前回の記事の続編で、そのころから考えていたのですが、友人である池上氏が発刊している、メルマガにもこの話題が取り上げられました。
血液検査の中に、肝臓の機能があります。一般的には、肝臓がどれくらいダメージを受けているか、をGOT(AST)、GPT(ALT)などの数値(異常な高値)で判断します。
アルコールや肝炎ウィルス、脂肪肝とともに、異常の原因としてよく経験するのが、薬剤によるものです。
上に挙げたように、肝機能異常がみられる患者さんは、大抵その原因が予想できるのですが、何人か原因を特定しにくかった患者さんを経験しました。
ある患者さんの例は...。
20歳代の女性で、基礎疾患は何もない健康な方、卵巣嚢腫があり腹腔鏡手術のため術前検査を行いました。これには肝臓に限らず、心臓、腎臓、肺など、生きるうえでの重要な臓器、ここで手術や麻酔を安全に受けるため、必要な検査ですが、その検査で肝機能異常が見つかりました。当然上の原因を考えるのですが、全く思い当たる節がない。「何か薬を飲んでいませんか? 内科など、どんな薬でも教えてください」、と尋ねても、何も飲んではいないとの答え。ただ異常がみられ、その原因が分からないとすると、これから徐々に悪くなる可能性もあり、このままでは特に全身麻酔の影響で術後に悪化することもあるので、手術が行えない旨を伝えました。
帰り際に彼女が思い出したように、「最近太っちゃったので、やせるためにサプリ飲んでますが」、とのこと。それかも知れない、と考え、とりあえずそのサプリを飲むのをやめてもらい、肝機能の回復を考えて、1月近く手術を延期し、肝機能を再検査しました。
数週間後、案の定彼女の肝機能は全く正常化、これだけでそのサプリが原因、とは断定しませんが、疑いは濃厚ですよね。
数年前、輸入された健康食品で、重症な肝機能異常が多くの人に発症したことを記憶されてる方もいらっしゃるかも知れません。
上の池上氏のメルマガに詳しいですが、健康食品やサプリメントは、医薬品ではなく、栄養機能食品、または保健機能食品とされています。医薬品が動物や健康な人に投与したり、患者さんに使われるようになってからも、何度も何度も安全性を確認されているのに対して、 はこれらの検査、報告が義務付けられていません。時々粗悪なサプリなど、報道されていますね。
そんな悪いサプリなどばかりでは決してありませんが、薬は副作用があるから怖い、それに対してサプリや健康食品は薬じゃないから安全、といった「神話」があります。この「神話」は、一般的には大変受け入れやすいことは理解できますが、医学的にはむしろ逆ではないか、と私は思っています。