2015年02月06日

未婚女性の卵子凍結について 〜2015年2月6日補筆修正〜

2013年8月23日、日本生殖医学会が、未受精の卵子を凍結保存(卵子凍結)することを、独身女性にも認める、とした指針案を示し、また昨日、浦安市が順天堂浦安病院において行う卵子凍結費用の一部負担を検討していることが報道されました。

まず、現在の状況からは、原則、卵子の凍結は、不妊治療において婚姻関係にある夫婦の受精卵を凍結保存することと、今後がん治療などで卵巣機能が損なわれる可能性がある場合に日本産科婦人科学会によって認められており、まだ独身女性の卵子凍結は完全なゴーサインが示されたわけではありませんが、同学会は容認しています。
もちろん、これらに法的な規制は、未だに何ら整備されていません。

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卵子は女性の卵巣に生まれつき備わっており、毎月少しずつ消費されて成熟した状態で排卵され、配偶者との精子と受精すると受精卵となり、やがては赤ちゃんになるわけですが、高度生殖医療においては、様々な理由でご主人との受精卵を凍結保存しておくことがあります。

しかしながら、高度生殖医療の技術を用いるのは、戸籍上の夫婦関係にあることが大前提で、つまり未婚女性の未受精卵子はその技術を用いる対象外となっていたのです。

では、現代の女性の状況はいかがでしょうか。

男女雇用機会均等法施行以降、施行以前と比べて、格段に女性の地位は向上し、社会的責任、地位もご自身のお母さまやお祖母さまの世代とは大きく異なっているのではないでしょうか。

男性と同じく就職し、或いは同期の男性よりも重用され、給与面でも大きなものを手にしている女性もいらっしゃるかも知れません。

就職してから十数年、直向きに会社のため、社会のため、そして自身のために走り続け、そろそろ伴侶に恵まれ、或いはいい機会だと子作りに前向きになった方は?

しかし、女性の生殖能力、つまり子どもを作る能力は、平均的に35歳以降は明らかにそれまでと異なってくる、端的に申せば老化してくることをご存知でしょうか。これは貴女も例外ではありません。

卵子・卵巣の老化は、ここでもこれまで度々触れてきましたし、最近ではメディアでもよく取り上げられるようになったため、とても注目されています。

さて、皆さんが今すぐに妊娠を考えられる、子作りすることが出来るのであれば、卵子凍結は関係ないことですが、まだパートナーに巡り会えず、数年の単位で妊娠は直ぐには望まない場合、現在の卵子を将来に備えてとっておく、これが「卵子凍結」です。

繰り返しますが、現在のご主人との間とのお子さんを、将来的に考えるのであれば、精子と卵子を一つに受精させた、受精卵凍結、これは今の高度生殖医療でも行われることです。

当院でもお問い合わせ頂くことが多くなっていますが、現在上に書いたように、日本生殖医学会が指針「案」をまとめているところで、広く意見を募っています。

その要件として、

・40歳以降には勧められない。
・使用して妊娠を試みるのは45歳以上は勧めない。

とあります。もちろん今後この要件は改められていく可能性もありますが、当院でも41歳以降の妊娠率が非常に低下していますし、45歳以上の高齢妊娠、出産のリスクは、母体の生命さえ左右しかねません。

要約すると、潜在的な社会的ニーズは大きく、いよいよ自治体が主導して卵子凍結が本格化する可能性が高くなってきました。

(初出:2013年9月23日)
(補筆修正:2014年7月11日)
(補筆修正:2014年12月22日)
(補筆修正:2015年2月6日)
posted by 桜井明弘 at 09:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 高度生殖医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
宋先生のブログを参照下さい。女子目線は必要ですよ。
オススメです。
http://s.ameblo.jp/son-mihyon/entry-11713877300.html
Posted by 慎二 at 2013年11月30日 18:35
慎二さん、コメントありがとうございます。

宋先生は私も親しくさせて頂いており、この記事も読ませてもらっていました。

私も卵子凍結を否定しているものでは無く、現代女性の晩婚化、晩産化の中、社会変革を待つ余裕がない中で、最も即効性があり、効果的な方法と思います。

ただ、残念ながら公的に認められている方法ではなく、またこれが報道された後で、安易に卵子凍結を考えている患者さんの来院が一時的に増え、お問い合わせも多かったため、この複雑な内容をお一人お一人に伝えることが難しくなりこの様な記事にしたものです。

慎二さんは先進的で優しい方と察します。

しかしながら卵子凍結にはリスクとコストがかかること、ご存知とは思いますが、安易に出来る方法ではないのですよ、と言うことをお伝えしたかったのです。

色々ディスカッション出来るかも知れません。頂いたコメントだけでは慎二さんがどのような方かも分かりかねますので、是非ともFBなどでご連絡頂けたら、と思います。
Posted by 桜井明弘 at 2013年11月30日 20:46
初めまして。32歳女性、20歳の時にチョコレート嚢腫のため一部切除手術を受けました。2年前に再発し、現在1年半ほどディナゲスト服用中です。先月の診察では、腫瘍がかなり縮小しエコーで見えないほどになったと言われ、1日1回に減量になりました。
質問させて頂きたいのは、この状態でも卵子の採取、保存は可能(有用)でしょうか?
現在交際相手はおりますが、まだ結婚予定はありせん。将来的には挙児希望ですが、病気のこと、年齢のことを考えると少しでも若い細胞を残しておいた方がよいのか、と考えています。
着床率、リスク、費用は勉強したつもりです。
先生でしたら卵子保存をお勧めになりますでしょうか?

あともう1点、もし今後自然妊娠を望む場合、ディナゲスト服用中止後すぐ妊娠可能でしょうか?
先日、健康診断時に、長期服用により卵巣や子宮の機能低下で妊娠しづらくなると言われたことも気になっています。(主治医は問題ないと仰いますが、健康診断の時の先生が、もと某国立大婦人科教授の経歴をお持ちで、過去に1年以上月経を止めたことで閉経に至った症例を何例も見たと言われました)
お忙しい中断片的な情報で申し訳ありませんが、先生のご見解を伺えたら幸いです。
Posted by まる at 2015年04月22日 13:28
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