「過敏性腸症候群」、かつては過敏性大腸症候群と呼ばれ、俗に「過敏性大腸炎」とも呼ばれています。俗に、とは、実際には「炎症」が存在するわけではないので、これは医療用語としては誤った表現です。
一番分かりやすいたとえは、「旅行にいくと下痢しちゃうんですよねー」、「運動会の前、発表会の前に下痢します」と言ったエピソード。旅行に行くと眠れない、乗り物酔いが心配で心配がつのって酔ってしまう、に似ているかもしれません。
要するに心理的な因子が大きい病態です。
前回、妊娠中期以降、子宮増大に伴う便秘について触れました。この場合も、硬くなった便秘が解消されると、その後で下痢がみられることがあり、あたかも過敏性腸症候群と同様に、便秘と下痢を繰り返す、といった現象が見られます。
過敏性腸症候群の場合、心理的な要因があるため、抗不安剤などの内服も効果が見られますが、妊娠中はなるべく使いたくないですね。
しかし、こういった便通異常の場合、便秘のときに下剤を服用すると、下痢のときに大変です。
これまでは根気強く整腸剤を服用するくらいしかありませんでした。
なんとかいい方法が無いかと思っていましたが、数年前、「コロネル」「ポリフル」(商品名:ポリカルボフィルカルシウム)という薬が登場しました。
便秘の便は柔らかく、下痢の便は硬く、と都合よく便の状態を改善してくれます。これは薬剤成分の高分子化合物(ポリアクリル樹脂)が、腸内の水分を程よく吸収してくれることによります。硬い便の時には水分吸収した薬剤が便の周りを取り囲むようになり、便通が改善されます。また下痢の時には便の中の水分を吸収してくれるため適度な硬さに改善されます。
薬剤の主成分は腸から体内に吸収されず、カルシウム成分のみ体内吸収されます。妊娠中も安心、というわけです。
内服から1週間ほど経ったころから薬効がみられるようになります。
勿論妊娠中でない方も安心して使っていただけます。効果がみられない方もいらっしゃいますが、私の印象では大半の方で効果的です。
妊娠に伴う便秘シリーズ、妊娠中でない方にも参考にしていただけるよう考慮して書きました。妊娠してるから、と薬を使うのをあきらめず、大丈夫な薬、安全な使い方を是非主治医の先生と相談なさって下さい。
さくらトリートメントの竹本さんのブログ、たまプラーザ名物の桜並木、アップされてます。