2006年10月25日

周産期・小児医療のインフラ整備

小児科医の減少が報道されました。
http://www.asahi.com/national/update/1023/TKY200610230400.html

私は産婦人科医なので痛烈に産婦人科医の減少と産科診療を取り巻く社会からの圧力を日々感じながら仕事をしており、このブログはことある事にこれを唱えています。

報道によれば、大都市から周辺の県に新人小児科医が誕生している、とされ、子供が多い地域に適正に配置されて来たのかな、と好意的にも取れます。
「配置」というと行政の為せる技、とも取られますが、その実は就職する新人小児科医個人の動向によるものです。

様々なインフラが、この成熟したはずの国家でも必要ではありますが、医療界、医療費抑制を唱えるだけでなく、老人医療・福祉施設と両輪をなすように、周産期・小児医療にも投資すべきだと思っています。
「産めない、育てられない」は、やがて国家の破綻を来すこと必至。そもそも国の基盤ではないでしょうか。

医療界では、勤務形態が厳しく、訴訟も多いハイリスク・ローリターンの小児科、麻酔科、産婦人科。
そろそろ行政主導でこれらを整備しなければ本当に危機的な状況になってきています。

全ての国民が老人になり、福祉を受ける立場になります。
産まない、育てない人も、国の行く末を考え、この領域に目を向けて欲しいと思います。

posted by 桜井明弘 at 05:37| Comment(8) | TrackBack(2) | 産婦人科医の医療日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この記事の最後の一行は、「産めなかった」私にはぐさっと来ました。きっと私だけじゃないはず。
もうちょっと言葉に気を付けて下さい。
Posted by junko at 2006年10月28日 00:43
junkoさん、コメント有り難う御座います。
恐らく誤解を招く表現だと思い、記事作成の際にも注意したつもりで、決して「産めなかった」とは書いていません。
上の「産めない、育てられない」はお産難民や小児救急施設の不足と言った現代日本の産科・小児科を取り巻く現況を表現しました。産む施設がない、育てるためのサポートが足りない、は、ひいては「産めない、育てられない」と感じ、「産まない、育てない」になるのではないかと思います。
下の、恐らくご指摘の部分でしょうが、「産まない、育てない人」にも注目して頂きたい、と言う願いは、これから産もうと考えている人に限らず、産み終えた人も、老人福祉を受ける方も、全ての国民の議論にして頂きたい、と言う意味です。
と、補足しても同じでしょうか。
説明が不足しており、不快な気持ちにさせてしまい、済みませんでした。
Posted by 桜井明弘 at 2006年10月28日 01:03
以前森前首相が、子供を産んでない人は税金を多く払え、といったような発言をした事があり、悔し涙が止まらなかった。子供を産む為に治療や手術をした人は完全に無視されているのか。
同じ男性でもさすが先生は違うんだ、とこのブログを読むのを楽しみにしてました。
が、「産まない人」も「産めなかった人」も同じ。「産まなかった人」です。あの時の悔しさを思い出し、結局はそういう観点で区別されたような寂しい気持ちになりました。
とは言ってもこのブログは先生のもの、発言の自由もありますよね、すみません。
Futabinさんのように辛い手術をしても結局出産という幸せに繋がった人と違い、治療をしても結局はだめだった人はひねくれ者。
何に対しても寛容な心が持てず、どんな些細な事も言葉の暴力のように感じてしまうのです。
Posted by junko at 2006年10月28日 10:14
junkoさん、私も、あなたの立場に賛成です。生んだ子どもの数によって税金を考慮せよ、若いときに青春を謳歌して、年をとってから面倒をみてくれというのはいかがなものか、と、この発言をまさに地で行くような生き方を私はしています。でも、森元首相のこの発言のあと、たくさんのフェミニストたちが国会議事堂の前でのデモ行進を報道したのは、私の知る限り日本では、小規模なフェミニズム雑誌の関係者だけで、海外の報道のほうが大きなニュースとして扱っていました。
junkoさん、私はあなたがひねくれ者だなんてとても思えません。あなたこそ、日本の男社会の犠牲者だと私は思います。あなたが男社会の犠牲者だからこそ、どんな些細なことでも、暴力と感じるのです。
このブログに限らず、あちこちの報道で、産婦人科の問題を報道するたびに、国主体で改革を、といっています。でも、特に日本の政治家の中には、まだまだ女性に対して「差別と偏見」をあからさまに表現する人がいる限り、国主体の改革なんて望めるのか?とよく思います。
少子化は女性だけのせいと私は思っていません。景気回復の実感をもてず、ワーキングプアと呼ばれる男性(もちろん女性も)が増加して、結婚出産なんて夢のまた夢、その日一日を暮らすだけで頭がいっぱい、これでは社会不安を招きます。社会不安だって少子化の一因と私は思うし、少子化対策の一環として雇用対策をしてほしいとたまに思います。それなのに、子どもを産めない理由をいつも女性ばかりのせいにする(と私には思える)男社会に対して、いつも私は怒りを覚えるし、どこかでいつも私は激しく抵抗したいと強く思っています。可能な限りジェンダーの視点で考えたいと思いますし、それが産婦人科の分野だったらなおさらです。
Posted by hiromi at 2006年10月29日 00:26
少子化が叫ばれ、様々な対策、施策があるのでしょうが、その中の一つに「不妊治療」への助成が挙げられます。
非常に微妙な問題ですが、私も少子化対策のもっと根本にあるのは社会構造の改革だと思います。
赤ちゃんが出来ない方に助成して一人ども多くの方に妊娠して欲しい、これは一見、的を射ているように聞こえますが、子供を作ろうと思えない環境の方が、余程少子化の原因として重大だと思います。

私は日本の少子化を非常に憂います。近い将来、人口ピラミッドがどうなるという以前に、人口が減少しながらもその国の豊かさを維持するのが難しいだろう、と簡単に想像出来ます。
日本の狭い国土に世界で第10位の人口を擁していること自体がこれまで過剰であり、今後国土にそぐう人口に収束する、と予測されたものも読みました。

いずれにせよ、少子高齢化が健全な社会体制であるとは思えず、少子化対策は女性問題ではなく、「産む、育てる」環境整備が根本的解決の鍵となると思います。
Posted by 桜井明弘 at 2006年10月29日 01:22
私もこの件について残念に思っておりました。でも何か、先生に物申すのが憚られ、忘れようとしました。でも確かにここで黙ってしまう事がいけないんだな、、とjunkoさんやhiromiさんの意見を読んで思いました。森発言に関しては私も怒りに震えました。産みたいと思いつつまだ実現していない女性のほとんどが同じように傷ついたと思います。それから、森発言に関係なく、先生は私達の味方でいてくれるだけではなく、守ってくれるとどこかで信じていたような気がします。毎日何十人、年間何百人という女性と接し、体の不調や悩みを聞き、女性以上に女性の気持ちを分かってくれているものだと。その先生が、意図はどうであれ「産まない人」という表現を使われたことが残念でなりませんでした。
Posted by at 2006年10月29日 14:11
何だか私と森首相が同等の発言をしたかのような流れになってしまいましたね。文章表現はとても難しいと教えられました。
これからもご意見、お願いします。
Posted by 桜井明弘 at 2006年10月29日 17:03
hiromiさん、 ありがとう。
Posted by junko at 2006年10月31日 17:20
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