは思えない、と言うのが一般的だと思います。産婦人科医師の学術団体である、日本産科婦人科学会が編纂している「子宮内膜症取り扱い規約」でもそうですし、国際的にも知れ渡った治療法、と言うわけではなく、治療効果の可能性がある、とまでしか言えません。

ロイコトリエン拮抗剤についてまとめました。

ロイコトリエン拮抗剤.jpg

上記の価格は薬価です。気管支喘息の治療目的に処方する場合は保険適応となるので、その3割負担となります。服用方法は気管支喘息の場合で、まだ子宮内膜症に対する至適量は明らかではありません。
また薬価は2008年4月の診療報酬改定で変更になる可能性があります。

内服方法から判断すると、シングレア、キプレス(これらは全く同じくすりで、発売元で名称が異なるだけです)に軍配が上がりますね。価格面ではアコレートを40mg/日服用するのが最も安価です。副作用的なものはどの薬剤もほとんど同じですが、注意点として、妊娠・授乳中の影響を添付文書から拾ってみました。

内膜症治療としてのロイコトリエン拮抗剤の利点の一つに、治療中に妊娠が可能であることです。
偽閉経療法ディナゲストOCはいずれも妊娠中の投与が禁止されていますが、そもそも治療中は理論的には妊娠をしません。ロイコトリエン拮抗剤は服用中に妊娠が判明したらすぐに中止すれば、いずれの薬剤でも臨床的には問題なさそうです。

効果としては、自治医科大学附属さいたま医療センター婦人科の発表では、約7割の患者さんで、内膜症の疼痛が軽減されたそうです。効果が強かったのは、症例数が少ないためエビデンス(科学的根拠)レベルが低いもののオノンよりもシングレア、キプレスだったそうです。


子宮内膜症の治療法.jpg

現段階での薬物療法の効果、副作用を除いてランク付けすると、以前の「子宮内膜症の治療法」で掲げた表を再掲しますが、偽閉経療法(GnRHアゴニスト)、ディナゲスト、低用量ピル(OC)に次ぐ? 鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症剤、NSAIDs)、漢方療法、女性ホルモン作用のある健康食品より上位にランクされるかな、という印象です。
偽閉経療法で内膜症が増悪することはほとんどないといってよく、OCでは軽快傾向を示すことが多いですが、内服中に増悪することも経験します。鎮痛剤の一部では効果が示唆されていますが、漢方療法や健康食品はほとんどエビデンスがなく、効果ある方もあるかもしれない、位で、我々としては積極的に治療法として勧めるものではありません。

この抗アレルギー剤ですが、鎮痛剤と同等、もしかするとOCと鎮痛剤の間に入るかな、というのが私の印象です。あるいは他の方法と併用することにより、効果を増強できるかもしれない、とも思われます。

ただ、これはEBMが得られていない、治療経験がない、と言う段階のものなので、内服治療を希望される方、興味のある方には相談していきたいと思います。


ロイコトリエン拮抗剤について補筆しました。あわせてお読みください(2008年2月23日)

関連記事
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜 (一部補筆)
不妊と子宮内膜症 その原因 (一部修正)

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産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんが、万病の元、「冷え」について執筆を始めました!
産婦人科クリニック さくらの患者さんのこと、こんなに考えてくれています
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2008年02月03日

子宮内膜症の治療、ラインナップ

子宮内膜症の治療法.jpg


子宮内膜症治療、これまで触れてきましたが、外来患者さんに提示する機会も多く、一度まとめてみました。

治療法は、手術療法、薬物療法、の順に並べ、大まかに治療効果が高い、治療費用、治療による侵襲が大きい順になっています。
効果が大きいものほど、治療費用がかかり、やはり身体への影響も大きくなっています。

