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前回は体外受精など高度生殖医療で行われる卵巣刺激法について、簡単に概論をお話ししました。
今回からはその卵巣刺激法を少しずつかいつまんで解説して行きます。
前回のおさらいですが、生殖医療(不妊治療)では、排卵すること、卵胞が発育することは、妊娠するために最低限必要な事で、内服薬や注射剤の排卵誘発剤が用いられ、排卵誘発剤は、内服薬が軽い刺激で、注射剤の方が強い刺激になります。
今回解説するのは、最も歴史が新しいかも知れません、自然周期採卵についてです。
皆さんも、無排卵周期、といった診断を為されない限り、月に1回、あるいはもう少し頻度が少なくても排卵は起こっていますよね?
自然に排卵するただ一つの卵胞、これは卵子が入っている、卵巣にできる袋の様なものです、「自然周期採卵」とは、これを採卵することです。
採卵、これも後で詳述しますが、文字通り、卵胞の中の卵子を採取する、高度生殖医療ではメインイベントと言っても過言ではありません。
前回お話ししたように、これまでの高度生殖医療では、より強い卵巣刺激法が好んで行われて来ました。しかし、数年前より、強い刺激法による卵巣過剰刺激の問題と、強い刺激法ほど卵子の質が低下する傾向が指摘されるようになりました。
不思議に思われる、または反対に当然と思われるかも知れませんが、自然に排卵する卵子は、その質が良いことが多いです。これは年齢を問わず、と言うよりも、年齢が高いほどその傾向が顕著なのです。
年齢が高い、卵巣の予備能力が低下してしまった状態では、卵巣刺激を行うと、卵子の質が低下しやすいのです。
それに着目して、最近ではあえて排卵誘発剤を使わず、自然に排卵する卵子を採取して、体外受精や顕微授精を行う自然周期採卵が多くなってきています。
また、自然周期採卵を選ばれるのには他にも理由があり、コストが安い、通院回数が少なくて済む、これまで行ってきた自然周期のタイミング法や、人工授精とも治療法が似ており、高度生殖医療に入っても馴染みがある、などが挙げられます。
しかしながら、デメリットは無いのでしょうか。
これもいくつか挙げることが出来ますが、自然周期なので、自然に排卵することを抑制できないことがあります。ややこしい表現ですが、採卵前に排卵してしまうと採卵が出来ません。
このようなデメリットとメリットを天秤にかけて、自然周期採卵が良いかどうか、慎重に見極めて卵巣刺激法が決定されて行くのです。