2007年11月27日

分娩施設1割減

11月15日の読売新聞に、分娩施設が減少し続けていることが報じられていました。
1年半前と比較して、1割も減少したそうです。

既に分娩受け入れ施設が無く、お困りの方もいらっしゃると思います。
近くの病医院で分娩予約が出来なかったり、帰省先に受け入れが無かったり。

思えば2004年の「大野病院癒着胎盤」、2006年の「堀病院看護師内診」が大きく報じられ、医療現場に警察の捜査が入ったことがきっかけになり、産科診療、周産期治療施設は大きく様変わりしました。

産科医や小児科医、麻酔科医がその過酷な勤務体制から、年々減少の一途たどっていることは、報道や国会でも取り上げられていること、先の参院選で各党のマニフェストに挙げられたことなどから、国民に知られるようになって来ました。これらの科だけでなく、一般に医療施設の労働環境は劣悪です。

上に挙げた2つの事件が大きく、さらに追い討ちをかけるように奈良県の事件があり、産科医療現場にいた多くの産科医師たちが現場を去りました。医療事故には過失によるものと、正当な診断・治療によっても避けられないものがあります。
前者の場合、故意による過失を除けば、ほとんどが不注意や確認を怠ったことによるもので、リスクマネージメント、ヒューマンエラーの概念から、限りなく0(ゼロ)に近く、無くすよう努力しなければなりません。
しかしながら後者の場合は、これも同様に0に近づけなければならないのですが、人間、人体の持つ普遍的でないもの、つまりバリエーションによって避けられないものがあります。分かりやすい例えで言えば、薬剤によるアレルギーです。既にこの薬や類縁の薬でアレルギーの既往がある場合、処方は避けなければなりません。しかし、初めて使う薬、アレルギーの可能性を持ちつつも、治療に必要なため処方します。ほとんど100%に近い方にアレルギーが無くても、大変重篤なアレルギーが発症する方がわずかにいらっしゃるかもしれません。これを過失と呼べば、医療行為は成立しません。

上記の産科診療問題の全てを過失なし、とは言いませんが、不当な警察捜査や検挙により、患者さんのために、地域医療のために身を粉にしてきた医師が「被告人」のレッテルを貼られ、さらに詳細な調査も無く、ましてや専門知識の無い功名心に駆られただけのマスコミによって社会的に大批判にさらされます。

このような状況で、これからも頑張ろう! と意気込めないと思います。

私自身、周産期治療施設から、一開業医となり、産科診療の最前線から退きましたが、勤務医時代は生活は崩壊し、体力、精神的な圧力は限界に達していました(当時のブログアップの時間を見ていただけたらお分かりだと思います)。それでも自分や病院を頼って来てくれている患者さんの気持ちに応えたい、それと自分を可愛がってくれた上司に報いたい、それだけの気持ちで何とか保ってきたものです。ひょんなことから開業の話が持ち上がり、独立に至ったわけですが。

少し愚痴めいたことを書きましたが、国や政治家が本気で前向きに産科診療、周産期医療の建て直しを考えてくれなければ、この10年くらいでもっともっと現況は悪化すると思います。現場にいれば、その予兆を感じます。

この問題をはじめ、さまざまな医療問題を取り上げてらっしゃる先生のブログを見つけました。


posted by 桜井明弘 at 00:42| Comment(4) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先生こんにちは。この問題かなり深刻ですよね。妊婦さんの病院たらいまわしもそうですし、医師不足、分娩施設減少、よくTVで特集していますね。ある医師の仕事に密着取材していましたが、35時間ぐらいの勤務でした。本当に大変ですよね。でも私たちは、お医者様がいないと、当り前ですがとっても困ります(もちろんどの科も)少子化とさわがれている現在、本当に対策はないものなのでしょうか??
Posted by ふーちゃん at 2007年11月27日 11:58
先生、おかげさまで先週無事に長男を出産しました。先生に筋腫の手術をしていただいてからちょうど1年2ヶ月。私は頼れる医師の下で安心して出産することができて、本当に幸運だったと思います。リスクを抱えた妊婦さんもたくさんいます。こうした問題に応えるためには、ただ税金を投じて行けば良いという問題ではないのでしょう。
韓国や中国では帝王切開が多いと聞きます。普通分娩はいつ出産になるかわからないけれど、帝王切開と決めてしまえば管理は簡単ってことなんでしょうか。日本の産科医療は、そういう方向にだけはいってほしくないなーと思います。
Posted by haya at 2007年11月28日 16:12
ふーちゃんさん、書き込みありがとうございます。ふーちゃんさんのように思っていただけると、医師のやりがいを再び実感します。勤務医時代、何度も辞めたくなったことがありましたが、患者さんと一緒に治療の成果、喜びを分かち合う度に、大変だったけどよかったなあ〜と、つくづく感じました。
どんな職業も、楽ではなく、大変なのは同じ。われわれの仕事が生命に直結しているからこそ、古来、ある意味尊敬を払われてきたし、その尊敬の上に不遜にも胡坐をかいた人たちもいました。それでも医療レベルを高く保てたのは、それなりに医師の技術、医療に対する評価があったからだと思います。昨今の医療不信、医療者側にも、マスコミにも、国民側にもそれぞれ責任があります。もう一度それらを払拭し、責任ある医療のあり方が問われていると思います。正当な評価がなされれば、その職種は蘇ります。3者がうわべだけでない、本当の医療について今考え直さなければならないときだと思います。
これは、政治解決だけでは前進しないと思います。
Posted by 桜井明弘 at 2007年12月04日 01:06
hayaさん、ご出産おめでとうございます。我が事のように喜びを感じています。

御懐妊の一報を頂いてから、あっという間に感じますが、この間、hayaさんには、実に多くのことがあったでしょうね。心配もあったでしょう。

ご自身が経験されると、尚のことこの問題は見過ごせませんよね。
私の論調も、税金投入で解決されないと思います。「国や政治家」と書きましたが、彼らには道筋をつけてもらわないといけない、真の解決は、彼らもですが、われわれ医療者と治療を受ける国民に責務があると思います。

韓国や中国で帝王切開が多いのは、管理の問題だけではないと思いますが、帝王切開、確かに予定で決まっていれば難産の方を見守るよりも管理はたやすいかもしれません。しかし、経膣分娩に比べ、帝王切開は当然お腹も切らなければならないし、母体への侵襲はずっと大きいです。hayaさんが危惧されるように、人手が足りない、予定で管理できる、帝王切開が増える、の図式も成り立ちますし、帝王切開は悪ではありませんが、これでいいんだろうか、と考えることも大切です。

ともあれ、hayaさん、本当におめでとうございます。
Posted by 桜井明弘 at 2007年12月06日 01:28
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