根治性を求めれば手術療法が、姑息的(というのです、医学界では)な方法で、なるべく身体にストレスをかけたくない、のであれば下に並んだ方法を選びます。

手術療法として、「子宮摘出または卵巣摘出」は、内膜症を抱えてらっしゃる世代には当てはまらないことが多いのですが、理論的には最も効果が高い、再発の恐れが全く無い方法で、現在でも産婦人科の成書(権威が執筆し、標準的治療が解説されている、いわゆる「教科書」)には、唯一の根治療法、として紹介されています。ただ、内膜症の世代はこれからお子さんを作る世代であることが多く、事実上治療法のラインナップとして外れることが多いです。

ディナゲスト」の効果順位ですが、「3.5?」とあいまいな表現をとりました。理論的には偽閉経療法に次ぎ、OCより強い、はずですが、臨床使用経験が少ないため、現段階では「?」を付け、両者の間に位置づけました。

治療効果として我々がEBMをもってお勧めしているのがOCまでです。現在ロイコトリエン拮抗剤について、少し調べながら書いています。鎮痛剤の一部にも内膜症の痛みだけでなく内膜症そのものの治療効果の可能性も言われています。
漢方、健康食品にはEBMはありませんが、治療効果が見られることもあり、この辺りも調べてお伝えして行きたいと思います。

治療法の一覧、ごらん頂いていかがでしょうか。分かりにくい、これはどうか、といったご質問などお寄せいただけると嬉しいです。


関連記事加筆修正
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜
子宮内膜症って? 〜子宮腺筋症〜


産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんが、万病の元、「冷え」について執筆を始めました!

お気づきですか????????
左の「カテゴリ」に皆様の便宜を図るため「子宮内膜症」を新設しました。ご利用ください。
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2008年01月19日

「ディナゲスト」 〜子宮内膜症の新しい内服治療薬〜

来週1月21日に、子宮内膜症の新しい治療薬が発売されます。

内服の治療薬は、実にダナゾール以来、とのことで、新しい薬に期待が集まっています。
最近ではGnRHアゴニスト製剤が注射剤で数種類発売されていましたが、偽閉経療法であること、患者負担が高価なことから、OC(低用量ピル)の副効用を期待して、OCが内膜症の治療薬として使われる傾向にありました。

今回発売されるのは、持田製薬からで、「ディナゲスト」(一般名:ジェノゲスト)と言う製剤で、黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤です。
黄体ホルモンの排卵抑制効果を有するため、卵胞発育が抑制され、低エストロゲンの状態が持続し、エストロゲンによる内膜症増殖を阻害し、ひいては内膜症の治療効果をもたらす治療薬です。
服用法は毎日、朝夕食後に1錠ずつディナゲストを内服します。開始するのは月経2〜5日の間で、OCなどのような休薬期間は無く継続して服用します。
またGnRHアゴニストのように、6ヶ月まで、といった投薬期間の期限はありません。
排卵抑制効果のため、月経は来なくなります。理論的には妊娠はしないと考えられ、妊娠を希望されている方には向かない、または妊娠を考えるときに服用を中止しますが、OCのような避妊目的の薬剤でないため、妊娠を望まない場合、避妊は必要とされています。

副作用は無排卵性周期となるため、不正出血が一番大きな自覚症状だと思います。
服用を開始して、月を追うごとに不正出血の頻度、出血量は減少しますが、1年近くになっても、半数近くの方に出血が残ることがあるそうです。
保険適応されますが、一か月の患者さん負担額は、約8000円となる見込みです。

治療の効果、価格、副作用の点から私が良く提示する治療法ランキングを提示すると、根治的・侵襲的・コストを勘案して、
手術
・ 偽閉経療法(GnRHアゴニスト)
・ 「ディナゲスト」
・ OC
・ その他漢方、健康食品など
と言った位置づけになるでしょうか。

治療効果としては、エストロゲンの低下レベル、コストの面で偽閉経療法とOCの間に位置し、OCはエストロゲンと黄体ホルモン(プロゲステロン)の合剤であるのに対し、ディナゲストは黄体ホルモン単剤のため、エストロゲンを摂取しなくてもいいメリットがあります。

