2007年09月22日

妊娠、授乳とインフルエンザ

我々がお受けする質問で、よくあるのが「妊娠中のインフルエンザワクチン投与」「授乳中のワクチン」、そして、「これから妊娠を考えているが、今ワクチンを打っても差し支えないか」というのがあります。

内科や他のワクチンを投与している施設でも、「妊娠」の一言があると、「何が起こるか分からないから」とワクチンを使ってもらえないこともあります。妊娠・授乳中は自分の身体だけでなく、お子さんへの影響があるからですね。

さて、多くのワクチンがある中で、そのワクチンに含まれるのが本当のウィルスである「生ワクチン」、本当のウィルスを処理して感染性をなくした「不活化ワクチン」に大きく分けることも出来ます。インフルエンザワクチンはその後者である「不活化ワクチン」です。つまり理論的に言えば、ワクチン接種後に、ワクチンに含まれているインフルエンザウィルスによって、インフルエンザを発症することは無い、といえます。他にB型肝炎ウィルスのワクチンなどがあります。

ただし、人間の体やウィルスというのは何があるか分からない、というのも確かにあります。万一、ワクチンによって思わぬトラブルが発生したら、赤ちゃんに影響があったら、ということを心配して投与を控える、という考え方があります。

ワクチン接種によるインフルエンザ発症予防効果については後日触れますが、接種によるトラブルの頻度は、予防効果と比べれば桁違いに低く、米国などは考え方がドライなので、ほんの僅かのトラブルがあろうと、大多数の人が予防効果で快適に過ごせれば、裏を返せば医療費抑制効果もある(もっと裏を返せばワクチン製造の製薬企業の売り上げにつながる)ので、皆さんやろう、という考え方になります。日本は対照的ですね、ワクチンアレルギー(本当のアレルギーではありません)ともいうべき反応。僅かのワクチンによるトラブルが自分の身に降りかかったらどうしよう、受けなければいいのではないか、と考えます。でも自分だけ受けないと発症したときに大変。確かに当事者であったら大変なことだと思います。ただ流行を予防する目的では、自分だけワクチンを受けたらいい、という考えではだめで、ほとんどの方が受けていないと流行は防げません、今年のはしか(麻疹)の大流行がこれを裏付けています。
ワクチン、受けないと心配、受けても心配、といったジレンマがあり、わが国は、過敏症、という意味で、ワクチンアレルギーだな、と思います。

話は脇に逸れましたが、では妊婦さん、授乳婦さん、またこれから妊娠を考えている方、はワクチン接種はどうするべきでしょうか。

2年前に前任地の賛育会病院で、産婦人科の指針を作成し、公表していたので、その頃のものも引用します。

・インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、胎児、乳児に対する影響は理論的に無いと考えられます。
・厚生労働省HPによると、国際的には安全であるとし、国内では妊娠初期の安全性についてのデータに乏しく、慎重に対応するよう勧め、文末に米国健康保険局(NIH)のHPへのリンクが貼られていました。このHPは現在デッドリンクのようですが、代わりの新しい指針も見当たりません。
・そのNIHのHPでは、妊婦さんはインフルエンザが重症化することがあり、幼児、高齢者と同等のハイリスクである、として、むしろ妊娠中、これから妊娠を考える方へのワクチン接種を推奨しています。この接種時期は、日本では安全性が確認されていない、とされている妊娠初期でも構わない、としています。
・国内のいくつかの論文では、妊娠可能年齢は、幼児、高齢者に比べて健康体であり、インフルエンザ発症後、重症化することは少なく、ワクチンを受けるリスクが分かっていないのであれば、むしろ接種を避けてもいいのではないか、としているものもあります。

確かに米国では妊婦は重症化、としているものの、私自身の経験では重症化した方はありませんでしたが、高熱のため、解熱と脱水予防の目的に入院された方は少なく無かったです。

以上を踏まえて、リスク&ベネフィット、利点・欠点を理解した上で接種を受けるか考えてください。少しでも心配な点、不安な点はご質問いただければ回答致します。


posted by 桜井明弘 at 00:41| Comment(15) | TrackBack(4) | 医療一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
毎年、子供と一緒にインフルエンザの予防接種を受けていましたが、今年はまだ受けていません。
今、二人目を…と考えています。今ちょうど排卵期で、予防接種を受けていいものかと悩んでいます。
Posted by 三浦 at 2008年11月19日 09:53
三浦さん、こんにちは。

