それはつい4月に「定期接種」化された、つまり法律で女子に接種助成をすることが決められた「子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)」が、2ヶ月余りで、当面「積極的に推奨しない」とされたものです。
HPVワクチンによる副反応被害を受けられた方には心よりお見舞い申し上げます。
HPVワクチンは、2001年より臨床治験が始まり、2007年に発売となり本格的接種が開始されました。
2009年には日本でも承認され、世界130カ国での接種が行われていますが、100番目の承認国となりました。
以来6年間、世界各国で接種が続けられ、世界では推定日本でも推定300万人の方に接種が行われています。
インフルエンザワクチンなどと異なり、子宮頸がんは流行するタイプの病気ではありませんから、その予防効果はまだ未知、とも解釈されますが、既に9年間以上、接種した方たちの中に、このワクチンが予防しているHPV 16、18という型による子宮頸がんや、その前がん病変の報告は見られていません。
HPVワクチンの定期接種化により、全ての女子が接種するわけではないにしろ、日本国内でも大幅な子宮頸がん発症の減少が見込まれています。
これは、接種した当人に限らず、接種することによりHPVを有する人が減少する、HPVに感染する人が少なくなる、といった、ワクチンに期待される社会の中で感染が拡大することの予防に寄与することも期待されているからです。
今回、「積極的に推奨しない」とされたのは、副作用の実態が明らかではないため、とされ、今後調査を行った後に再度評価をする、とのことです。
副作用として重篤なものは、接種後の筋肉痛や神経痛の中でも重症なもので、全身性に拡がる原因不明の疼痛がみられたことです。「複合性局所疼痛症候群」と呼ばれ、医療界でも新しい概念の病気で、まだ有効な治療法がないようです。
その他、HPVワクチンによる失神、疼痛、接種部位の発赤・腫れなど、1200例の副作用報告、うち重篤なものが100例余りなされていますが、このワクチンとの因果関係がはっきりしていて、なおかつ重篤であるものは限られています。
今後厚労省が最終的なステートメントを発表する予定、とのことですが、日本のワクチン行政はこれまでも右往左往。
最大の課題はワクチンによる、或いはワクチン接種によるかもしれない方たちへの救済措置が疎かにされてきたこと。
疑わしきは補償する、というスタンスでなければ、この国にワクチンは根付かないと思います。
このワクチンによる被害の救済を怠り、HPVワクチンをお蔵入りさせてしまったら、インフルエンザ、麻疹、風疹の轍を踏むだけだと思います。
当院ではこれまで通りHPVワクチンの接種を推奨していきます。
是非とも国と国民の叡智に期待したいと思います。