子宮内膜症治療、このブログでもこれまで度々触れてきました。
治療法は、手術療法、薬物療法、の順に並べ、大まかに治療効果が高い、治療費用が高い、治療による侵襲が大きい順になっています。
効果が高いものほど、治療費用がかかり、やはり身体への影響も大きくなっています。
この治療効果、侵襲、は、それぞれ患者さんの病気などにも大きく左右される為、一般的な目安と考えて下さい。
根治性を求めれば手術療法が、姑息的(医学的には根治的に対する言葉で、一般に使われるような、悪い意味ではありません)な方法で、なるべく治療費用をかけたくない、身体にストレスをかけたくない、のであれば下に並んだ方法を選びます。
手術療法として、「子宮摘出または卵巣摘出」は、内膜症を抱えてらっしゃる世代には当てはまらないことが多いのですが、理論的には最も効果が高い、再発の恐れが全く無い方法で、現在でも産婦人科の成書(権威が執筆し、標準的治療が解説されている、いわゆる「教科書」)には、唯一の根治療法、として紹介されています。ただ、内膜症の世代はこれからお子さんを作る世代であることが多く、事実上治療法のラインナップとして外れることが多いです。
治療効果として我々がEBMをもってお勧めしているのが上からOCまでです。
鎮痛剤の一部にも内膜症の痛みだけでなく内膜症そのものの治療効果の可能性も言われています。
漢方、健康食品にはEBMはありませんが、治療効果が見られることもあり、この辺りも調べてお伝えして行きたいと思います。
治療法の一覧、ごらん頂いていかがでしょうか。分かりにくい、これはどうか、といったご質問などお寄せいただけると嬉しいです。
関連記事加筆修正
・子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜
・子宮内膜症って? 〜子宮腺筋症〜
産婦人科クリニック さくらでさくらトリートメントを担当していた温活のエキスパート、竹本昌栄さんが、万病の元、「冷え」について執筆しています。
お気づきですか
左の「カテゴリ」に皆様の便宜を図るため「子宮内膜症」を新設しました。ご利用ください。
(初出:2008年2月3日)
(補筆修正:2014年9月15日)
(補筆修正:2016年1月12日)
子宮内膜症の治療方法についておうかがいしたいのですが・・・。
生理痛がひどく、腹痛の他に気持ち悪くなったりめまいがひどくいといった症状がありました。また先回の生理からは排便痛も出てきた為思い切って婦人科に行ったところ子宮内膜症と左の卵巣にチョコレートのう腫6.6cmと診断されました。
そこの病院では保存治療か手術を勧められました。
しかしまだ未婚で仕事もしているので薬による副作用が心配です。また再発の可能性も考えると簡単に手術するという治療はまだ疑問が残っています。できれば自分としてはピルと漢方薬、そしてサプリメント(CPLやピクノジェール)で治療をしてみて経過観察をしたいと思っています。
2件目の病院に行きセカンドオピニオンを求めたところ、手術一辺倒の返答のみでした。。。
3件目の病院ではピルの21日分を飲み続けることで生理を止め、CA125の数値を測って経過観察ということになりました。
ただ、3件目の先生もやはりお勧めは手術だと仰っていました。
チョコレートのう腫が大きくなったり癒着が進むと手術がしにくくなるとも言われました。
自分としてはできれば3か月程ピルで様子見をしたいのですが、その間に癒着が進まないか、またこれ以上大きくならないか心配です。
これらは数か月の間にも大きく進行したりするものなのでしょうか?
また先生はピルでの様子見に対してどう思われますか?
ちなみに生理が終わって1週間程で排便痛はほどんどなくなりましたがたまにチョコレートのう腫のある方の子宮のあたりがたまにチクチクと痛むことがあります。
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
内膜症の診断、手術や薬物療法が必要なこと、ショックだったと思います。
えむさんがご理解されているように、薬物療法には副作用が、手術療法を受けても再発があるというのはとても決めがたいですね。
ピルの治療も検討されているようですが、1年くらいで妊娠を、と考えてらっしゃるのであれば手術がお勧めです。
しかし妊娠はもう少し先、というのであれば、治療効果はゆっくりですが、身体に比較的ストレスが少ないピルがいいのではないかと思います。
その間癒着が進む、ということはピルが効いていない、ということですが、ピルの効果はチョコレートのう胞の大きさである程度わかると思います。
漢方療法は他の治療法を選択できない方、ピクノジェノールなどのサプリメントの効果については、今のところ効果あり、とまでは私は言及できません。
またわからない点やお困りのことなど、遠慮なくお聞きください。
書き込み有難うございました。
ちょっと安心できました。
また丁寧にご回答下さりありがとうございましたm(_ _)m
妊娠はまだ先のことなのでまずはピルで治療してみようと思います。
このブログの「OC」も読まれたかも知れませんが、ご参照下さい。
http://cl-sacra.seesaa.net/article/93506207.html
ときには吐いてしまうこともあります。
これって内膜症ですか?
