2014年07月01日

混合診療枠拡大への期待 〜高度生殖医療への保険診療の併用〜

「骨太の方針」「成長戦略」と、ニュースや新聞で目に飛び込んできます。

この中で「混合診療枠の拡大」と言うものがありますが、保険診療と自費診療(自由診療)を併用しても構わない、と言うものです。

現在の保険診療では、自費診療を併用した場合、保険で行う診療費や検査、薬剤代など、一切が自費診療となるため、患者さんの負担は単純に3倍くらいになります。

不妊治療を行っている患者さんにはよくご理解頂けていると思いますが、治療、検査、薬剤には、保険適応が無いものが少なくありません。
これは必要性、有効性が認められない、と理由なのですが、例えば不妊治療では超音波検査は必須ですし、血液検査も繰り返し行わなければならない場合もあります。

また、体外受精など高度生殖医療では、一切の治療にかかわる検査、薬剤が自費、と言うことになっており、ただでさえ高額な治療をお受けになっている患者さんの負担は増える一方です。

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医療費が高騰し続けて、日本の国民皆保険制度が破綻寸前、と言うのはご存知かと思います。厚労省、財務省はこれを何とかしなければ、という思いがあります。

こんなデータがあります。
2011年の国民医療費の総額は38兆6000億円、これが2020年には30%も支出が増加する見込み、だそうです。

混合診療の部分的な解禁により、可能な範囲で自費診療を行うようになれば、国や保険機関からの支出が減少することも見込んでいるのでしょう。

他にも混合診療の拡大には、患者さんにとってもメリットがあります。
現在の日本では新薬の認可が大変遅く、諸先進国で当たり前に使われている薬剤が、なかなか認可されない、と言う問題があります。
ものすごく例外的に、皮膚がんの一種、悪性黒色腫の抗がん剤が、世界に先駆けて日本で認可される見通し、との明るいニュースも飛び込んできましたが。

認可されていない新薬が使えると言うことは、患者さんにとって治療法の選択肢が増加する、とても良いことです。

一方で、認可されない、つまり治療効果がまだ明らかでない薬剤、治療法が氾濫する、これが厚労省や日本医師会の心配点で、国民の健康を守る、という大前提が揺るぎかねないのです。


話は元に戻りますが、高度生殖医療に保険が適応されないこと自体が問題ではあります。
不妊症は患者さん個人の問題のみならず、人口減という国家、国民の問題でもあるからです。

採卵や体外受精、体外培養など、それぞれに様々な治療法があり、確かに標準化が難しい医療です。つまり保険適応として保険点数が付けられない部分です。
しかしながら、治療の期間に使用する薬剤や血液検査など、施設間で普遍的に用いられているものは多く、せめてこれら診療、検査、投薬に関して、保険適応されたら、不妊患者さんにとって大きな負担軽減となると思います。

我々のこの考え、思いを政治に訴えかけてくれている団体があります。
NPO法人Fineさんで、こちらのページで署名活動を紹介されています。是非一度ご覧下さい。

今回の骨太の方針では、是非とも高度生殖医療に関する混合診療の拡大を認めて欲しいと思います。
posted by 桜井明弘 at 19:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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