内膜症治療の根治術は、治療のラインナップでも触れたように、子宮または卵巣の摘出手術です。厳密に言うと卵巣摘出で、エストロゲン分泌がなくなるため、閉経後と同じホルモン状態となり、これにより内膜症は再発をしません。子宮の摘出は、内膜症がもたらす症状の多くが月経痛、性交痛、排便痛、慢性骨盤痛などで、これらは子宮を摘出すると改善が期待できますが、卵巣が機能する限り卵巣チョコレートのう胞や卵巣周囲の癒着をもたらす可能性が残ります。
さて、「再発」と表現するからには、一度は根治を目指した治療が終え、内膜症病巣がすっかり無くなってから再度内膜症病変が出現した状態を指します。
手術により、卵巣チョコレートのう胞、周囲の癒着、これらの病変が摘出しきったはずなのに、ある一定期間経過すると同じような病変が術後の経過中にみられます。
内膜症の術後再発はいくつかの医学論文も発表されていますが、おおむね、3割の方に再発が見られる、とされています。
私が再発に驚くのは、手術前に偽閉経療法を行い、これは手術時の根治性を高めるためですが、手術を終了、手術時には内膜症病変がすっかり無くなります。術後1〜3ヵ月後に、偽閉経療法後の月経が開始しますが、第1回目の月経の後の診察で再発を疑う病変を見つけることがあります。
再発の時期はたいてい半年から1、2年が多い印象です。
また、年齢の若い患者さんほど再発の率が高く、20歳くらいまでは8割くらい、25歳くらいまでも半数近くの方に見られます。また手術時に内膜症の病気が進行しているほど再発率が高く、これは上に挙げた様な発表でもよく言われることです。
ここで「再発」としているのは、「再燃」とは異なります。医学用語で「再燃」とは、病変が再び活動性を持つことで、内膜症であれば手術時に摘出できなかった病変が術後に再び大きくなってくる、または薬物療法で病変が小さくなった、または超音波など画像上無くなった(様に見える)のに再度増大する、という場合で、治療により内膜症病変がすっかり無くなったわけではない状態です。
では、そんなに再発率が高いのであれば、あえて手術などしなくても良いのでは、といった意見があり、最近では治療による副作用も軽い低用量ピル(OC)が内膜症の第1選択、とさえ言われてきています。
OCによる治療、確かに効果の高い方も多いですが、反対にOCを服用していても内膜症が進行したり、月経痛などの諸症状が改善しない方もあります。
また妊娠を希望されている方、QOLが著しく障害され、日常生活に支障をきたしている方、既に病変が大きく、このまま放置できない状態の方はやはり手術の適応となります。
我々も手術を選択した以上は、子宮や卵巣を摘出する根治療法でなくても、根治を目指し、手術前に偽閉経療法を行った後、手術に臨み、内膜症病変を徹底的に無くそう、という姿勢で治療を行っています。
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・不妊スクリーニング検査 〜内診・経腟超音波検査・子宮頸がん検査〜
産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当している竹本昌栄さんが、ブログで書かれている「冷え」について、お読みいただいてますか?
冷えチェック、是非どうぞ!
この3ヶ月、月経前に突然ズキンと下腹部痛がくるようになりました。
今月は特にひどく突然、下腹部と肛門がねじれるというか、ひぱっられるような激痛が続き、二日間の点滴で治まりました。卵巣出血をしていて、要因はチョコレートのう腫5cm弱ができていたそうです。
10年前も同じような激痛で、病院を受診した時は、13cmのチョコレートのう腫があり癒着もしているので、開腹手術をしました。〔卵巣はとっていません〕
10年ぶりの再発なのですが
今後の治療法は選択できると思うのですが、毎月このような激痛が突然くるのかとと思うと、仕事など日常生活に支障がきてしまうのです。
今の状況で手術は必要ないでしょうか、
薬で消えてしまうものなのかも不安なのです。
現在の状況(妊娠の希望など)が分からないのですが、3ヶ月間、内膜症によると思われる症状が出ていますし、その症状が強そうですね。また5cm近くのチョコレート嚢胞ができてしまっているので、やはり治療の適応と考えます。
治療には手術療法と薬物療法があり、かなこさんにとって適した治療法があると思います。必ずしも手術療法がベストであるとは言えないので主治医の先生とよく相談なさってください。
またご質問あれば、いつでもお気軽にどうぞ。
私は今後、妊娠希望はない40代ですが
もしも、手術の場合、チョコレートのう腫
の方法として、腹腔鏡、開腹とあるという事なのですが
できれば、開腹はしたくありません。
薬物療法で効果がでるといいのですが、
手術になった場合、腹腔鏡でできる大きさでしょうか?
手術を選択した場合、できれば腹腔鏡がいいと思いますが、内膜症の状態、特に癒着がひどい場合は開腹手術にせざるを得ないことがあります。また以前に開腹手術で行われているため、術後癒着もある程度予想されます。
手術の方法は手術を担当される先生とよくよく相談してください。
手術か薬物療法か、手術の方法も考えて選択をされるといいと思います。
お忙しい中、コメント
本当にありがとうございました。
突然こんなところでご意見求めていいものでしょうか・・・
1年半ほど前に、子宮筋腫とチョコレート嚢胞の手術で子宮全摘、両卵巣温存しました。
手術時にダグラスか癒着がひどかったと言うことで、大腸バリウム検査では腸癒着があります。
術後大変元気になり、術後の定期検診も終わり、あとは年一回の卵巣等の自主検診経過観察になっています。
最近、腸とは少し感じの違う下腹部の違和感が気になり、内膜症の再発が心配で、腸癒着が将来ひどくなることと、卵巣ガンのリスクが高まることも不安です。
現在49才で、子宮全摘している場合の再発の可能性はどの程度あるのでしょうか。
また、低用量ピル等の内膜症治療はチョコの存在が明らかなどでないと行わないものなのでしょうか。
年一回の検診よりも早めに違和感程度を訴えて、治療するなどのメリットはあるでしょうか。
もしアドバイスいただけるならよろしくお願いいたします。
悠々さんも大変な治療をお受けになり、今なお再発の心配をされてますが、内膜症は、本当に厄介な病気ですね。
内膜症の再発ですが、「腸の癒着」ももちろんですし、チョコレートのう胞が再発した場合のがん化も心配ですね。
子宮を摘出した、残っているは、再発に関係がなく、卵巣の有無によると思います。
ご年齢からは、再発のリスクが減ってきていると思いますが、チョコレートのう胞のがん化は、今くらいのご年齢から増えてくるようです。ですから、卵巣の状態は必ず定期健診をお受けください。
定期健診はあくまでも検診であり、異常がなくてもお受けになるべきですが、悠々さんのように、症状の変わったことがあるのなら、早いうちに受診するべきだと思います。
あまり再発を恐れすぎてもいけませんが、手術の所見では、再発を予防するために薬物療法、OCも含めて行われることがあります。主治医の先生と相談されてはいかがでしょうか。
再発予防という観点での薬物療法もあるんですね。
産婦人科不足の現状もあって、手術を受けた総合病院の婦人科は大変待ち時間が長く、どうしても行くのを躊躇してしまいます。10数年経過観察を受けてきたかかりつけ医との連携を含めて、一度総合病院の医師に相談をしに行きたいと思います。
ご親切にご回答いただきありがとうございました。
4月から10月までリュープリンをし、11月10日に腹腔鏡下手術でチョコレート膿胞(左)6cmと子宮筋腫(右)9cm弱、1個の手術をしました。
チョコ膿胞・筋腫核摘出、左卵巣と子宮、腸の癒着剥離だけで、骨盤内や腹膜などのどこにも内膜が見付らなかった(病変確認出来なかった)とのことで内膜の焼却はしませんでした。
2、3月と2度の激痛と発熱、又リュープリンの1回目、4月にはフレアーアップ?という副作用で膿胞が破裂しています。この経緯から内膜が卵巣以外にも飛散している可能性が非常に高いと思っていたのです。
(左卵巣以外にもへそ周りもいつもシクシク痛かった。)
リュープリンの効果で病変が小休止してしまったのでそれが見つからず、焼却出来なかったと思うのです。卵巣だけにしか内膜が飛んでいなかったという事は、まずあり得ない。と、内膜症協会のHPにもありました。
ホルモン療法が終わってすぐに手術をしたのが早すぎたのでしょうか。
また、排卵が復活すると再発する可能性があるかと思いますが、私の年齢でも、低用量ピルを術後すぐに使用したほうがいいでしょうか。(偽閉経療法はももう使用したくないので)
どうしたらいいものかと不安です。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご教示いただければ幸甚です。
いちごさんも内膜症とは大変な闘いをされていますね。
書き込まれた情報からは、「左卵巣と子宮、腸の癒着剥離だけ」とありますが、この癒着の原因は内膜症だと思います。内膜症病変は癒着の際に「糊」の役割をします。手術でこの部分をはがし、出血があれば止血し、という操作を加えていると思いますので、この部分の内膜症は治療済みです。
チョコレートのう胞がフレアーアップの際に破裂するのは、理論的には起こりえますが、頻度としては極めてまれなことだと思います。また内膜症病変はがん細胞とは異なりますので、飛び散ってもその部分に生着するとは限りません。むしろ病変自体が死んでしまうことも十分考えられます。そこに加えてリュープリンを投与しているので、仮に小さな内膜症組織があったとしても、これに対して治療を行っている、つまり内膜症が無くなった状態になっていると考えられるのではないでしょうか。
リュープリンで内膜症の活動性を抑え、手術を行う、というのは私も行っている基本的な方針です。
リュープリンの結果見えなくなった病変は、治療が済んでいる、と考えていいと思います。
術後の再発予防ですが、明らかに手術終了時に病変が残っている場合はお勧めします。そうでないときの再発ですが、ご年齢からは再発率は決して高くないと思います。ご心配であれば低用量ピル、リスクが低ければあっているかもしれません。
最近では、低用量ピル、閉経まで使用してもよい、とされていますし、ピルを使っているといつが閉経になるか分からない、というのであれば黄体ホルモン製剤のディナゲストも勧められます。
リウマチとの関係を、調べてみました。
さまざまなサイトがあり、ピルで悪くなる、ともピルが悪くなるのを防ぐ、とも、両方の報告があるようです。
製薬会社からの提供情報とOCガイドラインによると、エストロゲンは自己免疫を更新させますが、OCの服用により卵巣からのエストロゲンを低下させることができる、これが内膜症に対する治療効果につながりますが、同様に低エストロゲン状態が関節リウマチの病態に対しても増悪させない、という理論になります。実際にOC服用中は、軽症の関節リウマチが重症化するのを抑制する、という論文があります。関節リウマチの発症を30%低下させる、ともあります。
今度の10月30日に子宮内膜症で手術します
五年程前から左の仙骨ふきんに鈍痛があり、それより以前から生理痛は普通にありました
最近下腹部にかなりの痛みがあり、救急で運びこまれて発覚しました
MRIの結果、内膜症の一部で腺筋症ではないかとのことで、大きな血液の固まり(液体)がありました
卵巣はきれいでしたが、子宮筋腫は少しあります
ただいま子宮全摘出か病変だけを取り、子宮温存か迷っています
41歳独身子供はいてません
子宮内膜症は再発するかで悩まないといけないのであれば取った方がいいのでしょうか?
主治医の先生はどちらでも良いみたいな感じなんですが…
もう全く答えが出ません
子宮全摘出すると何かが変わることはないみたいなんですが、かなり不安です
もう全く答えが出なくて困っています
もしよろしければアドバイスお願いいたします
何度も申し訳ありません
その血液の塊(液体)は子宮の外壁から出て、お腹を圧迫していて、子宮の倍の大きさでした
救急で運ばれた後から食べ過ぎると激痛と下痢と吐き気がありました
それ以前からは食べ過ぎるとすぐに下痢になってました
昨日は、内膜症の再発が疑われる中、グレーゾーンとはいえ、悪化していなくてとにかくほっとしました。ここ1ヶ月の間、都内まで整体に通ったりと、体質改善のために動きまわっていました。それで解決するほど内膜症は甘くはないと思っていますが。
家に帰ってふと気になったのが、左卵巣の卵管付近の事。手術した時は、左卵管は完全に塞がって、腹膜にもぐりこんで抜けない状態だったと思います。その部分の内膜症が再発したり痛みなどの悪さを引き起こしたりする事はあるのでしょうか?少なくとも昨日は卵巣じたいが大きくなる兆候は見られなかったので。
私の現段階での内膜症再発?に関しては、手術などでお腹の中を見ない限りわからないということですね。
今月半ばから無事に転職を終え、疲れはありますが、今は週一回整体に通える環境で、4月頃までに経験した卵巣付近の痛みはなくなったので、ほっとしています。