2006年10月21日

奈良県の妊婦死亡

またしても、産科の現場で痛ましい事件が起こってしまいました。
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12353396

報道だけでは、我々産婦人科医でも、責任の所在がどこにあるのか、分かりにくい、というのが正直な感想です。
誰が悪いのか、個人責任の追及は、当事者でないため、報道内容だけで判断して、外からどうのこうの言うことを控えますが、私の敬愛する先輩もブログで書いておられるのですが、根底にこの国の医療に対する考え方の誤りがあると思います。
http://kumonoyouni.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_a76a.html

医療費抑制政策もそうですし、国民皆保険制度、これ自体は素晴らしい世界に誇れる制度のはずなのに、医療は無料、もしくは安くあるべきだという国民の考え方があると思います、我々医療者側からすると、安かろう悪かろう、とならざるを得ない、と思う部分もあります。
どこの業界でも、コストをかけなければ、質が低下します。
医療にはお金をかけないようにするべきでしょうか、大切な命、身体を預けるのに、より低価格でサービスを供給しろ、というのは矛盾がないでしょうか。そんな医療制度を要求して、安心して治療が受けられると思いますか?
これまでの医療機関が、余計に収入を得ていた、のでしょうか、ある部分では我々もそうであった、と肯定せざるを得ない面があります。

しかし、先進国中最低レベルの医療費でこれまでの医療が整備されてきた事実に目を向けて欲しいと思います。医療の現場は既に限界に近づいており、破綻しつつあります。
安心して治療が受けられますか? 心配で病気にもなれない、という声が聞こえてきそうです。

亡くなった妊婦さん、ご遺族には心からお悔やみを申し上げます。

医療政策や医療制度、医療機関の整備が、誰かの犠牲が無ければ変わらない、というのでは、余りにも痛ましすぎます。


posted by 桜井明弘 at 02:58| Comment(3) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月09日

祝 秋篠宮妃殿下、親王ご生誕

謹んで、心よりお祝い申し上げます。

この際、親王、内親王を問わず、ロイヤルファミリーに新しい命が誕生したことを、心から喜ばしく思います。

A.O.さん、Futabinさんの書き込みも頂きましたが、おっしゃる通り、嬉しいこと、喜ばしいことも、記事にしなければならない、そう思って、これまで担当させて頂いた、特に嬉しかった患者さんのことなど、個人情報に注意しつつ、書かせて頂こうか、と準備していました。
http://cl-sacra.seesaa.net/article/21797758.html#comment

ですが、さしあたり、この度の無事のご生誕、沢山の国民、殊に子供を作ろうと思っている女性に、大きな希望と勇気を与え、非常にポジティブな話題となり、私もこのようなお祝いを申し上げたくてなりませんでした。
posted by 桜井明弘 at 01:23| Comment(0) | TrackBack(1) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月02日

合計特殊出生率1.25

少し前に発表された数字ですが、先日の日本医師会新聞にその問題点が再度取り上げられていました。
年々最低記録を更新し続けている、一人の女性が生涯にもうけるお子さんの人数。平均すると、一人の女性が、一人か、せいぜい二人のお子さんしか産んでいない、と解釈出来ます。
都道府県別の率が新聞にも掲載されましたが、各地ともに軒並み低下、わずかに福井県が上昇、もう1県横ばい。東京は、恐ろしいことに1を下回りました、勿論、仕事を持ったり、結婚前の女性の率が高いこともあると思いますが。
この数字の解釈、なぜ子供を産まないのか、しつこいほどに議論されていますが、皆さんはどう感じられましたか?
posted by 桜井明弘 at 02:15| Comment(4) | TrackBack(4) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月21日

産科医不足

頂いたコメント(http://cl-sacra.seesaa.net/article/21002915.html#comment)を読んで、今、社会問題となり、産婦人科医の間でもトピックの一つ、産科医不足問題について書こうと思っていました。
20日のTBS、筑紫哲也のNews23でも、「お産難民続出!産婦人科医ゼロ時代」として特集が組まれていました。
http://www.tbs.co.jp/news23/onair/tokusyu/2006_07/20060720.html

医学部卒業後、医師国家試験に合格すると、晴れて「お医者さん」として認められ、医療に従事することになるのですが、内科を選ぼうと外科を選ぼうと、どの科に向いていようと、専門とする診療科を選ぶのは医師個人の自由なんです。勿論、後から変更も可能です。

コメントを書いて下さった方は、生まれ変わったら医師、それも産婦人科医になりたい、なんてとても嬉しいことを書いてくれましたが、現場では、理想と現実に隔たりがあるんです。「『社会貢献』よりも『医師になる事』が重要視されているのでしょうか」とも書かれていますが、現実は少しニュアンスが違うかもしれません。

なぜ産科医が不足しているのか、を産婦人科医師である私が率直に挙げると、

・ 勤務態勢が激務、これはさんざん報道にも取り上げられています。
・ 医療訴訟が多い
・ 医療給与体系、もしくは仕事に対する評価

だと思います。

「医療訴訟が多い」のは何故でしょう、二つあります。
まず、分娩は正常に産まれて当たり前、お母さん、赤ちゃんに問題が起こるなんて信じられない、といった妊娠・分娩に対するリスク意識が低いことでしょう。産科医療に携わっていると、勿論正常分娩が大多数ですが、経腟分娩が出来ないため、帝王切開になったり、妊娠合併症(流産、早産、中毒症、これは現在では妊娠高血圧症候群、と改称されました)がある妊婦さん、リスクの軽い、重い、の違いはあるけれど、怖いのが、これまで全く問題がなかった、異常が起こる徴候がなかった妊婦さんが、今日突然異常になることがあるのです、それもかなり重症になったり。
決して脅かすつもりではありませんが、日本の周産期死亡率、お母さんが亡くなる率、世界に誇るべき第1位です。お産でお母さんが亡くなった、なんてほとんど聞いたこと、ありませんよね。

もう一つは預かる命が二つであること。お母さんと赤ちゃんの双方を管理する科、他にありますか? 私のポリシー、お母さんと赤ちゃんが安全に、そして無事に退院されることに心血を注いでいます。でも、中には、どちらか一方が犠牲にならざるを得ない状況が起こり得るのです。それでも、どちらかに後遺症が残ったらノ。それは怒りが生じるのも理解出来ますが、不可避の状況も沢山経験してきました。ほとんど言いがかりに近い、苦情、私も経験がありますが、こういうものも最近では医療訴訟に発展しています。

「仕事に対する評価」は、人それぞれ感じることがありますよね、医療に限らず。働いても働いても暮らしはよくならず、ではありませんが、一般に社会の需要供給バランスを考えると、求められるものが多い職種はそれなりに給与面での保証があります、具体的には高給となります。また責任の重い職種ほどその傾向があります。
医療界ではそれがありません。全ての科が一律に医師国家試験取得後の年数に応じた給与となります。
例えば、9時17時で勤務を終えても8時から日付が変わるまで働きずくめでも、同じ。病院に対する貢献度が軽くても重くても同じ。
医は仁術、算術ではない、のが医師に対する先人の教えですが、実際モチベーションは下がります。
また、少しずれますが、儲からない病院は潰れて下さい、と言う方針は国の施策です。

このように、産科医に限らず、同じような現状から、小児科、麻酔科の医師が不足しつつあります。

有効で、具体的な打開策はあるのでしょうか。
ラベル:産婦人科医
posted by 桜井明弘 at 01:21| Comment(3) | TrackBack(3) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

腹腔鏡下手術 アニマル・トレーニング

福島・須賀川市に順天堂大学産婦人科医局の6名の後輩の先生達と1泊で研修旅行に行って来ました。腹腔鏡下手術機器では有名なジョンソン・エンド・ジョンソン社の研究センターです。
腹腔鏡下手術は産婦人科に限らず、外科や泌尿器科、内科でも行われている手術法で、患者さんへのストレスが小さく、手術の創(きず)も小さな低侵襲手術です。
産婦人科領域では、卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮外妊娠、多嚢胞性卵巣など、様々な病気に対して行われ、私の勤務する賛育会病院では、婦人科手術の過半数が腹腔鏡で行われています。
一方で、一般の開腹手術と比べ、手術手技は難しく、技術を要します。
先日も東京の大学病院で起こった医療事故の判決が出て、話題になりました。

我々医師は、通常手術など、練習が出来ません。上司、先輩の手術を見ながら技術を盗み、ようやく執刀が許可されるのですが、最初から巧くいくはずがありません。人の身体、病気、それぞれが異なることもその要因です。
初めて行う手術、これを患者さんに行う前に、腹腔鏡下手術では、ブタを用いたアニマルトレーニングをやっています。

ブタは人の身体に比較的似ており、卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮外妊娠などの手術をシミュレーション出来ます。
一頭のブタに、3〜4名の医師が執刀し、上に挙げた手術法をそれぞれが行います。研修は9時から開始し、15時頃まで、ただ我々も熱中し、時間オーバーしながら没頭していました。
最後は医療技術向上のために犠牲となったブタに黙祷を捧げ、獣医師により、安楽死が行われます。

ブタのお陰で、参加した若い先生達、みるみる技術向上が見られ、明日からの臨床にきっと役立つに違いありません。

もう一度、黙祷。
posted by 桜井明弘 at 23:07| Comment(4) | TrackBack(2) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月15日

国際モダンホスピタルショウ2006

http://www.noma.or.jp/hs/

来春の新規開業に備え、13日、行って来ました。大変活気あふれる展示会でした。

一番のお目当てはクリニックに導入を考えている電子カルテ。
これまで3社ほどデモをしてもらったのですが、婦人科診療、不妊治療の面から満足度が低かったのです。
それと、クリニックに取り入れたら診療面と患者さんにとって良いものがないか、探したかったのです。

驚いたのは、如何に沢山の業種が医療界を取り巻いているか、ということと、やはりIT関連の展示が多かった、ということ。

私が満足していなかった電子カルテの問題点も解決してくれそうな業者さんを発見。大きな収穫でした。

びっくりしたのは、デサントの展示。デサント、ってスポーツメーカーでしょ? 看護師のウェアや医師の白衣を、数年前から作っているんだそうです。
http://company.nikkei.co.jp/news/news.cfm?Nik_Code=0000448&Page=1&Back_sid=IR_CT&KIJIID=20060605NSS0082&DATE_FORSEARCH=2006/06/05

考えてみれば、白衣は作業着。動きやすさ、快適さと耐久性が求められる、それはスポーツウェアのメーカーだったら、容易に転用出来る、そんな発想の転換に感心しました。

来年は開業後なので、仕事をしている視点で再度見てみたいと思います。
posted by 桜井明弘 at 21:58| Comment(0) | TrackBack(1) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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