月経痛に悩まされていること、お察し申し上げます。
吐いてしまうのは、痛みが強いときに見られる傾向があります。
医学的には、「症状」=「診断(病気)」ではなく、症状から考えられる病気を診断しなければなりません。
婦人科受診をして、生理痛の原因を診察していただくことをお勧めします。病気がなくても月経痛の強いことがあり、適切な鎮痛剤やOC(低用量ピル)による治療が行われることがあります。
また何か分からないことがありましたら、いつでも書き込んでくださいね。
本日、内膜症の治療法として、リュープリンの注射をご提案していただいて、嬉しく思います。
リュープリンで完全に生理を止めてしばらくしてから、腸の内視鏡検査を受けます。その際、腸管子宮内膜の症例数の多い消化器科・肛門科の先生に検査をお願いしただくことを希望しております。そのような先生をご紹介いただけますと大変嬉しく思います。
正直、「腸管子宮内膜の症例数の多い消化器科・肛門科の先生」は多くないと思います。腸管内膜症の頻度自体が少なく、婦人科医でも診たことがない医師もいると思います。ましてや内科、外科の消化器専門医でも難しいかもしれません。
確かに、CA125が低かったので、下血はずっと痔と診断されていました。腸管子宮内膜症の可能性をご指摘いただいたのは、内膜症の大家でいらっしゃる群馬中央総合病院の五十嵐先生でした。五十嵐先生には、「このまま放っておくとイレウスを起こす」と言われ、それまで飲んでいたボンゾールでは腸管子宮内膜症には弱いということで、関東の病院をご紹介いただき、すぐにリュープリンに切り替えました。群馬に比べましたら横浜はとても近く感じます。
当方、しばらく大学病院に通院しており、文字通り3分診察で、相談も難しい状況でした。そこで、親身に相談に乗っていただける先生をみつけたことをとても嬉しく思います。これからもよろしくお願いいたします。
基本的に私もR.Tさんの担当の先生と同じ考えです。
理由の第一は、術前投与の有効性のためです。先生と同じく、「注射なしだと癒着をはがしきれなくて病巣を取り残してしまうかもしれない」からです。
第2は、「先に妊娠して嚢腫を妊娠初期にとること」に反対の考えだからです。妊娠初期の手術を安易に考えないでください。その時期の手術は、R.Tさんとおなかの赤ちゃんの二人のリスクを背負うことになります。
ゾラデックスをはじめ、偽閉経療法の治療経験はあるのでしょうか。副作用が怖い、も理解できますが、必ずしも強く出るわけではなく、またゾラデックスの副作用は決して強くはありません。また針も確かに太いですが、非常によく考えて作られており、想像よりもずっと痛みは軽いと思います。
治療をお受けになるご自身の悩み、ためらいは大きいものだと思います。しかし、受けずに手術、手術せずに妊娠には私は同感しかねます。
手術の上手な先生であればこそ、さまざまな症例を担当されてきており、R.Tさんに最も適した治療法を提示されているんだと思います。
ぜひまた書き込んでください。
匿名希望とのことで、昨日の書き込みの修正と本日の削除を行いました。
失礼な書き方をしたらお許しください。薬剤師さんということで、医療者として少しストレートに表現します。
一つ一つ詳述すると膨大になってしまうので、最初にポイントをまとめると、R.Tさんの担当の先生のコメントを読み、ますます先生のお考え、現在の産婦人科医の中では標準的だと思いますし、非常に冷静に病態や中長期的な予後を理解されていると感じました。おそらくEBMを大切に、ご自身の経験で肉付けされている診療スタイルと思います。R.Tさんの書き方からも先生への信頼が読み取れます。
一方、R.Tさんの治療のエンドポイントはどこに置かれているのでしょうか。妊娠すること、内膜症を可能な限り根治すること、手術を受けずに内膜症が存在する状態で閉経を迎えられること。
おそらくその全てだと思いますが、当面の目標はやはり妊娠ではないのでしょうか。だとしたらその目標を無事に安全に達成する治療を選ぶべきだと思います。
R.Tさんは薬剤師さんですから、薬のいい面、悪い面を十分理解されていると思いますが、悪い面を強調して考えられてらっしゃるように感じます。またエビデンスの低い治療、すなわち副作用も少ないけれど主作用も少ないものに目が向けられているのではないでしょうか。