インフルエンザ、いつ受けたらいいのか、妊娠を考えている方には悩ましい問題ですね。
今、これについて記事を執筆中ですが、この記事にもあるように、日本の厚労省は、妊娠初期の安全性が確認されていない、としていますが、国際的には妊娠、赤ちゃんへの影響がなく、むしろ妊娠中に重症化する可能性があるため、妊娠を考えている方にも積極的に接種が勧められています。

この点から、排卵期でも、妊娠初期でもいつでもお受けいただいて構わないと思いますが、日本の方針に則れば、月経中くらいに接種するのが安全だと思います。

実際に接種する際には医師の問診があると思いますので、よく相談されてからお受け下さい。

また分からない点がありましたら、遠慮なくお書き下さいね。
Posted by 桜井明弘 at 2008年11月20日 13:04
こんばんは。インフルエンザのお話しを読んで詳しく書かれており、少し理解ができました。
私はインフルエンザを接種してから1週間後に妊娠しているコトがわかりました。妊娠をこれから考えている方も問題はないとありますが、その中に私はあてはまるのでしょうか?
Posted by ひかり at 2008年11月21日 18:39
ひかりさん、コメントありがとうございます。

ご心配でしょうが、ひかりさんもお分かりのように、上に書いたように危険性はほとんどない、と考えて差し支えないと思います。

また分からない点などありましたら、遠慮なく書き込んでください。
Posted by 桜井明弘 at 2008年11月22日 00:40
ありがとうございました。また分からない事があればよろしくお願いします。
Posted by ひかり at 2008年11月22日 00:54
妊娠初期の6週から7週にインフルエンザにかかってしまいました。
インフルエンザワクチンは3ヶ月前に接種していましたが、主人がインフルエンザになり私が発症してしまいました。
熱は38度が2日間つづき妊娠初期のため内科では薬は処方されませんでした。体の節々が痛くなる事はなく食欲も比較的あり熱が下がってからもあまりだるさはありません。むしろつわりの方が気になります。しかしインフルエンザウィルスと熱が胎児に影響がどれくらいあるのか心配です。
Posted by るみ at 2009年02月22日 14:15
るみさん、こんばんは。今年はワクチンを接種してもインフルエンザに罹る方が多かった気がします。ただ、ワクチンを受けなかった方と比べると、軽症だったようです。

それにしても妊娠中の罹患はさぞかし心配だと思います。今では快方に向かわれているようですが、インフルエンザワクチンによる妊娠への影響はほとんど考えなくていいと思います。発熱は確かに胎児への影響がありますが、諸説ある中でもおおむね39度くらいより上が多いようで、実際の体温と赤ちゃんへの影響ははっきりしていないこともあります。38度くらいですと、ご心配要らないと思います。
Posted by 桜井明弘 at 2009年02月23日 00:01
こんにちゎクローバー
これから妊娠を考えているのですが、インフルエンザ予防注射を今、接種すると、何ヵ月かあけないといけないのですかぁグッド(上向き矢印)グッド(上向き矢印)exclamation&question
Posted by のり at 2010年10月20日 11:24
のりさん、こんにちは。

上の方達への回答と同様ですが、現在では妊娠への影響は考えにくいので、いつでも接種可能、いつでも妊娠可能、と考えています。
Posted by 桜井明弘 at 2010年10月20日 13:33
返事ぁりがとぉ〜ございましたわーい(嬉しい顔)不安が軽減しましたexclamation×2もぅ〜1ついいですかぁグッド(上向き矢印)グッド(上向き矢印)
いつでも接種可能ってことゎ、接種したその月に妊娠しても大丈夫ですかぁグッド(上向き矢印)exclamation&question
Posted by のり at 2010年10月21日 11:01
何度もすみません(´0`)

今年のゎ季節型と新型、混合の接種ですが、新型が混ざってても、いつ妊娠しても可能なのでしょうかexclamation&question教えてくださぃ(^-^)
Posted by のり at 2010年10月21日 11:10
のりさん、二つのご質問、いずれもその通りです。安心してください。
Posted by 桜井明弘 at 2010年10月22日 00:00
ぁりがとぉ〜ございました(^-^)気にすることなく、予防注射できます☆
Posted by のり at 2010年10月22日 02:50
今日、主人がインフルエンザの注射をしてきたのですが妊娠しても子供に影響はありませんか?
Posted by ゆき at 2010年11月12日 02:40
ゆきさん、もちろんです。
ご主人のみならず、奥様が妊娠しても、現在の考えでは、妊娠を希望されている方、妊娠をしている方はどの週数でも、また授乳中も接種することが出来ます。むしろ推奨されています。
Posted by 桜井明弘 at 2010年11月14日 22:45
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