2007年08月17日

単一胚細胞移植(SET) 〜多胎妊娠の予防〜

「高度生殖医療のコンセプト」でも述べましたが、高度生殖医療の合併症とも言うべき多胎妊娠を防ぐため、当クリニックでは単一胚(細胞)移植(SET)を基本的に行います。

多胎妊娠とは、双子(ふたご)以上の妊娠のことです。自然妊娠でも1%の方が双胎妊娠(ふたご)となります。
多胎妊娠は、一面では確かに喜ばしいです。一度に可愛い赤ちゃんを二人授かったり、妊娠は大変だから一回で二人欲しい、なるべく沢山子供を産みたいので、双子だったらなおさらよい、色々な意見がありますが、我々産科医の立場からすると、妊娠中のリスクを問題視せざるを得ません。

多胎妊娠の妊娠中のトラブル・リスク、双子は2倍、三つ子は3倍??

私は双子は10倍、三つ子は100倍、と説明しています。

・多胎妊娠では、妊娠初期から流産率が高くなります。
・子宮頚管(子宮の出口)が開く、子宮頚管無力症も増えます。
・安定期に入ってからも、切迫早産や、実際に早産になることが多く、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の合併は大変重要です。
・マイナートラブルとして、貧血が重くなる傾向もあります。

・満期に入ってから、何より、お腹が大きくなるのがとても大変、二人の赤ちゃんを支えながら過ごす苦労があります。
・赤ちゃんは単胎妊娠と比べ、体重が軽くなる傾向(子宮内胎児発育遅延)があり、満期で産まれても小さいことがあります。
・分娩に際して、合併症のある方は、経腟分娩、帝王切開の選択に迫られます。双胎妊娠では、必ずしも帝王切開となるわけではありませんが、経腟分娩のリスクが高くなります。といって、帝王切開のリスクが低いと言う意味ではありません。
・品胎妊娠では必ず帝王切開となります。

このように、多胎妊娠では、様々なトラブルが生じる、リスクが高くなることがあり、未然に防げたら、と思います。
高度生殖医療では、移植する胚(受精卵)の数を調節することが出来ます。胚移植する受精卵が多ければ多いほど単純に妊娠率は高くなりますが、多胎妊娠の発生と妊娠する赤ちゃんの数も多くなります。
これまで受精卵3個胚移植の時代から2個へ、さらに現在では単一胚移植(SET)が主流となりつつあります。

当クリニックでは「移植あたりの妊娠率が低下しても、採卵あたりの妊娠率は低下させない、多胎妊娠を極力防ぐ」ことを目標に、原則として単一胚細胞移植(SET)を行います。
これまで多くの高度生殖医療の成績は、胚移植あたりの妊娠率が中心でした。しかし、実際の治療でリスクが高く、患者さんへの負担を強いるのは、採卵周期です。余った受精卵は凍結保存することにより、後の周期で解凍し、移植することが出来ます。採卵あたりの妊娠率、への発想の転換です。

一つの受精卵の胚移植では妊娠が成立しにくい、と思われる方もあると思います。これまでの治療経過など、患者さんの状態に合わせて胚移植については相談していきたいと思います。


posted by 桜井明弘 at 00:28| Comment(0) | TrackBack(2) | 高度生殖医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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