2014年10月07日

クラミジア感染症

クラミジア、とは性行為感染症(STD)の一つです。

正確にはクラミジア・トラコマチスという種類で、肺炎の原因となるクラミジア・シッタシとは異なり、性器や咽頭(のど)に感染します。

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性行為感染症、いわゆる性病の一つ。性交でしか感染しません。
コンドームを正しく、つまり性交渉の最初から装着することで、男女ともに感染を予防することが出来ますが、最近ではオーラルセックスが広まっているため、性交渉ではコンドームを使ってていても、咽頭クラミジアの感染が大変増えてきています。

症状は、性器クラミジアの場合、初期は子宮頚部に感染し、おりものが増える、ただしこれは自覚されないことが多いようです。次に、上行性感染といって、子宮の内腔を通過し卵管に至る。ここで卵管炎を起こすこともあり、卵管閉塞の原因となります。
さらに感染が進むと卵管采から腹腔内にもれ、卵管周囲炎を起こし、腹痛の原因になります。炎症が進むと卵管周囲癒着が形成され、卵管閉塞と同様に不妊の原因となります。クラミジアと不妊の関係は、これが一番多いです。
感染はもっと進むことがあり、驚くべきことに肝臓の周囲にまで広がり、肝周囲炎を起こします。Fitz-Hugh-Curtis症候群、として知られています。右季肋部、あばら骨のした辺りの痛みの原因となります。

咽頭クラミジアではかなり強い喉の痛みを自覚しますが、風邪とは異なり全身症状はほとんどありません。

このように女性では様々な病態を引き起こし、また諸症状の原因となりますが、男性は尿道炎、排尿時や射精時に膿が出ることや痛みが出ることがあります。しかし不顕性といって、無症状のことも多いようです。
また、男性不妊の原因にもなることがあるようですが、多くの場合はカップルでクラミジア感染しても、女性が損ですね。

またクラミジアは大切な赤ちゃんに産道感染を引き起こします。つまり出産中に赤ちゃんにうつるのです。軽症であれば結膜炎、重症になると肺炎の原因になり、未熟児や低出生体重時の場合、生命を危険にさらします。

さて、皆さんにお伝えしたいのはクラミジア感染が思ったより拡がっている、ということです。当院でも不妊症や下腹痛がある患者さんにはクラミジア検査をお勧めしていますが、1割以上の方で陽性となります。特に10代、20代、を中心に40歳代まで感染していることが見つかります。
風俗業の方では、検査をすると非常に陽性率が高くなります。

また上に書いたように赤ちゃんへの感染を予防するため、妊娠初期に検査をします。
さらに同時に淋菌やHPV感染をしていることがあるため、クラミジアと淋菌を同時に測れる検査をしたり、子宮頚がん検査をお勧めしています。

検査法は簡単ですが、内診の必要があります。子宮頚がん検査と同じように子宮頚部を綿棒でこするだけです。痛みはありません。
出血しているときは菌が見つからないことがあるため、生理中、不正出血をしているときは検査を避けます。

一方で、男性の検査は尿検査や尿道を綿棒でこすらなければならず、これは相当な痛みが伴うのに対して、偽陰性率が高いとされています。つまり、菌を持っていても陰性、となってしまうのです。そのためパートナーである女性が陽性であれば、男性も治療を開始します。

さて治療法は、数年前によい薬が出ました。ジスロマックという内服薬で、マクロライドという種類に含まれる抗生物質です。
それまではクラリスロマイシン、商品名ではクラリス、クラリシッドという薬が主流でした。しかし、2週間の間内服しなりませんでした。
ジスロマックは一度に250mg錠を4錠内服しなければなりませんが1回で済みます。我々臨床家は薬のコンプライアンス、といって、如何に薬をきちんと飲んでもらえるか、飲みやすさはどうか、ということも重要視しています。
マクロライド系抗生物質は妊娠中にも安全性が確認されていますから、妊婦さんに見つかっても同じ治療で構いません。

ジスロマックは薬の効果が大体7〜10日持続するそうで、理論的にはこの間にクラミジアは治療できるはずなのですが、全てが理論通りにいかないのが人の身体。製薬会社の発表でも除菌率は90%ほど。ある発表によると60%くらいではないか、とのこと。そのため、内服後2週間くらいで再検査が必要です。

いずれにしても、STDの場合、カップルで治療しなければ意味がありません。
女性が治療しても、男性が治療していなければ、折角除菌されてもまたうつされてしまいます。ですからお二人同時に治療をしてください、そして上に書いた際検査の結果が出るまでは、赤ちゃんが欲しくてもコンドームをつけてください。

