20日のTBS、筑紫哲也のNews23でも、「お産難民続出!産婦人科医ゼロ時代」として特集が組まれていました。
http://www.tbs.co.jp/news23/onair/tokusyu/2006_07/20060720.html
医学部卒業後、医師国家試験に合格すると、晴れて「お医者さん」として認められ、医療に従事することになるのですが、内科を選ぼうと外科を選ぼうと、どの科に向いていようと、専門とする診療科を選ぶのは医師個人の自由なんです。勿論、後から変更も可能です。
コメントを書いて下さった方は、生まれ変わったら医師、それも産婦人科医になりたい、なんてとても嬉しいことを書いてくれましたが、現場では、理想と現実に隔たりがあるんです。「『社会貢献』よりも『医師になる事』が重要視されているのでしょうか」とも書かれていますが、現実は少しニュアンスが違うかもしれません。
なぜ産科医が不足しているのか、を産婦人科医師である私が率直に挙げると、
・ 勤務態勢が激務、これはさんざん報道にも取り上げられています。
・ 医療訴訟が多い
・ 医療給与体系、もしくは仕事に対する評価
だと思います。
「医療訴訟が多い」のは何故でしょう、二つあります。
まず、分娩は正常に産まれて当たり前、お母さん、赤ちゃんに問題が起こるなんて信じられない、といった妊娠・分娩に対するリスク意識が低いことでしょう。産科医療に携わっていると、勿論正常分娩が大多数ですが、経腟分娩が出来ないため、帝王切開になったり、妊娠合併症(流産、早産、中毒症、これは現在では妊娠高血圧症候群、と改称されました)がある妊婦さん、リスクの軽い、重い、の違いはあるけれど、怖いのが、これまで全く問題がなかった、異常が起こる徴候がなかった妊婦さんが、今日突然異常になることがあるのです、それもかなり重症になったり。
決して脅かすつもりではありませんが、日本の周産期死亡率、お母さんが亡くなる率、世界に誇るべき第1位です。お産でお母さんが亡くなった、なんてほとんど聞いたこと、ありませんよね。
もう一つは預かる命が二つであること。お母さんと赤ちゃんの双方を管理する科、他にありますか? 私のポリシー、お母さんと赤ちゃんが安全に、そして無事に退院されることに心血を注いでいます。でも、中には、どちらか一方が犠牲にならざるを得ない状況が起こり得るのです。それでも、どちらかに後遺症が残ったらノ。それは怒りが生じるのも理解出来ますが、不可避の状況も沢山経験してきました。ほとんど言いがかりに近い、苦情、私も経験がありますが、こういうものも最近では医療訴訟に発展しています。
「仕事に対する評価」は、人それぞれ感じることがありますよね、医療に限らず。働いても働いても暮らしはよくならず、ではありませんが、一般に社会の需要供給バランスを考えると、求められるものが多い職種はそれなりに給与面での保証があります、具体的には高給となります。また責任の重い職種ほどその傾向があります。
医療界ではそれがありません。全ての科が一律に医師国家試験取得後の年数に応じた給与となります。
例えば、9時17時で勤務を終えても8時から日付が変わるまで働きずくめでも、同じ。病院に対する貢献度が軽くても重くても同じ。
医は仁術、算術ではない、のが医師に対する先人の教えですが、実際モチベーションは下がります。
また、少しずれますが、儲からない病院は潰れて下さい、と言う方針は国の施策です。
このように、産科医に限らず、同じような現状から、小児科、麻酔科の医師が不足しつつあります。
有効で、具体的な打開策はあるのでしょうか。
ラベル:産婦人科医
一番考えやすいのが、人材の投入なんですけど‥
政府も真剣に考えてほしいものです。
薄利多売を目指すか、少数精鋭を目指すか、身体、命を預けるなら、どちらを選びますか?
少しは役立っているかな、と思うのは現在ユニセフ会員になっている事くらいしかありません。でも一般企業に勤務する者も必ず、このブログで取り上げられているような社会問題に貢献できる事があると信じようと思います。医療を求めているのは一般の人達なのであり、先生方を始め、医療に携わっている方々が求めている何かを提供させて頂いたり、協力出来る事が無いはずはないと。
筑紫さんのニュース私も見ました。あれでは過労死してしまいます。先生もそれに近い状況なんでしょうね。毎回コメントへのお返事など下さり、ただでさえ少ない睡眠時間を更に削ってしまった、、とまた心苦しくなりました。先生倒れないで下さいね。過労の原因が通常診療や開業準備でなく、ブログだったりしたら大変です。