20日の懇親会と21日の
学会に参加してきました。
懇親会では、多くの方々をご紹介頂き、人のめぐり合いに感謝しています。
21日の学会には、副院長とスタッフ2名と参加し、勉強してきました。
以前の職場に勤務されていた看護師さんと偶然お会いしたりして、この領域で活躍される方が増えてきたなあ、と実感しました。
昨年から
日本不妊カウンセリング学会に参加するようになり、
生殖医療におけるカウンセリングの必要性や方法についてますます考えるようになって来ました。
今回、養子縁組を手掛けてらっしゃる方や、不妊カウンセリングの具体的なデモンストレーションもあり、とてもためになりました。
最後のディスカッションは、AIDをめぐる問題点でした。
AIDとは、「Artificial Insemination with Donor」の略で、AIH、つまり「with Husband」と異なり、精子提供者がドナー、つまり第三者です。
どちらも人工授精の方法で、狭義の人工授精はIUI、IntraUterine Insemination、訳すと子宮内受精です。
人工授精で子宮内に注入される精子を提供するのはご主人のものに決まっている、と思われる方も多いでしょうが、もしもご主人が男性不妊であったらどうしましょう。
男性不妊にもいくつかありますが、「無精子症」と言う病態があります。射出される「精液」に「精子」が含まれていない状態です。
これも分類され、閉塞性と非閉塞性に分けられます。
閉塞性は精巣から精液が通る尿道までのどこかの通過が悪く、精子があるのに射精されない病態。この場合、女性の卵子を採卵し、ご主人の精子を精巣から直接採ってきて、体外受精(IVF)の一方法である、顕微授精(ICSI)を行うことで受精卵が得られます。
一方で、非閉塞性は精巣の一部を検査で採取しても、精子が全くない状態ですので、こちらのほうが重く、また絶対的にご主人のお子さんを得ることができません。つまり、精子提供を受けなければなりません。精子提供者(Donor)の精子を人工授精の際に用いるAIDを行うのです。
非閉塞性の無精子症の場合、男性に染色体異常があることがありますが、これはまた別の機会に。
私が問題に感じたのは、AIDを受けるカップルと精子提供者であるDonorの考えと、実際に生まれたお子さんたちの考え方の相違です。
勿論、ご主人以外の精子を提供されなければならない、そこまでしてもお子さんを望んでいる、AIDを実際に受けるまでに夫婦の間で計り知れない葛藤があったでしょう。治療を受けている間、お子さんを授かり妊娠中、そして育児中も、解決できない問題をずっと抱えていかなければならないかもしれません。
その問題の一つにお子さんへの「告知」があります。
お子さんが育ててきてくれたお父さんと「遺伝学的」な親子関係にない、ということです。これは、養子縁組や卵子・受精卵提供の際も同様でしょう。また反対に、代理出産では産んだのは私ではない、と言う告知もあるかもしれません。
もしも自分がAIDや卵子・受精卵提供など受けなければ妊娠できないとして、生まれてきたお子さんに告知しますか?
何も分からなければ一生そのまま穏便に過ごしていたい。アンケートによると7割近くの方がそう思っているようです。
告知する、と思ってらっしゃる方は3割にも満たない。
一方のAIDで生まれた「お子さん」の気持ちはどうでしょうか。
この学会のディスカッションでは、AIDで生まれた方の講演もありました。
生まれた子供には「出自」を知る権利があり、既に諸外国ではこれを保障しつつあります。
涙ながらに訴えるその方のお気持ち、自分は自分を育ててくれた親の子供である、と当たり前に思ってきたことが覆されると、生まれてきてから歩んできた今までの人生の根底から崩れ落ちる、そうです。
さらにその出自とともに、今後も人生を過ごしていかなければならない「当事者」は、お子さん自身のほうである、と。
もしも自分が同じ境遇にあったら、と考えると、胸の潰れる思いがします。
精子提供者の気持ちも、ほとんどAIDを受けるカップルに近く、提供を受けた方、生まれた子供に対しては、自分の匿名性を保持したいようです。
勿論、子供に対して告知し、隠し立てのない良好な親子関係が構築できる方も多いとは思います。
しかしながら、このように、AIDを通じた「親」と「子」の気持ちの相違は、治療を受ける患者さん、治療を施す医療者に共通の問題として、考えていかなければなりません。