2007年09月23日

不妊スクリーニング検査 〜基礎体温表・ホルモン検査(基礎値)〜

これまでも基礎体温の役割重要性について、触れてきました。
ここでは、不妊症スクリーニング検査としての役割について書きます。

基礎体温の変化は排卵日や月経の予測、着床期の黄体機能、さらに妊娠の判定に役立ちます。
毎朝、目が覚めたら起き上がる前に(トイレに行く前に)、ふとんの中で婦人体温計で体温を測り記録して下さい。一般的なデジタル体温計が経済的で使いやすく、この体温を表に作ってみて下さい。体温表は薬局などでも安価で購入できますし、クリニックでもお配りしています。メモリー式の体温計を使っている方は、受診前にできれば3ヶ月ほどの体温を表に作ってお持ち下さい。
体温計測は、当初は面倒だったり、上手く測れないこともあるでしょう。毎日の変化が気になったり、自分の体温は異常ではないか、と思われる方も多いですが、外来受診の時は必ず持参して下さい。不妊診療に重要な排卵日の決定や黄体期の評価に用いますで、一緒に日々の変化を見てみましょう。

また、月経期にLH、FSH、プロラクチン、テストステロンのホルモン検査をします。月経期は各種のホルモンが最も低く、この値を基礎値として、排卵障害や卵巣機能不全を起こす基礎的な疾患が無いか、またこの値を参考に排卵期の診断に役立てることが出来ます。
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2007年09月12日

不妊スクリーニング検査 〜内診・経腟超音波検査・子宮頸がん検査〜

不妊スクリーニング検査、ラインナップの詳細です。

内診や経腟超音波検査は婦人科の診察の基本になるもので子宮、卵巣の大きさ、位置、動きやすさなどを調べます。

超音波は検査の精度を上げるため、腟から細い器械(プローブ)を用います。これにより子宮筋腫、卵巣腫瘍などを診断することができます。特に子宮筋腫はその発生した部分が重要です。また子宮内膜症不妊原因として知られており、卵巣チョコレートのう胞子宮腺筋症を形成すると診断できます。超音波はその後の外来でも、子宮の内膜や卵巣にできる卵胞・黄体の状態を確認するため、適時行います。

また、不妊治療に先立ち、1年以内に子宮頚がんの検査をされていない方は、同時に検査することをおすすめしています。
横浜市民の方は、横浜市の子宮頚がん検診もご利用になれます。
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2007年08月18日

生殖医療カウンセリング

当クリニックの生殖医療コンセプトの一つに、「心に優しく」があります。

生殖医療、不妊治療では、多くの悩みやストレスを抱えると思います。

妊娠への期待感と、上手く妊娠しなかったときの失望感が主な原因だと思います。また家族、職場、周囲の理解が得られないことも大きいですし、自費診療もあり、治療費がかさむことも大きいと思います。

現在「産婦人科クリニック さくら」のスタッフも、生殖医療を基礎から勉強しなおし、またカウンセリングについても勉強しております。

現段階では専門のカウンセリングを行う時間や診療を準備しているところです。

治療に疲れたな、どうしたらいいんだろう、もっともっと詳しく知りたいことがある、どんなことでも構いませんので、院長や桜井加那子医師をはじめ、どのスタッフにでもお声を掛けてください。皆さんとともに真摯に考え、よりよい解決策を見出すお手伝いが出来たら、と思います。
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2007年08月12日

精子凍結保存

当クリニックで行っている生殖医療の一つに「精子凍結保存」があります。

文字通り、ご主人の精液を、液体窒素の中で凍結保存する方法です。

受精卵凍結と同様に理論的には液体窒素中で半永久的に保存することができます。体外受精や人工授精に必要なときに解凍して用います。

主な適応は、
・体外受精や人工授精時に、仕事や出張などで精液を採取できない方。
・精液の所見が採取するたびに異なる、所見が悪いことがある方。
・特に悪性腫瘍のため、手術療法や放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)を予定されており、その治療のために将来像性機能が障害される可能性がある方(配偶者の有無を問わず、未成年でも可能)
(→2012年11月23日、当面この最後の適応に当てはまる精子凍結を休止させて頂きました)
です。