OCには、内服できない方があり、特に我々がよく遭遇するのが、喫煙者です。喫煙者、36歳以上、と言う条件にOCが加わると、血栓症のリスクが高くなります。偽閉経療法の副作用が強く出ると、他に選択肢が無く、患者さんも我々も頭を悩ましていたのですが、これらの患者さんに向いている治療かもしれません。

治療法や処方に関して、興味のある方は、外来でもお話していますので、お気軽にお尋ねください。


関連記事更新

2007年08月24日
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜


関連記事
友人の江夏亜希子先生も、ブログで紹介していました。是非ご覧ください。
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2008年01月05日

卵巣チョコレートのう胞のがん化

ここ数年、卵巣チョコレートのう胞のがん化が話題になっています。

チョコレートのう胞のがん化については、以前より知られていました。子宮筋腫が悪性化しないのと対照的です。

がん化はチョコレートのう胞患者さんの、約1%くらいにみられる、と言われていますが、チョコレートのう胞を持っている患者さんの総数が分からないため、この数字はあるいはもっと低いかもしれません。
しかし、産婦人科医ならば、一度ならずもチョコレートのう胞ががん化した患者さんを診たことがあると思います。

がん化は大体40歳代が多いようです。50歳を過ぎ、閉経を迎えてからは、内膜症自体が良くなるので、閉経後に内膜症の定期健診に通われる患者さんが少ないため、この年代にも多いのかもしれません。
最も若い方は、私は30歳代の方をお二人診たことがあります。

卵巣がんには様々な組織型があります。組織型とは、がんの性質を表す、と説明できるかもしれませんが、がん細胞の形により、分類されます。子宮頸がんの多くが扁平上皮がん、と言う組織であるのと、これも対照的です。
チョコレートのう胞のがん化は、「明細胞がん」と「類内膜腺がん」の二つの組織型が知られており、前者は予後の悪いことが多い組織型です。
もちろん、がんなので、治療が遅れる、また進行がんであれば、どんな組織型でも予後は悪くなりますが、卵巣がんは様々ながんの中でも、比較的予後が良い、と知られており、特に抗がん剤の効果が良いことがその大きな理由です。
類内膜腺がんは、抗がん剤の効果がいいのですが、反対に明細胞がんは、抗がん剤が効きにくく、進行がんで発見されると、大変予後が悪いです。

今回の記事では、内膜症、チョコレートのう胞を持つ患者さんの不安を煽るようなつもりは毛頭なく、また、チョコレートのう胞の患者さんに、将来がんになるから早く手術しなさい、と言う意図もありません。がん化率が1%であることが、高いか、低いか。患者さんにとってはとても高く感じるでしょう、100人に一人ががん化、と考えると。チョコレートのう胞を持っていない、近親に患者さんがいない方であれば、99人ががん化しない、ととれるかもしれません。どちらも立場により、解釈が異なると思いますが、われわれ医療者からすると、チョコレートのう胞=手術、とは考えにくいです。

手術を必要とする方へは、お勧めしていますが、もしかしたら薬物療法で改善できるのではないか、また薬物療法もせず、自然経過をみていくだけで済む方もあるのではないか、こういう観点は、必ずしも手術療法が100%でないことを踏まえてです。手術に根治的方法を選択できれば、再発もありませんが、根治的とは、卵巣、ないしは子宮を摘出する方法。内膜症を抱える世代は、ほとんどの方が卵巣も、子宮も、失うことのできない大切な臓器です。
根治的な手術法に対し、(名前は悪いですが)姑息的な手術法が卵巣を残す方法。大体3割くらいの方が再発します。早い方は術後半年以内です。
手術によるトラブル、合併症も皆無とは言えません。
これらの観点から、将来がん化?、だったら今のうちに皆さんが手術を、と言い難いのです。

どうぞご心配な方は、お気軽にご相談ください。その方のライフステージにあった、また価値観を尊重した治療法を提示したいと思います。
posted by 桜井明弘 at 00:44| Comment(0) | TrackBack(2) | 子宮内膜症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする