2015年03月06日

主人も風疹ワクチン打った方がいいですか? 〜3つの理由〜

不妊患者さんから、「主人も風疹ワクチン打った方がよいですか?」と質問されました。

一昨年から昨年まで、風疹が大流行し、妊婦さんが感染して、先天性風疹症候群の赤ちゃんが全国で44人も出生しました。

また現在23歳以降の男性は、制度の問題で風疹ワクチンを接種していないことが多く、赤ちゃんを考える世代の男性はまさに風疹への抵抗力が無い、と言えます。

昨年までの風疹の流行も、7割以上が男性の感染で、妊婦さんの感染もほとんどがそのご主人からの感染だったとのことです。

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妊娠中に感染すると赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症してしまうことから、長く女性のみが風疹ワクチン接種の対象となっていました。
しかし、当院のデータでも、ワクチンの効果は一時的で、年々その抗体価(免疫力)が低下する可能性があります。

つまり、妊娠する女性はワクチンを打ったものの、妊娠を考える現在、既に抗体が低くなってしまっている可能性、そしてそのご主人はワクチンを打っていないので、簡単に風疹に罹ってしまう可能性があります。


ここからタイトルの答えです。

最近奥様がワクチンを打ったとしても、中には免疫が付かない場合もあり、赤ちゃんへの感染を防ぐためには、是非、ご夫婦でワクチン接種を行って下さい。

また、風疹は発疹が消失するまで感染力があり、ご主人も罹ってしまったらお仕事に行けないことになります。

さらには、ワクチン接種はご自身、奥様、産まれてくる赤ちゃんのためだけではなく、社会的な役割もあります。
風疹に限らず、流行性の病気は、そもそも流行らなければ罹る心配が無い。
流行を少しでも軽くするには、一人でも多くの方がワクチンを接種し、罹らない人を増やすことです。

アレルギーや持病など、様々な理由からワクチンを打てない方もあります。
こう言った方たちも流行を防ぐことで守ってあげることが出来るのです。

尚、女性が風疹ワクチンを接種した場合には、2ヶ月間の避妊期間が必要ですが、男性が接種しても避妊期間はありません。

妊娠前に抗体検査とワクチンをお勧めする、4つのウィルス性疾患について、まとめたブログ記事は、こちらをご覧下さい。

(初出:2014年7月7日)
(補筆修正:2015年3月6日)


ラベル:風疹
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2014年11月16日

植物性エストロゲンの摂取は妊娠に有効?? 〜大豆製品、などの過剰摂取〜 2014年6月25日補筆修正

不妊治療をお受けになっている患者さんからも、時折聞かれるご質問です。

妊娠のためにエストロゲン作用のある食品やサプリメントで、妊娠に良い、とされているものです。

大豆イソフラボン.jpg

・マカ
・イソフラボン
・ザクロ
などです。

イソフラボンは、例えば、納豆、豆乳、きな粉などの大豆製品にも多く含まれています。

マカはサプリメントなどの食品として、ザクロも最近では様々な商品が販売されていますね。

これらは植物性エストロゲンと、まとめられており、卵巣や脂肪組織から分泌するエストロゲンとは異なるものの、エストロゲン作用を持っています。

それらのエストロゲン効果が上手く作用することもあるのかも知れませんが、外来でよく遭遇するが

・不正出血(時に排卵障害に起因します)
・無排卵、あるいは排卵が遅れる
また、閉経後なのに乳房が張る、などで、特に不妊治療患者さんでも排卵が遅れることがよく見られます。

諸検査を行っても、特に子宮に器質的な異常(子宮筋腫や子宮内膜の病気)もないのに、時に貧血を来すほどの過多月経、また、閉経後でも不正出血がたびたび見られることがあります。


2006年の2月に食品安全委員会から、ちょっと異例と感じられる発表があり、新聞などでも報道されました。
簡単に言うと食品に含まれる大豆製品の過剰摂取により、大豆イソフラボンがエストロゲンという女性ホルモン作用を持っているため、閉経前後の女性にとって、また妊婦さんや乳幼児にとって悪影響がある可能性があるそうです。


エストロゲンの作用は、主に子宮内膜や乳腺を標的とします。
不正性器出血や過多月経、乳房の緊満が現れたり、少し大袈裟に言えば、視床下部ー下垂体ー卵巣の月経調整システムに異常を来す、つまり生理不順、更には子宮体癌、乳癌の発生、または促進。

詳しくは
http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_isoflavone180309_4.pdf
↑ちょっと専門的かも知れません。

分かりやすいのは
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/421/421862.html

10年ほど前によく外来で遭遇したのが、ザクロ。ジュースなどでブームになりましたね。
当時不正出血のある女性、特に閉経後の方が多かった記憶がありますが、ザクロにも植物性エストロゲンが含まれており、やはり過剰摂取で、エストロゲン作用が起こります。

女性ホルモンは適度であればお肌に良く、閉経後の骨粗鬆症、高脂血症に役立つかも知れません、そこが大豆イソフラボンなど植物エストロゲンを勧める健康食品推進の味噌(かけことば?)になっているようです。

私は大豆摂取反対ではありません、納豆、味噌汁、大好きですし、お餅にきな粉がなかったら寂しいです。

健康志向は凄く大切なことです、が、いきすぎると思わぬ弊害が生じます。殊に大豆など日本古来の伝統的な食品でも、このようなことが起こるんですね。何事も適度、が最も良いように思われます。

(2013年11月13日補筆修正)
(2014年6月25日補筆修正)
posted by 桜井明弘 at 01:00| Comment(12) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月01日

混合診療枠拡大への期待 〜高度生殖医療への保険診療の併用〜

「骨太の方針」「成長戦略」と、ニュースや新聞で目に飛び込んできます。

この中で「混合診療枠の拡大」と言うものがありますが、保険診療と自費診療(自由診療)を併用しても構わない、と言うものです。

現在の保険診療では、自費診療を併用した場合、保険で行う診療費や検査、薬剤代など、一切が自費診療となるため、患者さんの負担は単純に3倍くらいになります。

不妊治療を行っている患者さんにはよくご理解頂けていると思いますが、治療、検査、薬剤には、保険適応が無いものが少なくありません。
これは必要性、有効性が認められない、と理由なのですが、例えば不妊治療では超音波検査は必須ですし、血液検査も繰り返し行わなければならない場合もあります。

また、体外受精など高度生殖医療では、一切の治療にかかわる検査、薬剤が自費、と言うことになっており、ただでさえ高額な治療をお受けになっている患者さんの負担は増える一方です。

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医療費が高騰し続けて、日本の国民皆保険制度が破綻寸前、と言うのはご存知かと思います。厚労省、財務省はこれを何とかしなければ、という思いがあります。

こんなデータがあります。
2011年の国民医療費の総額は38兆6000億円、これが2020年には30%も支出が増加する見込み、だそうです。

混合診療の部分的な解禁により、可能な範囲で自費診療を行うようになれば、国や保険機関からの支出が減少することも見込んでいるのでしょう。

他にも混合診療の拡大には、患者さんにとってもメリットがあります。
現在の日本では新薬の認可が大変遅く、諸先進国で当たり前に使われている薬剤が、なかなか認可されない、と言う問題があります。
ものすごく例外的に、皮膚がんの一種、悪性黒色腫の抗がん剤が、世界に先駆けて日本で認可される見通し、との明るいニュースも飛び込んできましたが。

認可されていない新薬が使えると言うことは、患者さんにとって治療法の選択肢が増加する、とても良いことです。

一方で、認可されない、つまり治療効果がまだ明らかでない薬剤、治療法が氾濫する、これが厚労省や日本医師会の心配点で、国民の健康を守る、という大前提が揺るぎかねないのです。


話は元に戻りますが、高度生殖医療に保険が適応されないこと自体が問題ではあります。
不妊症は患者さん個人の問題のみならず、人口減という国家、国民の問題でもあるからです。

採卵や体外受精、体外培養など、それぞれに様々な治療法があり、確かに標準化が難しい医療です。つまり保険適応として保険点数が付けられない部分です。
しかしながら、治療の期間に使用する薬剤や血液検査など、施設間で普遍的に用いられているものは多く、せめてこれら診療、検査、投薬に関して、保険適応されたら、不妊患者さんにとって大きな負担軽減となると思います。

我々のこの考え、思いを政治に訴えかけてくれている団体があります。
NPO法人Fineさんで、こちらのページで署名活動を紹介されています。是非一度ご覧下さい。

今回の骨太の方針では、是非とも高度生殖医療に関する混合診療の拡大を認めて欲しいと思います。
posted by 桜井明弘 at 19:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月01日

たまプラーザ駅周辺のお店を探しています。 〜横浜市青葉区医師会たまプラーザ班会の会場〜

新年度になりました。

我々が所属する横浜市青葉区医師会には、いくつかの班があります。私を含め、20名を超える先生方が「たまプラーザ班」に所属しており、上部医師会からの連絡事項、また上部への提案事項を討議しています。また会員相互の交流を深め、外来にいらっしゃる患者さん皆さんの紹介など、地域医療に貢献すべく活動をしております。

今日から始まった平成23年度は、そのたまプラーザ班の班長に、私が任命されました。

このたまプラーザ班では、約2ヶ月に1回、たまプラーザ駅周辺のお店をお借りし、班会議を行っています。

今回の記事は、お店のオーナーさん、店主さんから、場所と食事の提供を行って頂けないか、と言う提案です。

会場はたまプラーザ駅から徒歩圏内、可能な限り貸し切りまたは個室利用を希望しています。
参加者は大体15-20名ほどで、平日の夜、19時半頃から行っています。

美味しいお店も沢山あるたまプラーザですが、なかなか人数に適正な会場が見つからず、代々の班長さんもご苦労なさっていたようです。


ご利用をお許しいただけるお店がありましたら、下記のコメント欄に「店名、代表者、連絡先またはメールアドレス」を書いて下さい。
折り返し電話またはメールで連絡した上で、日程や費用について相談させて頂きます。

こんなお店があるよ、といった皆様の情報もいただけたら幸いです。
posted by 桜井明弘 at 14:50| Comment(6) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月18日

代理母出産

先日、国内で代理出産をした母子が、恐らくは渾身の勇気を振り絞り、また相当の逡巡もあったと思いますが、マスコミに登場して物議を醸しました。

興味本位で記事に接した人もあるかと思いますが、私はお二人の勇気を好意的に受け止めています。

以前にも書きましたが、私は決して代理出産賛成派ではありません。なぜなら、妊娠、出産、その手に子供を抱(いだ)きたい、この気持ちは十分分かっているつもりであるものの、その人の願いを叶えるための犠牲が、つまり代理出産する人のリスクがあまりにも大きい、というのが最終的に同意できないのです。

産婦人科医の端くれとして、これまで分娩や出産に携わってきた経験からすると、出産は命がけです。その命がけの行為を、自分の子供が欲しい、という願いから自分以外の人に、たとえそれが肉親や親しい人であっても、依頼をする、それを手助けすることが医療行為として正しいのか、とさえ思えるのです。

とはいえ、諏訪マタニティクリニック院長の根津先生は、患者さんの思いを尊重し、また治療を行いそれを公表することで、法制化などが推進されることを願っているのだと思います。
その根底には、遅々として進まないわが国の生殖医療に関する法制化があります。現在日本には代理出産や卵子提供を定めた法律がなく、今後商業的な治療が横行する可能性すら秘めています。
医療技術は日々進んでいきます。生殖医療も医療界の中では速いスピードで技術革新がなされた分野です。技術的に可能なことに、法律はもちろん、その技術をめぐって、ほとんどの人が倫理的な善悪を判断するのが追いつけないのが現状です。

私もこの国に住む人々が、代理出産の善し悪しを、自分が不妊だったら、自分の身体では埋めない、と言う立場で、また、自分以外の不妊症カップルのため代わりに妊娠、出産する行為、その重さを真摯に考え、ぜひ議論していただきたいと思っています。
法制化は急務ですが、国が定める法律は、国民の幅広い議論がなされ、成立したコンセンサスの下に成立するべきだと思います。そのために、勇気を持って皆さんの前に現れた母子に賞賛を送るとともに、もう一度、子供を作ること、を周囲の人たちと話し合ってみませんか?

私が医療監修をさせていただいた、映画「ジーン・ワルツ」の大きなテーマのひとつに、この代理出産があります。このブログを読んでくださってる方々から、原作「ジーン・ワルツ」読みました、と言ううれしい報告もいただいています。あわせて皆さんがこの問題を考える素地として、手にとっていただけたら、と思います。

尚、われわれ産婦人科医の大多数が所属している、日本産科婦人科学会からは、今回の「代理懐胎報道について」、声明を発表しています。
学会は、国の機関である、厚生科学審議会生殖補助医療部会の決定を受け、現段階では原則禁止、日本学術会議における「厳格な条件の下での思考を考慮」を紹介し、さらにやはり法制化を促進するよう、提言してます。
posted by 桜井明弘 at 00:42| Comment(4) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月09日

2009年衆議院議員総選挙 マニフェスト医療 〜社民党〜

今日の読売新聞朝刊に、マニフェスト点検「医療」が載っています。
YOMIURI ONLINEに概要が載っていますので、あわせてご覧ください。

2009年衆議院議員総選挙、マニフェスト医療。
公明党民主党に続いて、本日アップするのは、7月16日に、「第一次案」、として発表された社民党のマニフェストです。

「生活再建」10の約束、と題し、公約詳細を紹介しています。
医療関連の公約は、以下の再建2、3に掲げられています。

再建2 いのち  セーフティネットを充実
1.「後期高齢者医療制度」を廃止します。国民皆保険制度を守ります。
2.医師の数を増やし、地域に必要な総合医を育てます。看護師、福祉や介護職員の増員、待遇の改善を行います。

後期高齢者医療制度については、与野党から、廃止、または見直し論が挙げられています。

医師数増員も民主党が謳っていますが、社民党では具対数を示していないものの、日本の医療ではあまりなじみがなく、欧米の医療で見られる「総合医」育成を掲げました。
日本の医療現場でどう受け入れられるか、注目です。

再建3 子ども・若者・女性  人生まるごと応援
1.中学校卒業まで、子どもの医療費を無料にします。
8.妊婦健診や出産に健康保険を適用し、自己負担分を無料にします。助産師の力を活用し、地域で安心して出産できる施設を増やします。病院との連携、救急搬送システムの整備と連携を強化します。


中学生までの医療費無料化は、地方選挙では良く見られますが、国政選挙ではあまり見られることがなかったと思います。

妊婦検診、出産に健康保険を適用、も斬新です。現在の医療では、健康保険の適用は病気に限られており、妊娠、出産や検診、予防接種などは、適用外です。
実現されれば、現状の医療界を大きく変える福祉となります。


社民党は、あくまでも「第一次案」とし、本格的なマニフェストは選挙公示後、としていますが、全体的には、公明党や民主党と比べて、まだまだ詳しい公約を述べていない、また、各「再建」の内容を読んでも、箇条書きの域を脱していないと思いました。

公明党、民主党と同様、不妊治療について触れられていないことは残念です。特定不妊治療費助成が開始されていますが、まだまだ費用面や精神面のサポートが必要です。不妊治療の敷居が低くなり、成績が向上すれば少子化対策にもつながるものと思います。不妊患者さんに対するサポートと不妊治療研究に対して言及してほしかったです。


「ボートマッチ」、やってみましたか? 読売新聞の読売オンラインの中に「日本版ボートマッチ」があります。
さまざまな政策についての自分の考えを簡単に選択していくと、自分と政党の考え方の近い、遠いが分かります。若い人も選挙に関心があるものの、マニフェストを読まない、と報じられました。私のブログもマニフェストに興味を抱いていただくための一助となれば、と願っていますが、マニフェストを読まない、ひいては「どこに投票していいのか分からない」というにお勧めです。
数分で終わりますので、是非試してみてください。

2009年衆議院議員選挙 マニフェスト医療
公明党
民主党

画像 2068.jpg

沖縄の海ですが、1月の撮影です。


さくらトリートメントの夏期休業、
・8月11日(火)
・8月12日(水)
です。


さくらトリートメントで行う、「セルフリフレクソロジー教室のお知らせ」、皆さんのご参加をお待ちしています。
posted by 桜井明弘 at 22:49| Comment(2) | TrackBack(3) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月07日

2009年衆議院議員総選挙 マニフェスト医療 〜民主党〜

自民党が「責任政党」を謳い、8月中旬予定であったマニフェスト公表を、流石に各党出揃っていることに焦りを感じたのか、7月下旬に発表、本日国民新党もマニフェストを発表し、これで各党のマニフェストが出揃いました。

今日は公明党に続いていち早く公表された、政権交代がほぼ確実視されている民主党のマニフェストを見てみたいと思います。民主党のマニフェストは、音声版、点字版もあります。
実質上、これが与党マニフェストとなる可能性が大きいので、そのつもりで読み進めてみましょう。

民主党のマニフェストは、5つ大項目からなり、マニフェスト政策各論に詳細が、医療については「2 子育て・教育」と「3年金・医療」に述べられています。

10.出産の経済的負担を軽減する
【政策目的】○ほぼ自己負担なしに出産できるようにする。
【具体策】
○現在の出産一時金(2009 年10 月から42 万円)を見直し、国からの助成を加え、出産時に55 万円までの助成をおこなう。
【所要額】
2000 億円程度


このように、民主党のマニフェストは財源不明、と与党から攻撃されていますが、所要額を示し、これはわかりやすい工夫だと思います。
出産の自己負担が無くなるのは、以下の項目と同じように、子育て支援、ひいては少子化対策となりうる方策です。

11.年額31万2000円の「子ども手当」を創設する
【政策目的】
○次代の社会を担う子ども1人ひとりの育ちを社会全体で応援する。
○子育ての経済的負担を軽減し、安心して出産し、子どもが育てられる社会をつくる。
【具体策】
○ 中学卒業までの子ども1人当たり年31 万2000 円(月額2 万6000 円)の「子ども手当」を創設する(平成22 年度は半額)。
(後略)


子育て支援のひとつとしての「子ども手当て」は、具体的な金額提示と、高校までの負担軽減を謳っています。

14.保育所の待機児童を解消する
【政策目的】
○縦割り行政になっている子どもに関する施策を一本化し、質の高い保育の環境を整備する。
【具体策】
○小・中学校の余裕教室・廃校を利用した認可保育所分園を増設する。
(後略)


すでに一部の地域で実験的に進められている事業ですが、過剰施設と不足施設がうまく噛み合った方法です。また、小中学生にとって、幼い保育園児との触れ合いを持つことができ、昨今失われている貴重な縦の繋がりを体験できることになります。

21.後期高齢者医療制度を廃止し、国民皆保険を守る
【政策目的】
○年齢で差別する制度を廃止して、医療制度に対する国民の信頼を高める。
○医療保険制度の一元的運用を通じて、国民皆保険制度を守る。
【具体策】
○後期高齢者医療制度・関連法は廃止する。廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する。
○被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る。
【所要額】
8500 億円程度


後期高齢者医療制度は、年々増大する医療費のもっとも大きな部分を占める高齢者医療費の自己負担を増額することで、国民健康保険の負担を減らそうという目的で導入されました。
騒がれたようにお年寄りに負担を強いる方法で、非難を浴びていますが、民主党が示すように8500億円程度で済むものであれば、他の財源から代替できそうなものです。

22.医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する
【政策目的】
○医療従事者等を増員し、質を高めることで、国民に質の高い医療サービスを安定的に提供する。
○特に救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建し、国民の不安を軽減する。
【具体策】
○自公政権が続けてきた社会保障費2200 億円の削減方針は撤回する。医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する。
○OECD平均の人口当たり医師数を目指し、医師養成数を1.5倍にする。
○国立大学付属病院などを再建するため、病院運営交付金を従来水準へ回復する。
○救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建するため、地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う。
○妊婦、患者、医療者がともに安心して出産、治療に臨めるように、無過失補償制度を全分野に広げ、公的制度として設立する。
【所要額】
9000 億円程度


医療従事者の増員、より良い医療サービスの提供は、これまでも政治やマスコミ、知識人から再三医療現場に要求されてきたことです。ただ、これまでの提案の中で「診療報酬の増額」はほとんど触れられてきませんでした。これまでは医療機関に負担を強いるのみで、見返りが全く提起されてこなかった、といえます。公明党の公約では、少し異なり勤務医確保のための診療報酬上の評価(実質増額?)と表現されており、医師増員に対する増額は今回の民主党の公約が初めてといえます。
医師数の増員も、より良い医療サービスの提供という観点から、歓迎されるべきことと思いますが、単純に医師数が増えれば医療が向上する、というわけではありません。医師の養成は時間と手間、国費、そして医師当事者の資質が重要です。医師のように、極端に専門性が高い職種の場合、免許を取得できる人が増えれば医療全体の向上が期待されるとともに、裾野が広がる分、医師個々人の質の低下を招く可能性も秘めています。民主党は議員定数削減も公約していますが、議員定数が過剰であれば、遊んでいる議員が増える、と同じわけです。
この点、「医師養成数を1.5倍にする」という表現がうまいな、と思いました。つまり医学部定員数を増やして、医師数は単純に1.5倍としない、より資質の高い医師が養成される仕組み、と私は解釈しています。

23.新型インフルエンザ等への万全の対応、がん・肝炎対策の拡充
【政策目的】
○新型インフルエンザによる被害を最小限にとどめる。
○がん、肝炎など特に患者の負担が重い疾病等について、支援策を拡充する。
【具体策】
○新型インフルエンザに関し、危機管理・情報共有体制を再構築する。ガイドライン・関連法制を全面的に見直すとともに、診療・相談・治療体制の拡充を図る。ワクチン接種体制を整備する。
○乳がんや子宮頸がんの予防・検診を受けやすい体制の整備などにより、がん検診受診率を引き上げる。子宮頸がんに関するワクチンの任意接種を促進する。化学療法専門医・放射線治療専門医・病理医などを養成する。
○高額療養費制度に関し、治療が長期にわたる患者の負担軽減を図る。
○肝炎患者が受けるインターフェロン治療の自己負担額の上限を月額1万円にする。治療のために休業・休職する患者の生活の安定や、インターフェロン以外の治療に対する支援に取り組む。
【所要額】
3000 億円程度


新型インフルエンザ対策、現在も世界レベルでは死者も増え続けています。日本においても今秋から再拡大が懸念されています。政府の指針と同様、対策を謳っています。
婦人科がん関連では、やはり公明党とともに子宮がん予防ワクチンに積極的、と聞いていましたが、政権担当、与党を担う自覚からか、「任意接種を促進」に留まっています。


全体的には、公明党のマニフェストに比べ、具体的、突っ込んだ公約に乏しいのが実感です。これが自民党の言う与党、責任政党としてオーバーな公約ができない、というものかも知れません。

民主党のマニフェストでも、公明党と同様、残念だったのが不妊治療について触れられていないことです。特定不妊治療費助成が開始されていますが、まだまだ費用面や精神面のサポートが必要です。不妊治療の敷居が低くなり、成績が向上すれば少子化対策にもつながるものと思います。患者さんに対するサポートと不妊治療研究に対して言及してほしかったです。


「ボートマッチ」、紹介しました。 読売新聞の読売オンラインの中に「日本版ボートマッチ」があります。
さまざまな政策についての考えを簡単に選択していくと、自分の考えと政党の考え方の近い、遠いが分かります。若い人の選挙離れが喧伝されていますが、彼らの意見を聞くと、「どこに投票していいのか分からない」というのがあります。そんな方に是非お勧めです。
数分で終わりますので、是非試してみてください。

2009年衆議院議員選挙 医療マニフェスト比較
公明党

IMG_0187.jpg IMG_0188.jpg
この虹と、きれいな夕焼けは、メディカルモール・たまプラーザで育まれた、素敵なお二人の披露宴の日に見られたものです。
偶然ですが、ねむの木ブログの「にじ! 虹! ニジ〜!」にあるように、竹本さん、同じ空を見上げていたんですね。

さくらトリートメントの夏期休業、
・8月11日(火)
・8月12日(水)
です。

さくらトリートメントで行う、「次回アロマ教室のお知らせ」、産婦人科クリニック さくら スタッフブログに載せました。皆さんのご参加をお待ちしています。

産婦人科クリニック さくら スタッフブログ、「白湯飲みダイエット」とは??
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2009年07月26日

2009年衆議院議員総選挙 マニフェスト医療 〜公明党〜

衆議院解散、総選挙に伴い、各党がマニフェストを公表しつつあります。
2007年の参院選の際にも民主党、公明党のマニフェストの中、医療関係の公約についてコメントしました。

若年層の選挙離れ、政治無関心がある一方で、今回は政権交代の可能性を秘めた選挙です。
どの政党が政権を握るのか、その政党は我々国民の命を守る医療をどうしようとしているのか、やはり無関心ではいられません。私にも難しく、いいのか悪いのか分からないこともありますが、医療現場からみた選挙公約を一緒にみていきたいと思います。

さて、今回の衆議院議員選挙で最も早いマニフェストの発表は、与党の公明党からでした。大きな政党では意見をまとめるにも時間がかかるのかもしれません。民主党からは概略が公表され、27日、鳩山代表からの正式発表があるそうです。

公明党のマニフェスト、医療に関する大項目は、「2 命を守る政治」と「3 人を育む政治」があります。
少し長くなりますが、それぞれ小項目の中から拾ってみると、

「大学病院の充実;医学教育の中核を担っている大学病院の医療環境を飛躍的に向上させるため、(中略)医師等勤務環境の改善や救急医療体制の整備に取り組みます」
医師は技術職です。国家試験に合格してすぐに治療を行える技術があるわけではありません。大学等の研修施設で丁稚奉公のように地道に技術を磨いていくのです。しかしこれまでの勤務医の待遇があまりにも劣悪であったため、このような取り組みは評価できると思います。

「医療費水準・医師数等の水準の引き上げ;先進国の水準に比較して低い医療費および医師数等の水準を引き上げ、医療提供体制の強化と医療従事者の処遇の改善を図ります」
私もこのブログで書いたことがありますが、医療水準の向上には医療従事者数増加と、それを上回る医療費の増加が必要であると思います。これまで与党が医療費削減を叫んできた中で、与党内の公明党がこのような考えを持っているのには、少し驚きました。

「医師等の医療人材の養成システムの改革と充実;医師等の養成数の充実を図るとともに、研修体制の見直しと医師派遣システムの強化を行い、医師不足地域の解消に取り組みます。また、救急・産科・小児科・麻酔科などの医師が不足している診療科を解消するため、診療報酬の充実や臨床研修における科目ごとの医師養成数の目標の設定など取り組みを進めます」
「女性医師等の復職支援の実施;育児休業取得や短時間勤務の推進、院内保育所の整備、女性医師バンクの体制強化など、女性医師・看護師等が安定して働き続けられる環境整備の充実を図ります」

ともに現在の政権で目指している医師不足解消の方策です。後者は日本医師会もすでに取り組んでいます。

「勤務医等の勤務環境の改善;病院医療における医師等の過重労働の解消のため診療報酬上の評価の充実を図るとともに、医師事務作業補助者の充実など勤務環境の改善のため直接的な財政支援を進めます」
勤務医の激務を評価、再考している項目で、期待できますが、財政支援がすなわち過重労働の改善にならない、病院の実益になってしまう可能性があり、詳細に検討する必要があります。

「看護師など医療従事者の職務拡大;専門性の高い認定看護師などを評価するシステムづくり、助産師の資質向上を図る、(後略)」
すでに看護師にも専門性が求められており、この流れを支持するものとなるでしょう。

「医療の安全の確保と医療事故の補償体制の強化充実;出産等に伴う無過失の医療事故を救済する「産科医療補償制度」の円滑な運用を進めます。医療事故の原因究明の体制を整備し、医療の安全対策を強化するとともに、医療事故における裁判外紛争処理制度を創設します」
ともに我が恩師である木下勝之日本医師会常任理事、日本産婦人科医会副会長が中心となって制度創設に尽力されています。前者はすでに機能しており、後者についてもかなり詰められた現状です。政権交代となった場合、どうなるのでしょうか。

「画期的な新薬の開発促進、審査・承認の早期化」
歓迎したいですが、医療費削減目的にやみくもにジェネリック薬が推奨されている現状では、国内の製薬メーカーは新薬開発の体力が無くなってきている問題点があります。日本は世界でも有数の新薬の承認が遅い国です。この点、患者さんのメリットにもつながり、医療現場では歓迎できます。

「社会保険病院・厚生年金病院の地域医療の機能確保」
存続、廃止論がありますが「公的医療機関としての機能を存続できるよう、早急に対応」するそうです。

「レセプトオンライン請求義務化の見直し」
すべての医療機関に義務付けられる方向で検討されている項目ですが、反対論も多く、見直す方向のようです。
我々のような小さな開業医には大きな負担となる可能性があるのです。

救急医療について、公明党は詳細に、積極的な取り組みを示しています。
項目だけ挙げますが、「15 分ルールの確立」「ER(救急治療室)の拡充」「小児集中治療室(PICU)を備えた小児救命救急センターを整備」「ドクターヘリの全国配備50 機を促進」「都市型ドクターカーの普及を推進」「DMAT(ディーマット)体制の拡充」※DMAT:大地震や航空機・列車事故といった災害時に、被災地に迅速に駆け付け、救急治療を行うための専門的な訓練を受けた医療チームDisaster Medical Assistance Teamの略称
ただ、ドクターヘリも整備されても運用されていない現況があります。これだけの医療体制を担う医療関係者の数だけでも相当数必要で、どのように確保するのか、課題は山積していると思います。

がん対策は
「がん検診率50%以上」「女性のがん検診の充実」「子宮頸がん予防ワクチンの早期承認・公費助成の導入」
後2者全文を引用します。
「女性特有の子宮頸(けい)がん、乳がん検診の受診率の向上を図るため無料クーポン券、検診手帳などの事業を継続します。また乳がん検診の精度向上のため、マンモグラフィー検診に加えて超音波(エコー)検診の導入・併用を進めるとともに、読影医の養成・確保など検診体制の充実・強化を図ります」
「若い女性に急増する子宮頸がんの征圧へ、予防ワクチンの早期承認とともに、ワクチン接種に対する公費助成の導入を推進します」

がん検診の無料クーポンについて、近日中にお知らせしますが、今年の補正予算内の単年限りの予定でした。これを継続する公約です。また我々が強く望む子宮頸がん予防ワクチン摂取について、公費助成を掲げています。与党の公約として歓迎したいと思います。

「セカンドオピニオンの体制の整備」
がん対策のみならず、難治性の良性疾患についても、触れてほしいです。

「学校におけるがん教育の見直しと教科書や副読本を充実」
婦人科領域では子宮頸がんがこれにあたります。性教育の中に取り入れてほしいと思いますが、教育現場の方々でさえ、全く理解していない方もあり、一刻も早い対応を望みます。

また「新型インフルエンザ対策の推進」も現在政府が提唱している内容を公約に挙げています。

女性医学の項目もあります。全文引用します。
「『女性健康研究ナショナルセンター』(仮称)の設置・女性専門外来の拡充」
性差医学の考え方を踏まえた女性の健康に関する研究を専門に行う「女性健康研究ナショナルセンター」(仮称)を設置し、生涯を通じた女性の健康支援の充実を図ります。また女性専門外来の全国的な拡充を進め全都道府県での開設を実現します。
「女性の健康を一生涯サポート」
予防接種や治療歴、出産、健康診断の記録や、病気の予防情報などを記載した健康パスポートを発行し、女性の健康を生涯にわたってサポートする体制を構築します。また骨粗しょう症や貧血、乳がん、子宮疾患等の予防と早期発見のために、女性特有の疾病に対する健診の充実を図り、受診率を向上させます。

女性医学に対して、公明党と民主党が積極的、と聞きます。前者はどのような内容なのか、詳しいことが知りたいです。

「子育て、少子化対策」では、「幼児教育の無償化」「児童手当の抜本的拡充」「保育所等の機能強化を図る抜本改革と待機児童ゼロの強力な推進」「妊婦健診の完全無料化の推進」「出産育児一時金の拡充」「乳幼児医療費の負担軽減の推進」「中小企業の育児支援策の充実」「地域の子育て支援体制の充実」など
育てやすい環境、産みやすい環境の整備のため現在問題となっている事項について対策を考えています。

総合的に見て、医療改革についてこれまで医療費削減、日本の医療水準は低下していくのではないか、と懸念してきましたが、与党内から転換した方策が示されたことは意義が大きいと感じました。財源については専門外なので、詳しく分かりませんが、人的資源をどのように確保するのか、はまだまだ検討の余地が大きいと思いました。
また、今回のマニフェストで残念だったのが不妊治療について触れられていないことです。特定不妊治療費助成が開始されていますが、まだまだ費用面や精神面のサポートが必要です。不妊治療の敷居が低くなり、成績が向上すれば少子化対策にもつながるものと思います。患者さんに対するサポートと治療研究に対して言及してほしかったです。


「ボートマッチ」ってご存知ですか? 読売新聞の読売オンラインの中に「日本版ボートマッチ」があります。
さまざまな政策についての考えを簡単に選択していくと、自分の考えと政党の考え方の近い、遠いが分かります。
ちなみに私は最も近い考えが国民新党、続いて日本新党、民社党、民主党の順でした。意外に小政党と意見が近いんだと、気付かされました。どの政党に投票したらよいか分からない、もひとつの政治離れの原因だと思います。数分で終わりますので、是非試してみてください。

2009年8月6日更新
民主党マニフェスト分析をアップしましたので、あわせてご覧ください。
posted by 桜井明弘 at 23:49| Comment(1) | TrackBack(2) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月14日

「人体の不思議」展

現在川崎市の川崎ルフロンで行われている「人体の不思議」展をご存知ですか?



2002年から国内各都市を移動しつつ開催され、篤志により献体されたご遺体をプラスティネーションという加工を施し、長期にわたって保存可能、人体の構造を大変分かりやすく展示しているものです。

私の卒業した順天堂大学にも医学部の学生ホールに展示しており、興味深く見ていました。

最近の博物館や動物園など、展示に工夫が凝らされていることが多く、楽しんでいますが、この展示も見やすく分かりやすいので、ぜひ皆さん一度足をお運びください。

私にとって、医学部教育の大きな柱である、解剖学の講義、実習を思い出させる展示でした。
ただひとつ残念なのは、献体されたご遺体に手を合わせる場所、機会がないこと。
医学部で行われた解剖学実習では、ご遺体に手を合わせ、謙虚な気持ちで臨みました。

この展示でも、生前それぞれの人生を送られた皆さんの身体が、余すことなく衆目にさらされている訳ですから、そのお気持ち、人格を尊重することを入場者に知らしめる場を作ってもいいのではないでしょうか。
私たちは会場を出る際、合掌して退出しましたが、そんな姿を他に目にしなかったのが、寂しかったです。

なお、産婦人科クリニック さくらでも、同展の入場割引券を配布しておりますので、お声をかけてください。
posted by 桜井明弘 at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月28日

「医師不足解消を…厚労・文科省、検討会で養成制度見直し、臨床研修制度、後半1年は専門科…厚労・文科省が事実上増員案」

2004年度に始まった、臨床研修制度をご存知ですか? ある年代以上の方だと、医師のインターン制度が持続している、と思われる方もいらっしゃると思いますが、インターン制度は、大学紛争の時代に既に終わりを告げました。
現在の臨床研修制度は似て非なるもので、私の記憶では、小児救急を担う医師があまりにも少ない、内科や他科の医師も、最低限の基礎知識を持つべき、と、この制度が始まったように思います。

ところが制度は現場の声を充分に拾わずに見切り発車、理想論では、すべての医師が医師国家試験に合格した後も2年間、内科、外科、産婦人科、小児科、麻酔科などを必修の研修科として、またオプション的に他の科も選ぶ前期研修医と、各専門診療科を選択したのちに後期研修医として数年研鑽を積む、ひいては専門科の知識と、前期研修で培った一般的、Generalな医療の担い手となりうる、と言うものでしたが、実態はそうは容易いものではありません。
現代医療は細分化、専門化が進み、同じ科の中でも専門が異なると難しいことはわからない、また医師が身につけるべき知識や技術は日進月歩でどんどん増え続けています。我々からすると、数ヶ月その科を学んだとしても、その科の基礎知識をつけられるとは思えない、現場はそんな生半可なものではないのです。ましてや医療訴訟が横行している現代で、研修を積んだとはいえ、他科領域の治療を積極的に行なうのは、患者さんのみならず、行なう医師にもリスクがあります。

そしてこの臨床研修制度によって最悪の結果がもたらされました。この制度が医師不足の一因となってしまい、問題となったのです。

臨床研修制度は、研修生が原則自由に研修先を決めることができる、これは我々の時代でも基本的には同じでしたが、当時は卒業「大学病院」で研修、もしくは卒業はしていないが違う「大学病院」で研修、といった不文律ができていました。このため、一県一医大構想で各都道府県に1つ以上設置された医科大学、大学医学部がたとえ地方であってもその地域の医療を隈なく網羅することができ、明らかな医師の不足は問題となりませんでした。しかし現行制度では研修生の「自由な研修先の選択」のため、下積みが長く給与が低い大学病院勤務を忌避し、一般の市中病院、ことに都市部の病院に人気が集中しました。
もちろん研修医が大学を選択しなくなった原因は、大学病院のあり方に問題もあるのですが、この結果、地方の大学病院などが医師不足に陥り、関連病院に派遣していた医師を呼び戻したため、地方の市中病院から医師がいなくなる、診療科が閉鎖される、といった事態になったのです。

こういった事態の本質、どこまで中央官庁が理解しているか分かりませんが、とにかく医師不足はまずい、と、8月に舛添厚生労働相が、臨床研修制度も含めた医師養成のあり方全般を見直し、厚労省と文部科学省の合同検討会をつくると発表、12月17日、2年間の研修期間のうち後半の1年間を、将来専門とする診療科に特化させる、と発表しました。
 また、「医師の地域偏在については、研修医の募集定員に地域別の上限を設けたり、地域医療の臨床研修を一定期間必修化したりすることで対応、医師不足の診療科を選択する研修医を確保する仕組みも設ける」とのことです。
 本来、「臨床研修制度は、新人医師に広い視野や総合的な診療能力を身につけさせるのが狙いで、大学卒業直後の新人医師が2年間、内科や小児科など7診療科で臨床経験することが必修化された」ものですが、この7診療科を1年間でローテート、単純に2ヶ月弱の研修期間、思い切って研修制度をやめ、以前のように当初から専門科へ進んだらどうでしょうか。
ちなみに私の入局した当時の順天堂大学産婦人科では、出生後の赤ちゃんの初期治療ができるよう、3ヶ月の新生児センター研修、また産婦人科は手術をする科なので、同期間の麻酔科研修が義務付けられていましたが、これは大変勉強になり、その後の産婦人科医としての基盤のひとつとなりました。
このように、その専門診療科独自の研修制度で自分たちの後輩を育てるようにしてはいかがでしょうか。

(2008年8月24日 読売新聞)
(2008年12月18日 読売新聞)


さくらスタッフブログ、「新型インフルエンザ対策 〜その2〜」「〜その3〜」「〜最終回〜」、です。

地震などの災害と同様、一度家族でその際の対応策を考えることをお勧めします。
posted by 桜井明弘 at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月24日

都内で7カ所の病院に受け入れを断られた妊婦、脳内出血で死亡。

またしても痛ましい事件が起こりました。

東京都内で7カ所の病院に受け入れを断られた36歳の妊婦さんが、都立墨東病院で脳内出血の手術を受けた後、亡くなりました。喜びを迎えるはずの妊婦さんの無念、ご遺族の悔しさは、想像を絶するものがあります。

22日、都と墨東病院が記者会見し「当直医は当初、脳内出血だと分からなかった。分かっていれば最初から受け入れたはず」と説明しました。その上で「一連の判断は妥当」と主張し、医療過誤ではないとの認識を示したということです。

墨東病院に受け入れを依頼した江東区のかかりつけの産婦人科医院長も会見し、当初の妊婦の容体について「自宅に救急車が到着する直前から頭が痛いと訴えた。尋常ではなく頭部の疾患を疑った」とし、病院に「七転八倒している状況を伝えた。頭を抱えて『痛い、痛い』と言っていると伝えた」と説明、かかりつけの産婦人科医院の医師が、当初から脳内出血の診断を墨東病院の当直医に伝えていたのではないかとの質問に、都の幹部は「詳しいやりとりは調査中で分からない」と答えたそうで双方の認識に食い違いがあると報道されています。

また当直医は、受け入れ可能な周産期医療センターなど3病院を端末で検索、かかりつけ医はそれらを含む計8病院に問い合わせたが、7病院で断られたことも会見で判明、断った病院の当直体制について、都側は「調べてみないと分からない」としました。かかりつけ医は、目の前の患者さんの処置、手当をしながら、7箇所の病院に連絡をしなければならなかったのです。

この事件を受け、総務省消防庁は23日、救急隊員らが患者や負傷者を運ぶ際に、重症度や緊急度に応じて搬送先の医療機関を選ぶ基準を作成する方針を固め、同庁の有識者検討会に提案し、基準の内容などについて具体的に議論するそうです。悲劇的な事件が起こってしまってから、ようやく救命救急センターなど高度医療機関への集中を防ぐとともに、医療機関による救急患者の受け入れ拒否問題の改善にもつなげることを狙いとした基準作成が行なわれつつあります。

「国が患者らの容体と搬送先について明確な基準を定めておらず、自治体が独自に判断しているケースが多い」ことも問題の一端だと思います。

この検討会では、この事件の問題について、石井正三委員(日本医師会常任理事)から「(医療に関する)予算を削って質を維持するのは無理だ」とする発言もあった、まさにその通りだと思います。

国の医療費削減や産科医療に対する厳しい風当たりが、産科医療を崩壊させています。

墨東病院では妊婦が搬送された当日は研修医1人が当直、都は、指定医療機関としての態勢に不備がなかったか経緯を詳しく調べるとのことですが、病院からするといまさらという気持ちでいっぱいだと思います。

新聞記事では、一度断ったものの、1時間後に受け入れたことから、「最初から受け入れられたのではないか」としたり、「病院が一ヶ所しかない地方と異なり、都市部は自院でなく他にも受け入れられる、と言う意識があるかもしれない」という厚労省幹部のコメントには正直憤りを感じました。

マスコミもそうですが、医療機関を束ねる立場である厚労省からあまりにも医療現場の現況を知らないコメントに、この国のお粗末な医療行政に不安を感じました。

受け入れを全くするな、と言うのであれば、墨東病院に限らず、充分な受け入れ態勢を24時間整えなければなりません。それを満たせるマンパワーの供給も無く、今回の結末だけをとらえて現場に責任転嫁する姿勢に、寂しさ、悲しさ、怒りを抑えきれないのです。

責任を追及することも大切ですが、何より再発防止に国が立ち上がって日本の医療体制整備に努めてほしいと思います。

(この記事は神戸新聞を参考にさせていただきました)
ラベル:脳内出血
posted by 桜井明弘 at 01:20| Comment(4) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月09日

分娩・妊婦健診無料化 〜最近の産科関係ニュースから〜

少子化対策に関して、若年夫婦などが出産しやすい環境を整えるため、公的支援拡充に着手し、分娩・妊婦健診の無料化が検討されている、と8月22日、舛添厚生労働相が記者会見で発表。

現在無料化されている妊婦検診は、5回分。自治体によっては既に14回分、全てが無料化、というところもあります。

2009年4月から開始したいとのことで、出産後に出産育児一時金として支給されている実質分娩費、35万円も、医療保険から直接医療機関に支払われる仕組みを検討するそうです。
実現すれば出産する負担が軽くなりますね。出産はお金がかかるから、と妊娠を避けていた方にも朗報になりそうですが、少子化は妊娠・分娩費だけが原因ではなく、育児環境の整備の方が重要だと思います。こちらも先日検討する、と発表がありました。
2008年8月22日14時14分 読売新聞
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2007年11月27日

分娩施設1割減

11月15日の読売新聞に、分娩施設が減少し続けていることが報じられていました。
1年半前と比較して、1割も減少したそうです。

既に分娩受け入れ施設が無く、お困りの方もいらっしゃると思います。
近くの病医院で分娩予約が出来なかったり、帰省先に受け入れが無かったり。

思えば2004年の「大野病院癒着胎盤」、2006年の「堀病院看護師内診」が大きく報じられ、医療現場に警察の捜査が入ったことがきっかけになり、産科診療、周産期治療施設は大きく様変わりしました。

産科医や小児科医、麻酔科医がその過酷な勤務体制から、年々減少の一途たどっていることは、報道や国会でも取り上げられていること、先の参院選で各党のマニフェストに挙げられたことなどから、国民に知られるようになって来ました。これらの科だけでなく、一般に医療施設の労働環境は劣悪です。

上に挙げた2つの事件が大きく、さらに追い討ちをかけるように奈良県の事件があり、産科医療現場にいた多くの産科医師たちが現場を去りました。医療事故には過失によるものと、正当な診断・治療によっても避けられないものがあります。
前者の場合、故意による過失を除けば、ほとんどが不注意や確認を怠ったことによるもので、リスクマネージメント、ヒューマンエラーの概念から、限りなく0(ゼロ)に近く、無くすよう努力しなければなりません。
しかしながら後者の場合は、これも同様に0に近づけなければならないのですが、人間、人体の持つ普遍的でないもの、つまりバリエーションによって避けられないものがあります。分かりやすい例えで言えば、薬剤によるアレルギーです。既にこの薬や類縁の薬でアレルギーの既往がある場合、処方は避けなければなりません。しかし、初めて使う薬、アレルギーの可能性を持ちつつも、治療に必要なため処方します。ほとんど100%に近い方にアレルギーが無くても、大変重篤なアレルギーが発症する方がわずかにいらっしゃるかもしれません。これを過失と呼べば、医療行為は成立しません。

上記の産科診療問題の全てを過失なし、とは言いませんが、不当な警察捜査や検挙により、患者さんのために、地域医療のために身を粉にしてきた医師が「被告人」のレッテルを貼られ、さらに詳細な調査も無く、ましてや専門知識の無い功名心に駆られただけのマスコミによって社会的に大批判にさらされます。

このような状況で、これからも頑張ろう! と意気込めないと思います。

私自身、周産期治療施設から、一開業医となり、産科診療の最前線から退きましたが、勤務医時代は生活は崩壊し、体力、精神的な圧力は限界に達していました(当時のブログアップの時間を見ていただけたらお分かりだと思います)。それでも自分や病院を頼って来てくれている患者さんの気持ちに応えたい、それと自分を可愛がってくれた上司に報いたい、それだけの気持ちで何とか保ってきたものです。ひょんなことから開業の話が持ち上がり、独立に至ったわけですが。

少し愚痴めいたことを書きましたが、国や政治家が本気で前向きに産科診療、周産期医療の建て直しを考えてくれなければ、この10年くらいでもっともっと現況は悪化すると思います。現場にいれば、その予兆を感じます。

この問題をはじめ、さまざまな医療問題を取り上げてらっしゃる先生のブログを見つけました。
posted by 桜井明弘 at 00:42| Comment(4) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月03日

クリエイティブな仕事 〜女性体温計開発チーム〜

かねがね、尊敬し、うらやましく思っており、追いつきたいな、と思っている仕事は、クリエイティブな仕事です。

ある商品を開発する、市場に流通するものを創り上げる、その素地を準備する、誰も思いつかなかったアイディアを出す、現在の技術を結集してベストなものを創り上げる。

出来たものを批判したり、頭ごなしに決め付けることは、後知恵、誰にでも出来ます。凄いのは、何と言われようと、実現した努力と能力、発想だと思います。

前置きが長くなりましたが、今週は、日本で初めて体温計を発売した、それも大正10年というから驚きです、(株)テルモの企画室、女性体温計の開発チーム、そして研究を担当される研究開発センターの方々にクリニック見学に来ていただき、さらにこの体温計のプレゼンテーションから、開発経緯、新商品への意気込みやテルモ社の次世代医療への取り組みを伺いました。

私のようにクリニックの一医師として日々診療にあたる立場と、新しい商品開発、企画立案をする立場では、「作る」と「使う」の違いがあり、話をしていて大変参考になることが多く、また楽しかったです。
さらに一流の大企業の開発チームですから、最先端技術を伺ったり、いかによりよい商品を開発し、健康福祉に寄与しようかというお考えに大変共感しました。

その中の話の中心であった女性体温計、テルモ社では「婦人」体温計と言わないんだそうです、一人でも多くの方に使って欲しい、体温をつけるわずらわしさから開放されるよう様々な工夫がなされていました。

基礎体温をつけましょう、は、当ブログでも桜井加那子医師から書き込んだことがありますが、生理不順や不正出血があるから付け始めよう、は勿論ですが、順調な今の体温も大変重要です。例えば上に挙げたような症状が出た場合、正常と思っている時期も本当に正常なんだろうか、と参考になります。生理は順調だけど、もしかしたら排卵をしていないのではないだろうか、基礎体温は排卵の有無、排卵後のホルモン状況を見ることができます。
症状が現れたときの体温があると、こういう病態です、と説明がつきやすく診断が早い、治療も早く始めることが出来ます。

我々治療に当たる立場からすると、このメモリー式の体温計に表示されるグラフでは詳細が分かりにくく、診療にいらっしゃるときには3か月分くらい、大変だったら1ヶ月でも表にして持ってきていただけると助かります。
ご自分で表を作るのが大変であれば、こんな便利なサイトもあります。日付と値を入力すれば表を作ってくれますので、プリントアウトすれば簡単ですね。

それでも健康で順調な生活の中で毎朝測って表にするのは大変だと思いますので、こういうメモリー式は役に立ちますね。

メモリー式の体温計にメモリーされたデータをさかのぼって表にするのは、いっぺんには大変でしょうから、データをPCやWeb上に取り込めるようなシステムがあったらいいですね、と話すと既に開発中だそうです。

その他、新しい発想のコンセプト商品とでも言いましょうか、沢山見せて頂き、楽しかったです。

また研究開発センターの方々はテルモという最先端医療を担う技術開発をする社でも、製品を作っていくお仕事ですから、発想から想像、製品化までを実現する部署。相当大変でしょうが、それだけに作っていく喜びはひとしおだと思います。

そのテルモの最先端医療を垣間見ることが出来、また医療現場の医療技術、看護時術の研修センターがあるそうです。このMedical Pranexは是非見てみたい施設。秋に見学に行かせて頂けることになりました。またそこで受けた刺激をブログに、日々の診療に活かせたら、と思います。
posted by 桜井明弘 at 23:49| Comment(2) | TrackBack(3) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月28日

公明党マニフェスト 2007参院選 〜各党医療問題マニフェスト比較〜

いよいよ明日に参院選が迫りました。
このシリーズの構想では、今日までに各党のマニフェストについて触れようと思ったのですが、思うようにはかどりませんでした。

前回の民主党に続いては、公明党です。公明党に対する賛否や好き嫌いは別にしても、与党連合の一端を担う責任政党です、また、SEO対策が上手なのか、検索で上位ヒットします。自民党はなぜかヒットしない...。
与党の一つとして、この短いマニフェスト比較の最後として触れます。

参院選重点公約
としてHPに掲載されています。
まず第一に掲げられた公約は、
「1.国民の命に責任(命のマニフェスト)」
中でも、
「(医師不足対策)」
が最初にあります。

「医師不足地域に対して、緊急に医師を派遣する体制を国レベルで整備します」
大変重要な点だと思いますが、緊急に派遣される医師はどのように確保するのでしょうか。
 
「産科・小児科など医師が不足している特定の診療科に対して診療報酬の引き上げなどにより増員を図るとともに、女性医師の確保対策の一環として、院内保育所の整備や女性医師バンクの体制強化を進めます」
民主党マニフェストでは触れられなかった、具体的な産科・小児科不足の対策だと思います。
民主党マニフェストブログで私が触れた、これだけで志望する若い医師が増えるか、といった疑問に対しては解決策、といえると思います。好き好んでリスクが大きい、訴訟される確率が高い科には進まないでしょう。医療の世界でも需要供給バランスがあります。短期的に供給不足に陥ると需要が高まるため、大学などの医局レベルでは、数年のスパンで各課の入局者が増減します。中長期的には、足りない科の医師に給与を上げることにより、安定供給を図ります。日本でも既に麻酔科医師の確保のため、沢山の病院で取られた手法です。

『がん対策の強化で、「がんに負けない社会」へ』
大体が民主党案と同様ですが、以下の点は公明党オリジナルのようです。

「治療の初期段階から、がんの痛みをとる緩和ケアが受けられるようにするため、10年以内に、がんを担当する全ての医師に『緩和ケアの研修』を実施します」
ただ、医療の世界も専門分化が激しくなっており、机上の空論です。がんを担当する、外科系医師、放射線科医師も日々の臨床に追われ、化学療法だけが、各科にわたる診療科として独立しつつあります。更に、終末期医療を担う医師も、ターミナルケア、ホスピス、緩和ケア、として既に独立しています。
これらを全て同一の医師が担うには、医療の範囲が広くなってきている、ということです。勿論、がんの手術を専門とする医師に、緩和ケアとは何か、基本的に知っておいて欲しいとは思います。
各がん治療専門医は、外科系、化学療法、放射線療法、緩和ケア、予防医学(検診)をそれぞれ研修し、総合的な判断ができるようになって欲しいです。

「ドクターヘリの全国配備」
・「救急医療用ヘリコプター特別措置法案」に基づき、5年以内に全国50カ所(2006年度末時点で10道県11機)のドクターヘリの配備を進め、救急医療における救命率の向上や、過疎地や離島における医療の確保を推進します。
・日没後の救急対応が可能となるよう、山間部など医療過疎地を中心に夜間照明付きのヘリポート(災害広場兼用)の整備を推進します。
・フライトドクターなどドクターヘリ関係医療スタッフの育成支援を実施します。
・ドクターヘリ事業への都道府県負担を軽減するため、医療費の削減効果等を踏まえ、健康保険等の適用が可能となるよう早期に措置します。
公明党の医療問題の売りの一つに、ドクターヘリがあります。北海道・札幌市の近郊の病院では、大変活躍しているようです。テレビでも特集していました。これもスタッフ、ことに医師確保をどうするのか、具体案が欲しいです。最後の健康保険適用は分かりますが、これ以上保険者に負担を増やせば、被保険者である国民の保険料を上げざるを得ない、それが医療費削減に繋がるでしょうか、また、国民の負担増を強いる結果にならないでしょうか。

その他、子育て支援もあるのですが、時間が取れずに医療問題に絞って触れました。

明日の参院選、お天気は微妙のようですが、是非皆さん投票所へ足を運び、明日の日本を託す一票を投票しましょう。
ラベル:マニフェスト
posted by 桜井明弘 at 20:32| Comment(0) | TrackBack(2) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月26日

民主党マニフェスト 2007年参院選 〜各党医療問題マニフェスト比較〜

7月29日(日)、参院選が行われます。一人ひとりが持っている一票は小さいですが、大勢の意見が集まれば国政を左右することができる、大切な機会です。当日投票できなければ、期日前投票もあります。是非有権者の皆さんに投票をしていただきたいものです。

最近では各党が選挙公約として、マニフェストを発行しています。
街頭で配布されたり、選挙事務所で手に入れられたり、インターネットでダウンロードしたりも出来、各党の考えを読み比べることが出来ます。

さて、当ブログでは、来る参院選までの間、各党のマニフェスト、特に医療問題について、私が読んだ感想を書いていきたいと思います。

まずGoogle検索で、「マニフェスト 参院選」でヒットした順に読んでいきます。検索すると一番上位にあったのは「民主党」でした。

民主党のマニフェストは「3つの約束」と「7つの提言」からなっており、最初に党の重点政策が列挙されています。

医療問題、育児問題では
「約束2 安心して子育てできる社会。1人月額2万6000円の「子ども手当」を支給します」
「提言2 医師不足を解消して、安心の医療をつくる」
の2項目に着目しました。

『子ども1人当たり月額2万6000円の「子ども手当」は中学校卒業まで支給』されるそうで、出生時から計算すると、12年間で374万円にもなります。こう書くと、確かに育児費用の負担軽減にはなるでしょうから、「産みにくい」、「育てにくい」社会構造の中で、少子化対策と言えるかも知れません。額は妥当でしょうか、これには各家庭での収入や家計にも左右されると思いますが。財源は様々な無駄をなくすことにより増税しなくても確保できる、本当に可能なのかは私には単純には分かりませんが。
その他、「公立高校の授業料の無料化を進め、高校・大学生への奨学金制度を拡充する」、としています。

さて、「提言2」の医療問題です。7つの提言のうち、雇用に次ぐ2番目に位置していることは、それだけ重要視している、と言うことでしょうか。
医師不足の解消については、「医師・看護師等の配置を適正化する緊急行動計画を策定」する、と書いています。具体的な適正配置をとる、
「特に、産科・小児科の医師不足は早期に解消します」は心強いと思います。「女性の医師・看護師等が仕事を続けやすく、また、復職しやすい環境を整備します。そのために、院内保育所の整備や復職のための研修を進めます」
非常に大切なポイントです。女性医師の場合、男性と同じ教育を受け、研鑽を積んでいるのに、結婚、妊娠・分娩、育児によって、第一線を退かざるを得ない、これは他のどの職種にも言える事かも知れませんが、専門技術を持った、特に仕事にのっている世代の女性が、半ば引退してしまうのは、本人は勿論、職場も社会的にも損失である、と言えます。
自転車や自動車の運転は、しばらく休んでも、ほとんど問題なくまた運転できますが、医師の仕事はそうは言えません。しばらく休んでいるうちに新しい技術や薬が開発され、またこれは運転とも近いかもしれませんが、自分の技術も後退します。
このような、第一線を離れた時期のフォローを、研修会や講習会によって補い、「即戦力」として復職できるよう支援する、また、とかく復職は職場内での軋轢が生じることもあるでしょう。社会的なコンセンサスが必要です。
現在のように、医師不足ですと、どの医局も人員が欲しいため、この点は解決できそうです。

もう一つ大切なポイントは、「院内保育所」です。
コストがかかるため、院内保育所が整備されている病院、余り多くないと思います。私が見てきた病院でも、なぜか、看護婦さんのお子さんは入れるのに、女医さんの子供は入所資格がない、なんてところもありました。どうしてそんな不公平が生まれるのか、理解しがたいですよね。

「全国どこにいても、最善のがん治療や最新のがん情報が受けられる体制をつくります」
いよいよ日本人の死亡率首位に立ったのが、「がん」です。
高齢化が進めば進むほど、長生きをするようになったのですから、がんにかかる方も単純に増えてきます。
勿論、死因となる病気ですから、対がん戦略は重要な医療問題、研究課題だと思います。それを国が支援してくれることは国民にとって有用ですし、予防医学が重視されてきた現在、我々第一線に立っている医師にとっても、ありがたい話です。

ただ、一般的に言って、「全国どこでも、最善の治療」は美辞麗句、の感があります。これだけ医師不足が問題となっているのに、どこでも同じ医療が受けられるか、疑問ではありませんか。

マニフェストには、さらにこれらの大項目の詳細な記載、政策各論があります。

「1.くらし」

「2.小児科・産科医をはじめ医療従事者不足を解消」
には、
「小児科では開業医が地域小児科センターで時間外外来を担当するといった協働作業による集約化をさらにすすめます。産科医は勤務が過酷なだけでなく、訴訟リスクなども高いことから、無過失補償制度と医療事故原因究明のための医療安全委員会を設立します」

特定の業種に就くマンパワーが不足している場合、「集約化」による効率化を上げるのは、一つのキーワードだと思います。しかし、この文面だけで、小児科医・産科医不足の解消に繋がるでしょうか。
あなたが医学生で、これからどの科に進もうか、悩んでいるときに、この文を読んでこれがなされた暁に、よし、リスクの高い、ハードな小児科、または産科を選ぼう! と、思えるでしょうか。

「医療費抑制と称して10%削減された医学部定員を元に戻し、地域枠、学士枠、編入枠とします。各診療科の必要医師数を明示し、医療圏ごとの数値目標を提示します」

医学部定員は医療費抑制が原因だったのですね、医師が全国的に大体充足したから、とされていたと記憶していました。
医療圏ごとの各診療科に必要な医師数、確保する目標を掲げるのは分かりますが、一体どうやってそれを達成するのでしょうか。

また「1.くらし」の中に、
「4. 医療事故の原因究明と再発防止」
があります。
その「@医療メディエーターを養成」や「A『裁判外紛争処理機関』」は非常にいい考えだと思います。全国の医療訴訟を見ると、医療機関側には非がない、偶発的に起こった症状の変化、と思われるものも裁判に発展しています。
医療訴訟の経験が豊富な弁護士が患者さん側についた場合、カルテを見ることで大体医療機関側の非があるか、止むを得なかった案件か、判断がつくのですが、余り経験がない場合、患者さんからの話だけで判断し、訴訟を起こす、という事例が目に付きます。勝てるかもしれないし、勝てなくても示談に持ち込めば病院から見舞金が取れる、その両方がだめでも、弁護費用はもらえます、そんな構図の気がしてなりません。
客観的に中立を保ち、無駄な裁判(時間と費用の面で)を少なくし、双方が納得できるようこの「紛争処理機関」には期待をしたいと思います。
その一方で、『B国の機関として『医療安全委員会』を設置」することにより、医療事故は徹底的に追求し、再発を最大限防ぎ、事故を繰り返す医療機関に対する行政指導を行い、全医療機関で安全な医療が受けられるよう、よりよい医療の新しい時代を期待します。

他にも「環境」や「政と官」など、面白く読みました。「外交」は少し浅薄に思い、もっと現代の国際問題に突っ込んだ内容だったらよかったのに、と思いました。これらは専門外なので、ブログでは取り上げませんが、残り1週間足らず、各党のマニフェストを手に取り、じっくり読んでみてはいかがでしょうか。

posted by 桜井明弘 at 19:35| Comment(4) | TrackBack(2) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月12日

2005年の合計特殊出生率、1.26に確定

8月にも書いた記事は、05年の見通し、途中経過の数字で、それより結果的には0.01上昇した、と報じられています。
http://cl-sacra.seesaa.net/article/21797758.html
http://ns.eu-d.co.jp/mailmaga/link.php?id=89ddae7e-1771-8-f86a8b7f0e316d33-34

このNIKKEI NET 生き生き健康の「特集:すすむ少子化」は、これまでの「少子化」をキーワードにした記事がまとめられており、その関連記事として、不妊診療にかかわる記事も併せて載っているので、これまでのニュースを振り返るのに便利です。

この記事一覧で、「母数の多い第2次ベビーブーム世代(1971〜74年生まれ)が出産適齢期を過ぎつつある」という川崎厚労相のコメントを読み、この数字が更に深刻化するんだろうなと、心配が重なります。
http://health.nikkei.co.jp/special/child.cfm?&i=2006092203273p4
ラベル:少子化
posted by 桜井明弘 at 00:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月03日

代理出産、審議入り?

有識者に問う、というものでしょうか。

これまで不妊治療にかかわる倫理問題はとかく国の議論として取り上げられにくく、更なる国民全体の世論形成が難しかったです。不妊治療にかかわらず、新しい医療技術が倫理的な問題を有している場合、いつも暗礁に乗り上げ、結局新技術を期待する患者さんへの精神的、肉体的な苦痛を強いていました。

向井亜紀さんや諏訪マタニティクリニックの代理出産が報道され、国がこんなに早く腰を上げることは余り無かったと思い、新しい傾向なのかな、と嬉しく思います。

しかも1年を目途に議論をまとめる、とは、大いに期待したいと思います。
が、人工授精や体外受精についても議論、今更どんな内容を議論するんだろう、と「?」が沸きました。同新聞記事(1日、朝刊)を読んでもこれ以上詳しい内容はありませんでした。
ラベル:代理出産
posted by 桜井明弘 at 02:33| Comment(2) | TrackBack(1) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月26日

西洋食文化の影響

従来の伝統的な日本の食生活と、西洋化している現在、またはこれからの食生活の優劣は様々な意見があると思いますが、先日、気になる記事を見つけました。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/aha2006/200611/501886.html

内容はちょっと専門的になるかと思いますが、タイトルをよく読み下せば、食文化の西洋化は、我々の世代でなく、恐らく次世代の頃に悪影響が出て来るのではないでしょうか。

これまでの食生活を西洋化に切り替えざるを得なかった、日系人の方が従来の食生活を続けている白人よりもリスクが高い、と言うところが少し衝撃的ですね。
posted by 桜井明弘 at 23:52| Comment(5) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月25日

周産期・小児医療のインフラ整備

小児科医の減少が報道されました。
http://www.asahi.com/national/update/1023/TKY200610230400.html

私は産婦人科医なので痛烈に産婦人科医の減少と産科診療を取り巻く社会からの圧力を日々感じながら仕事をしており、このブログはことある事にこれを唱えています。

報道によれば、大都市から周辺の県に新人小児科医が誕生している、とされ、子供が多い地域に適正に配置されて来たのかな、と好意的にも取れます。
「配置」というと行政の為せる技、とも取られますが、その実は就職する新人小児科医個人の動向によるものです。

様々なインフラが、この成熟したはずの国家でも必要ではありますが、医療界、医療費抑制を唱えるだけでなく、老人医療・福祉施設と両輪をなすように、周産期・小児医療にも投資すべきだと思っています。
「産めない、育てられない」は、やがて国家の破綻を来すこと必至。そもそも国の基盤ではないでしょうか。

医療界では、勤務形態が厳しく、訴訟も多いハイリスク・ローリターンの小児科、麻酔科、産婦人科。
そろそろ行政主導でこれらを整備しなければ本当に危機的な状況になってきています。

全ての国民が老人になり、福祉を受ける立場になります。
産まない、育てない人も、国の行く末を考え、この領域に目を向けて欲しいと思います。

posted by 桜井明弘 at 05:37| Comment(8) | TrackBack(2) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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