女性は採卵や排卵に向けて、排卵誘発剤を使ったり、数回の受診、採血、超音波検査を行って、受精の準備をしていきます。
体外受精・人工授精時にご主人のご都合が悪かったり、精液所見が思わしくないとき、それまでの努力、苦労が無駄になってしまいます。
月に一回のチャンスを無駄にしないためにも、上記の方を対象に、精子凍結保存を行っています。

・精液の採取方法は、精液検査と同様です。滅菌した清潔な容器で採取していただきます。
・精液の所見によっては、数回分に分けて保存することも可能です。
・採卵や人工授精で用いる際に、あらかじめ解凍処理を行います。以後は新鮮精子を用いる場合と同様です。
・費用は以下の通りです。
  精子調整:10000円/回
  凍結管理:10000円/年
  解凍処理:5000円/回

精子は遺伝子が含まれているためとても大切です。あらかじめ承諾書を頂いた上で、慎重に取り扱わせていただきます。詳しくはクリニックでご案内しております。
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2007年06月14日

生殖医療の相談・検査・治療

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「産婦人科クリニック さくら」で行う、主な検査、生殖医療(不妊治療)の概念図を示しました。

妊娠の希望、不妊に対する考え、価値観は、皆さんそれぞれ異なったものをお持ちです。当クリニックでは、初診時、または治療中に随時、時間をかけて患者さんの価値観を伺っていきたいと思います。

「不妊スクリーニング検査」は、妊娠できないのではないか、しにくいのではないか、と言った原因を調べる検査で、説明をした上で選択していただいています。

生殖医療(不妊治療)には、大きく分けると「一般生殖医療」と「高度生殖医療」があります。
「一般生殖医療」では、タイミング法を中心に、排卵のタイミングをはかったり、排卵・性交後の状態、またホルモン分泌などの内分泌環境について調べながら治療を進めます。
不妊スクリーニングで妊娠の妨げになる子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫、卵管閉鎖などが認められた場合、「手術療法」の適応となることがあります。基本的には身体に優しい内視鏡下手術(腹腔鏡・子宮鏡)をお勧めしています。院長が非常勤勤務をしている賛育会病院も紹介対象です。一般生殖医療を進めながら、不妊因子の検索のために腹腔鏡を行うこともあります。

こうして治療を進めつつ「一般生殖医療」「高度生殖医療」と「手術療法」を患者さんと相談して行きます。

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2007年06月11日

第20回不妊カウンセラー・体外受精コーディネーター養成講座

以前に第19回の養成講座に参加したことを書きましたが、今回は第20回。

参加する度に新しい考えに触れることができ、勉強になります。

その中でも今回特に考えさせられたのが、「ハイエイジの女性が治療をやめる時 ー私がカウンセラーの場合ー」というディスカッション形式の講演でした。
それと「不妊治療とケアを取り巻く倫理的課題」という教育講演。

前者で話題になった、治療をやめるとき、きっかけ。医師から治療を止める頃と勧められたり、自分で納得いくまで治療し、自分で止める時を選択する場合と。そんなとき、カウンセラーはどのようなサポートができるのか、といった内容でした。
実際にいつ止めるのか、何歳で止めるのか、どの治療をしたら止めるのか、と選択肢は様々で、また患者さんの考え、価値観があるため、やはり一概には言えません。私も日常診療で、大変難しい問題である、と思っていました。

倫理面の話題では、やはり代理出産や卵子提供。
献血、輸血は医療行為として市民権を得ている。また骨髄移植や生体肝移植も同様。
同じ臓器の提供や細胞の提供である代理出産、卵子提供がなぜいけないのか、また、ほんとうに門戸を開くべきなのか。

前にも書きましたが、やはり世論の醸成がまだまだだと思います。国民のコンセンサス、と言っても、すぐに話題にされなくなってしまっては、ディスカッションも進みません。
現実に困っている人達を目の前に、色々な立場、考えを議論し尽くさなければならないと思います。
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2007年06月09日

私たちって、「不妊症」なの?