副作用やリスクがあっても治療を完遂し、病気を克服するのは、医療の主たる柱だと思います。そしてその甲斐あってあげられる多くの患者さんの喜びの声があるはずです。
たとえば偽閉経療法に関しても、私はかなりしつこく副作用を聞いていると思いますが、辛い副作用とはいえ、過半数の方が我慢できる範囲、副作用対策に漢方や対症療法、Add-back療法を行えば、ほぼ全員が治療を完遂出来ます。また繰り返し偽閉経療法を行ったとして、どれくらいの方が骨粗しょう症をきたすのでしょうか。骨量減少をきたさないディナゲストやOCを取り入れる工夫もあります。
実際に治療をお受けになるわけですから、十分悩み、考え、辛い思いをされていると思いますが、私は主治医でもないので、むしろ客観的に冷静にみると、副作用を恐れて何もしないのでは、前進がないと思います。
少し言葉が過ぎた、と反省していたのですが、R.Tさんのコメントを読んで、思い切って書いて良かった、と思いました。
エビデンスや、東洋医学、代替医療、このあたりは今後の医療をめぐる新しい波になるとは思いますが、何分、医療技術と違うアプローチのため、医師は二の足を踏むことが度々です。
どんな方法であれ、よい結果がその患者さんにもたらされればいいと思います。だからこそ、医師はエビデンスを重視するんだと思います。
よい先生に巡り会えて良かったですね。
卵巣チョコレートのう胞に対する手術の妊娠に対する影響はいまだに賛否両論で、どちらかというと手術による原始卵胞数の減少から、排卵誘発効果が減弱する、と結論付けられています。
私もそうですが、腹腔鏡手術を行っている医師の間では、これは術者の技量に大きく左右される、と考えられています。
すなわち、病変の摘出を完全にしようとすれば、正常部分を大きくとることになる、反対に正常部分に障害を残したくなければ病変が残る、というわけですが、手術を多くこなしている医師であれば、この加減を理解しているはずです。
「内膜症の治療で卵巣のオペはタブー」は私はいいすぎだと思います。ある程度の排卵誘発効果の低下はありうると思いますが、R.Tさんのチョコレートのう胞の大きさだと、繰り返しになりますが、妊娠中のトラブルとなるため、やはり手術適応の大きさだと考えられます。
「腹腔鏡できれいになっても、もう妊娠は無理かも...と半分以上あきらめている」も短絡的に結果に結び付けている感があり、そうでないことも多いんだと考えられないでしょうか。
癒着に関しては診察をしていないのでなんともいえません。最終的にはお腹の中を見ないとわかりませんが、患者さんや医師により、超音波や内診で癒着の診断が可能であることがあります。
ぜひ最後といわず、納得いくまで繰り返しご質問ください。
コメントいただいていたのに、そちらのIPアドレスの問題でなかなかアップされなかったようです。こちらから調整できず、申し訳ありませんでした。
アルコール固定に関してですが、お勧めしません。
・再発率の高さ(治療の不完全さ)
・合併症(急性アルコール中毒、腹膜炎)
・おそらくは手術と同様の、正常組織への侵襲
以上です。
私も内膜症は腹腔鏡だけで500件以上手術を行っていますが、アルコール固定を行ったのは2人だけで、癒着がひどくチョコレートのう胞の摘出がどうしてもできなかった場合です。
治療法について分かりやすくまとめていただきありがとうございます。
先生の記事はいつも勉強になります。
ミレーナは1万円弱と、1回のホルモン注射とあまり変わらない金額と知り、少し驚いています・・・。
私は子宮筋腫がひどく、主治医からは温存手術自体は非常に難しく危険を伴い、再発もする為、「手術をせずに当面ピル治療」と言われています。
今はまだホルモン注射(スプレキュア)治療中ですが、間もなくピルに切り替えさせられます。
先生にご質問させてください。
@手術のタイミングについて
ピルを開始すると、今までホルモン治療をしてきた事がリセットされてしまう事、生理の出血量が多く症状の辛さには限界を感じている為、再発のリスクはあっても、私としてはピルを開始する前に手術をしてもらう事を希望しています。
先に手術をした上で、再発防止の為のピル治療をする事と、どちらがいいでしょう?
Aピルとミレーナとのメリット・デメリットについて考え、どちらがよいのか悩みます。
先生のクリニックでは40歳以上のピルはされていませんよね?
私の場合、30代の時に5〜6年オーソを続け、副作用(過敏症)が辛く止めました。
今は新たなお薬が出ているみたいですし、40歳を超えても肥満もなく、コレステロール等も今のところ低いのですが、それでも関係なくピルは止めた方がよいでしょうか?
あとミレーナは、過敏症の場合、お薬がもし合わなかった時にすぐ止められないのが心配なのと、筋腫により内膜の中が圧迫されてきれいな形ではないので、ミレーナを子宮に入れる事ができるかどうかも心配です。
始めにミレーナと同じ黄体ホルモンのヤーズを何度か試してして、お薬が大丈夫ならミレーナにするという事が安心でしょうか?
B症状が辛い為、手術を希望していますが、子宮温存と全摘と、どうすべきか自分でも分からなくなっています・・・。
一般的に40代前半の場合は妊娠は難しいのでしょうか?
温存手術した後の子宮では、赤ちゃんは育たないのでしょうか?
また、妊娠する為には結婚が先になるので、出産は難しいかもしれませんが、赤ちゃんはあきらめたとしても、体の臓器を摘出する事に一番抵抗を感じます。
全摘する事は身体的には本当に問題はないのでしょうか?
もしも、年齢的に出産する事が難しい場合、温存手術を希望する事はいけない事でしょうか・・・?
産科の先生のご意見が一番かと思います。
アドバイスをお願いいたします。
色々と選択しに悩まれていますが、まとめると、
・手術療法
全摘か筋腫核出(温存)か
・薬物療法
ミレーナ、ピル、、
ご結婚前とのことで、安易に子宮摘出は勧められませんが、症状によってはやむを得ない選択と言うこともあります。
症状の重さや貧血の程度なども参考にし、当初は薬物療法(当院ではピルはお勧めしていません)、上手く行かなければ手術療法、と言う順に考えてはいかがでしょうか。
先生のブログ拝見致しました。すごく患者さんに寄り添った治療をなされている事等、先生との距離を何か身近に感じメールさせて頂きました。
1年半前に多発性子宮筋腫(最大3センチ)があると言われ経過観察になっておりましたが、3か月前に会社の検診で過度の貧血Hb:8.9がわかり再度婦人科を受診したところ、筋腫が最大5センチほど(全体としては男性の握りこぶし大)になっており左卵巣も5センチほどに腫れていると言われました。心配になり筋腫で有名な別のDrに見てみらった所、筋腫より卵巣の腫れが心配で、チョコレート嚢胞、大きさ5センチとの事、また、MRIの所見より直腸への癒着も強く疑われるとのことでした。40歳を超えると癌の可能性も否定できないこと、母が卵巣癌(漿膜性)をしていることもあり、即手術を勧められました。
長文ですみません。
知り合いが倉敷成人病センターでOpeしたことがあり、早速、腹腔鏡で有名なA医師を受診した所、紹介状のMRI画像も見ずに内診とエコーだけで年齢的に見ても癌の可能性もゼロではないから腹腔鏡で即手術(左卵巣と子宮全摘)と言われました。薬物療法等色々相談したかったのですが、お忙しい先生なので5分診療で終わりました。名医とお伺いして受診したにも関わらず、手術と言われる患者の身に何一つ寄り添っていない感じがしてとても寂しい気持ちになりました。そこで先生にご相談ですが、ディナゲスト等の薬物療法で経過観察するより手術が最善の道でしょうか?卵巣は、一つ残るので更年期の症状は免れてもまた、内膜症の再発の恐れもあります。現在、主訴は、貧血とここ3か月ほど生理時と排卵時に痛みがロキソニンで対処できています。先生のご意見をお聞かせ頂けると幸いです。
めぐりんさんが診察して頂いた先生は、ご存知のようにご高名な方で、またその技術の高さのために全国から患者さんが訪れているため、5分の診察は分からなくも無いです。
ほとんどが手術を受けることが前提に受診される方ばかりと思います。
薬物療法との相談は難しかったかも知れません。
貧血、卵巣腫大の状態を伺うと、手術を受けられるのであれば、もちろん手術が一番と思いますが、診察に当たっておりませんので、あくまでも一般論です。