赤ちゃんをまだ望んでいないカップルは、必ず正しくコンドームを着けて性交渉をして下さい。
これは、マナーです。

(初出:2007年9月2日)
(補筆修正:2014年10月7日)


posted by 桜井明弘 at 08:07| Comment(10) | TrackBack(7) | 産婦人科一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たまに書き込みさせていただいている者です。
今回は書きづらいことだし、知り合いにもたくさん
このブログを広めてしまったので、匿名希望です。
クラミジアの記事を読んで
なんだか恐くなりました。STD関連で
コンジローマについても書いてほしいです。
STDと聞いただけで、すごく悪いイメージが
あるので、コンジローマと診断された時は
かなりショックでした。
また、いくつか疑問も出てきました。
街中の病院で見てもらったときは
何でもなかったのですが、精密検査を受けるために
賛育会に行った時(その間1週間)には
発病していました。そんな短期間で
症状が出てくるものなのですか?
その後すぐに、彼氏にも病院に行ってもらいましたが
彼は陰性でした。なので、感染源は彼しか
考えられないのですが、彼は絶対自分じゃないと
言い張ってます。症状が出ていない時に
検査をしてもわからないのでしょうか?
完璧には治らない病気と聞きましたが
お薬は病院に行かないと塗ってもらえないし
特効薬みたいなのないんですかね?
Posted by 匿名 at 2007年09月04日 23:16
匿名さん、今晩は。診断されたときはショックだったでしょうね。性交渉は経験があっても、まさか自分が? と、STDである病気は嫌な思いをされたと思います。我々も患者さんに説明するときに、慎重になります。

コンジローマはHPVというウィルスによって起こされます。コンジローマについて、また改めてブログに書かせて頂きますが、ここでは匿名さんに関連したことだけ書きます。

まず、コンジローマの診断ですが、腟の入り口に出来ることが多いですが、腟は微細なひだが沢山あり、一見正常なのか、コンジローマなのかわからないこともあります。よって、前の先生が見逃した、とか、そのときには無かった、ということは一概に言えないと思います。
また女性に比べ、男性のほうが病変が出にくいことが多いと思います。どちらが感染源であったかは、検査をしても、お話を伺っても分からないことがほとんどです。匿名さんたちの場合も、医師の立場からどちら、とは断定できません。大切なのは、感染を拡げさせないことと、ご自身の治療です。
説明があったかもしれませんが、コンジローマは病変からHPVが排出されるので、病変がある時期は感染性があります。ですから治療が終了するまでの間、性交はコンドームを使用してください。また、治療しないで放置すると、病変が大きくなったり腟内にまで拡がる事があります。早期の治療が早い治癒につながります。
Posted by 桜井明弘 at 2007年09月06日 23:06
 ご回答ありがとうございます。
なるほどー。確かに私も診断された後で
自分で見てもどこにあるかわからなかったので
鏡で教えてもらいました。
つまり、男女共に病変が出ているときに
検査をしないと、わからないということですよね?
Posted by 匿名 at 2007年09月10日 00:13
匿名さん、こんばんは。
その通りです。HPVウィルスの有無は診ても分かりませんが、病変が出来ているときには感染性があります。
Posted by 桜井明弘 at 2007年09月10日 01:24
はじめまして。以前クラミジアにかかってました。治ったか、再検査に行きたいのですが、怖いです。
埼玉なので、横浜に通うのは遠いか(T_T)思うのでどこか紹介していただけませんか??
また、欲を言うと、一緒に治すためにも、パートナーを連れて行きたいです。
よろしくお願いします。
Posted by 匿名 at 2008年01月28日 14:37
匿名さん、こんばんは。
差し支えない範囲で埼玉県のどのあたりか教えていただけますか?

最寄の先生をご紹介させていただきます。
パートナーの方も一緒に受診で治療をしてもらえるか、事前に問い合わせが必要と思います。
Posted by 桜井明弘 at 2008年01月29日 02:02
クラミジアになってしまったのですがジスロマックを1日四錠服用するだけでいいと言われました。いつからセックス出来るのでしょうか?次の日とかから大丈夫なんですかねぇ?
Posted by at 2008年11月23日 08:02
ジスロマックについての書き込みですが、上の記事にも書いているように4錠内服のみでいいのですが、2週間後に治療効果のため再検査が必要です。
セックスについてですが、コンドームを使用しない条件であれば、クラミジアの陰性化を確認しなければなりません。
パートナーの治療状況にもよりますが、お二人の治療が終了してから、ということになります。
コンドーム使用の場合は、いつからでも構いません。
Posted by 桜井明弘 at 2008年11月24日 22:52

先生こんにちは。
以前カンジダの質問をしたあすかです。
今度は自覚症状は全くないのですがバイ菌がいるといわれ、フラジール腟錠とハイセチン腟錠を処方されました。
腟錠をいれるとピンクのおりものがでたり、腟内が染みるような痛みがあります。
入れていない方が楽でした…

その後診察してもらうと、クラミジアが陽性だったようで、ジスロマックを4錠一度に服用し、二週間後に再検査と言われました。

ジスロマックを飲んだその日に激しい下痢をしました、その後から左下腹部あたりに痛みがあります。
婦人科の先生には子宮ガン検診を受けろとも言われていて不安です。
生理が終わったのにジスロマックをのんでから下腹部の鈍い痛みがあるのは何なのでしょうか…
腸の痛みなのか子宮の痛みなのかわからないので怖いです。
Posted by at 2009年09月30日 14:37
あすかさん、おはようございます。

恐らく下痢は抗生物質であるジスロマックの作用ではないでしょうか。
左下腹痛もその影響であるとも考えられますね。

このブログにもあるように、子宮頚がんはHPVというウィルスが原因で、HPVの感染も性交によってもたらされます。
性交経験のある女性であれば、是非、子宮頚がん検査、1年に1度はお受けくださいね。

癌のための痛みは相当進行しないと出ません。今の痛みの原因として、子宮頚がんは考えにくいと思います。
Posted by 桜井明弘 at 2009年10月01日 09:57
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