一度はこう思ったこと、ある方は多いのではないでしょうか。

日本産科婦人科学会では、「不妊症」とは、「健康な夫婦が2年以上妊娠に至らない」こと、と定義されています。

しかし、赤ちゃんが欲しいという願いのきっかけ、気持ちの強さは人それぞれです。
「妊娠できる身体でしょうか」「妊娠しにくい気がするのですが」「不妊原因を調べて欲しい」「一日でも早く妊娠したい」と、思いは違いますね。
必ずしも2年経たなくても、1日も早く赤ちゃんをその手に抱きたい、その気持ちを尊重し、必要な検査、必要な治療を一緒に考えていきたいとおもいます。
なぜ妊娠しないのか、どうしたら妊娠できるのか、妊娠するために何をしたらいいのか、と書き出すと当たり前のことですが、ここから始めてみましょう。

また、「不育症」という、妊娠はできるけれど、初期の流産を繰り返し、お産に至らない場合もありますが、不妊症と同様に当クリニックで、検査、治療法を考えましょう。
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2007年05月28日

生殖医療のコンセプト

「生殖医療のご案内」(不妊治療パンフレット)β版を配布し始めました。
β版とは、まだ未完成のため、そんなバージョン名になりました。本来であれば完成してから配りたかったのですが、できている部分だけでも読んでいただきたく、現在配布しているものは、生殖医療のコンセプト、生殖医療の流れ、不妊スクリーニング検査、排卵誘発法について解説したものです。ここまでで大体10ページくらいになります。

今日はその中から、生殖医療のコンセプトをご案内します。
3つのコンセプトからなっており、
・ カラダに優しく
・ 妊娠後にも優しく
・ こころに優しく
です。

「カラダに優しく」には、自然周期や副作用の少ない排卵誘発剤、夾雑物のないリコンビナントFSHの使用が挙げられます。また排卵管理ではGnRHアゴニストの点鼻薬を用いることで、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症を予防したいと思います。さらに高度生殖医療(体外受精など)における採卵での安全管理に細心の注意を配ります。
「妊娠後にも優しく」はちょっと字余りの感がありますが、妊娠時のリスクを低下させるために、多胎妊娠やOHSSの発生を極力避けるようにします。すなわち、以前にも触れた単一胚細胞移植(SET)や「カラダに優しく」と同様GnRHアゴニストによる排卵コントロールを行います。
「こころに優しく」もこれまで再三触れてきた点ですが、言うまでもなく、患者さんの気持ちを大切にしたいと思います。ご夫婦の価値観を尊重し、適切な治療法を一緒に考えていきます。また、適時カウンセリングを行えるよう、スタッフの教育、研修も行っています。
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2007年01月29日

高崎ARTクリニック見学

27日午後から、先輩である高崎の佐藤病院副院長が理事長を務められる「高崎ARTクリニック」の見学に行って来ました。

理事長の佐藤雄一先生は、高校、大学、産婦人科医局を通じて、不妊診療や内視鏡下手術を専門とするグループまで、実に20年近く、ずっと1年先輩で、まさに公私ともにお世話になっている方です。
今回の私のクリニック開設に当たっても多くの助言を頂いております。

その先生が、2007年1月4日に高崎市に「高崎ARTクリニック」を開設され、院長にはやはり私の後輩でもある会田拓也先生が就任され、早くも体外受精で妊娠された方があったそうです。

クリニックの雰囲気や設立理念、さらに不妊診療の方針まで、斬新なアイディアが盛り込まれており、私のクリニックも既に内装などほとんど決まっておりますが、大変参考になりました。

佐藤先生からは、不妊サイト不妊研究会にも誘って頂き、今後も永く、お付き合いをさせて頂きたいと思っております。
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2007年01月23日

精子・卵子提供 〜日本生殖医療心理カウンセリング学会に参加して〜

20日の懇親会と21日の学会に参加してきました。

懇親会では、多くの方々をご紹介頂き、人のめぐり合いに感謝しています。

21日の学会には、副院長とスタッフ2名と参加し、勉強してきました。
以前の職場に勤務されていた看護師さんと偶然お会いしたりして、この領域で活躍される方が増えてきたなあ、と実感しました。

昨年から日本不妊カウンセリング学会に参加するようになり、生殖医療におけるカウンセリングの必要性や方法についてますます考えるようになって来ました。

今回、養子縁組を手掛けてらっしゃる方や、不妊カウンセリングの具体的なデモンストレーションもあり、とてもためになりました。

最後のディスカッションは、AIDをめぐる問題点でした。
AIDとは、「Artificial Insemination with Donor」の略で、AIH、つまり「with Husband」と異なり、精子提供者がドナー、つまり第三者です。
どちらも人工授精の方法で、狭義の人工授精はIUI、IntraUterine Insemination、訳すと子宮内受精です。

人工授精で子宮内に注入される精子を提供するのはご主人のものに決まっている、と思われる方も多いでしょうが、もしもご主人が男性不妊であったらどうしましょう。
男性不妊にもいくつかありますが、「無精子症」と言う病態があります。射出される「精液」に「精子」が含まれていない状態です。
これも分類され、閉塞性と非閉塞性に分けられます。

閉塞性は精巣から精液が通る尿道までのどこかの通過が悪く、精子があるのに射精されない病態。この場合、女性の卵子を採卵し、ご主人の精子を精巣から直接採ってきて、体外受精(IVF)の一方法である、顕微授精(ICSI)を行うことで受精卵が得られます。
一方で、非閉塞性は精巣の一部を検査で採取しても、精子が全くない状態ですので、こちらのほうが重く、また絶対的にご主人のお子さんを得ることができません。つまり、精子提供を受けなければなりません。精子提供者(Donor)の精子を人工授精の際に用いるAIDを行うのです。
非閉塞性の無精子症の場合、男性に染色体異常があることがありますが、これはまた別の機会に。

私が問題に感じたのは、AIDを受けるカップルと精子提供者であるDonorの考えと、実際に生まれたお子さんたちの考え方の相違です。

勿論、ご主人以外の精子を提供されなければならない、そこまでしてもお子さんを望んでいる、AIDを実際に受けるまでに夫婦の間で計り知れない葛藤があったでしょう。治療を受けている間、お子さんを授かり妊娠中、そして育児中も、解決できない問題をずっと抱えていかなければならないかもしれません。

その問題の一つにお子さんへの「告知」があります。
お子さんが育ててきてくれたお父さんと「遺伝学的」な親子関係にない、ということです。これは、養子縁組や卵子・受精卵提供の際も同様でしょう。また反対に、代理出産では産んだのは私ではない、と言う告知もあるかもしれません。

もしも自分がAIDや卵子・受精卵提供など受けなければ妊娠できないとして、生まれてきたお子さんに告知しますか?
何も分からなければ一生そのまま穏便に過ごしていたい。アンケートによると7割近くの方がそう思っているようです。
告知する、と思ってらっしゃる方は3割にも満たない。

一方のAIDで生まれた「お子さん」の気持ちはどうでしょうか。
この学会のディスカッションでは、AIDで生まれた方の講演もありました。
生まれた子供には「出自」を知る権利があり、既に諸外国ではこれを保障しつつあります。
涙ながらに訴えるその方のお気持ち、自分は自分を育ててくれた親の子供である、と当たり前に思ってきたことが覆されると、生まれてきてから歩んできた今までの人生の根底から崩れ落ちる、そうです。
さらにその出自とともに、今後も人生を過ごしていかなければならない「当事者」は、お子さん自身のほうである、と。
もしも自分が同じ境遇にあったら、と考えると、胸の潰れる思いがします。

精子提供者の気持ちも、ほとんどAIDを受けるカップルに近く、提供を受けた方、生まれた子供に対しては、自分の匿名性を保持したいようです。

勿論、子供に対して告知し、隠し立てのない良好な親子関係が構築できる方も多いとは思います。
しかしながら、このように、AIDを通じた「親」と「子」の気持ちの相違は、治療を受ける患者さん、治療を施す医療者に共通の問題として、考えていかなければなりません。
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2007年01月16日

第4回 日本生殖医療心理カウンセリング学会

今週末は学会です。

http://www.repro-psycho.org/syukai/index.html

昨秋カウンセラー養成講座を受講した「日本不妊カウンセリング学会」とは別です。

http://cl-sacra.seesaa.net/article/25166924.html

参加後に、得られたものをフィードバックさせていきたいと思います。
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2006年12月26日

精子凍結

産婦人科医の最も権威ある学会である、日本産婦人科学会の見解です。

精子の凍結保存に関する見解

一見、当たり前のようですが、明文化しないと利用に歯止めがかからなくなる可能性があるため、このような会告が出されたようです。
ラベル:精子凍結
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2006年11月25日

不妊カウンセリング

11月9、10日に大阪で行われた第51回日本生殖医学会に参加しました。
そこで最も印象深かった講演が「ART不成功時の看護的心理的援助」というシンポジウムで、国内の不妊カウンセリングに携わる方々が担当されていました。
中でも東京HARTクリニックの心理カウンセラー、平山史朗さんのお話し。
臨床心理士である平山さんは、ART不成功時の悲しみ、辛さを非常に分かりやすく分析され、それに対する治療側の対応法も具体的に示されていました。

心理用語に「対象喪失」というものがあるそうです、愛するもの、近親者や親しい人を失った時に襲う心理状態で、そこから回復する過程があります。つまり時間をかけて悲しみが癒されていく、ということでしょう。
不妊治療でも同様に「対象喪失」と呼べるそうですが、親しい人を失うのと少し異なるようです。

不妊治療の末、生理が来てしまうと、妊娠が成立しなかった、治療が結果を結ばなかった、と言うことになりますが、子宮内に移植された受精卵、胚を失ったと言う単純なものではなく、治療にかかった時間や費用は勿論、親になる機会や期待していた妊娠・出産の家族像、更には女性としてのアイデンティティーの喪失にまで繋がる複雑なものです。
そして、治療法によっては、その喪失から立ち直る間もなく、次の治療を考えたり、始めなければなりません。

患者さんそれぞれの価値観や背負っているものが違うので、一概には言えないでしょうし、一律に押しつけるような方法は間違っていると思いますが、患者さんの声に耳を傾け、より良い治療法を追求していきたいと思いました。
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2006年11月08日

第51回日本生殖医学会総会

明日より大阪で学会があります。昨年までは日本不妊学会、と称していたのですが、今年改名しました。

夏の軽井沢の学会同様、一つでも多くの知見を得たいと思っています。
http://cl-sacra.seesaa.net/article/24380183.html

明日は朝早くから学会がありますので、今夜これから大阪に発ちます。

帰ったらまた報告します。
posted by 桜井明弘 at 18:28| Comment(3) | TrackBack(1) | 生殖医療(不妊治療)一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月20日

代理出産

凄く反響を呼びましたね、以下にまとめられてあります。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/surrogate_birth/

皆さんはどのように感じましたか?

ここからは、22日付で追記する内容です。

物事の善し悪し、ことに倫理観、価値観が絡んだ場合、容易に善悪を判断出来ないし、それを法律で制御することは困難です。

ただ、現実問題として、現に困っている患者さんがいます。

法として整備出来ない原因に議員の関心不足が残念ながらあるそうです。

果たして関心不足は議員だけでしょうか? 多くの国民に共通して言えるのではないでしょうか。

当事者が悩んだり、傷ついたりしているだけでは、この国は変わりません、多くの部外者も巻き込んだ論争がないと、法の整備、価値観の変遷が期待出来ないのです。

不妊治療とその倫理問題は、とかくタブー視されがちで、議論に挙がりにくいのは確かでしょう。しかし私はタブー視せず、多くの人々が積極的に議論すべきであると思います。
もし自分たちであったら、自分の子供がそうであったら、そう思えば、人ごとではありません。

私もこのブログを使って、少しずつ啓蒙が出来たら、と思います。
ラベル:代理出産
posted by 桜井明弘 at 01:18| Comment(3) | TrackBack(3) | 生殖医療(不妊治療)一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月10日

不妊カウンセラー養成講座

連休中の土日、虎ノ門で行われました。
「日本不妊カウンセリング学会」の主催で、正しくは、「第19回不妊カウンセラー・体外受精コーディネーター養成講座」といいます。


かねてより、様々な医療分野の中でも、特に不妊治療における患者さんのカウンセリングの重要性は分かっていたつもりでしたが、限られた診療時間内では、限界を感じていました。

しかし、本学会の学術講演会、いわゆる研究発表に5月に出席し、カウンセリングの重要性を再認識しました。

今回はいわゆる学会、学術講演会ではなく、養成講座ですので、「講義」に近いものでした。この業界で第1線で活躍される方々の発表で、大変勉強になりました。
改めてクリニックの診療姿勢、具体的な診療の流れや内容が浮かび上がってきました。

今回、2名のスタッフとともに参加したのですが、みな熱心に、真摯に、前向きに取り組んでくれそうです。

1月に別のカウンセリング学会があり、当講座や当学会の学術講演会もあり、今後も自分の診療を見直したり、新しい知見を得るためにも、スタッフと一緒に勉強して行きたいと思います。
posted by 桜井明弘 at 00:29| Comment(1) | TrackBack(4) | 生殖医療(不妊治療)一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする