福島・須賀川市に順天堂大学産婦人科医局の6名の後輩の先生達と1泊で研修旅行に行って来ました。腹腔鏡下手術機器では有名なジョンソン・エンド・ジョンソン社の研究センターです。
腹腔鏡下手術は産婦人科に限らず、外科や泌尿器科、内科でも行われている手術法で、患者さんへのストレスが小さく、手術の創(きず)も小さな低侵襲手術です。
産婦人科領域では、卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮外妊娠、多嚢胞性卵巣など、様々な病気に対して行われ、私の勤務する賛育会病院では、婦人科手術の過半数が腹腔鏡で行われています。
一方で、一般の開腹手術と比べ、手術手技は難しく、技術を要します。
先日も東京の大学病院で起こった医療事故の判決が出て、話題になりました。
我々医師は、通常手術など、練習が出来ません。上司、先輩の手術を見ながら技術を盗み、ようやく執刀が許可されるのですが、最初から巧くいくはずがありません。人の身体、病気、それぞれが異なることもその要因です。
初めて行う手術、これを患者さんに行う前に、腹腔鏡下手術では、ブタを用いたアニマルトレーニングをやっています。
ブタは人の身体に比較的似ており、卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮外妊娠などの手術をシミュレーション出来ます。
一頭のブタに、3〜4名の医師が執刀し、上に挙げた手術法をそれぞれが行います。研修は9時から開始し、15時頃まで、ただ我々も熱中し、時間オーバーしながら没頭していました。
最後は医療技術向上のために犠牲となったブタに黙祷を捧げ、獣医師により、安楽死が行われます。
ブタのお陰で、参加した若い先生達、みるみる技術向上が見られ、明日からの臨床にきっと役立つに違いありません。
もう一度、黙祷。
2006年07月17日
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余談ですが、ブタはどの程度洗われるのでしょうか。以前、ブタを満載し食肉市場に向かうトラックに遭遇しました。ブタや業者さんには申し訳ないのですが、本気で吐きそうな程、強烈な臭いでした。ちょっと洗ったくらいでは落ちないでしょうし、あの臭いの中で何時間も研修するのは不可能かと。クレゾールのお風呂にでも入れられるのでしょうか。これも切ないですね。。
私達はブタに似ているんですか・・・。私の手術もこうしたブタの犠牲あっての物なのですね。
私からも、黙祷。
少し、誤解されている部分、私の説明不足を補います。
「献体による解剖のみが練習の場」とあります、献体は医学部の基礎教育に義務づけられていますので、これを指しているのかも知れませんが、「解剖実習」は、臨床の練習にはなりません。医学部教育はもっとじっくりと慎重に行われるものです。「解剖実習」は、人体の正常の構造を知るのが主たる目的です。教科書を読んでも絵に描いたもち、幕末に杉田玄白らが「腑分け」と称して人体の解剖を行ったのと、大筋は変わりません。
ブタは無菌豚として売られているSPF豚です。なんでも豚は、もの凄く清潔好きな動物だそうですね。ですから研修をする手術室も、ほとんど無臭ですし、クレゾールの消毒など行われていません。
機器を扱う会社と医師の研修と、巧いギブアンドテイクが成立していると、私も思いました。
人と豚が似ているのは、同じ哺乳類だからです。勿論かなり違うところも多いんですよ、例えば子宮の形とか。
それを逆手にとって、子宮を卵管と見立てて、卵管手術のトレーニングに用いる、などの工夫をしています。
コメントをいただき、読まれている方の反応がとても嬉しく思います。これからも、どんなことでも構わないので、遠慮なく書き込んで下さいね。
僕の日記にもメッセージ、ありがとうございました。
シミュレーショントレーニング素晴らしいですよね。
アメリカでは、そのトレーニング自体が、
有料のビジネスになっていると聞きました。
教育ビジネスとして確立することにより、
より利用者の利便性と意義が向上するといいですね。
腹腔鏡、J&J、タイコでどっちがいいんでしょうね。
比較材料をクライアントに提供するのが僕の仕事ですが、
いま一つ、価格とDRの主観以上に、
比べる根拠をもてなくて、
悩んでる最中です・・・
これら、動物の犠牲を払わずに済む、トレーニングがもっと可能になると良いな、と思います。そしてその上で、アニマル・トレーニング、更に臨床へ、と研鑽を積むように近い将来はなるのではないでしょうか。
日本では、まだビジネスとして成り立ってはないようですが、充分あり得る話しだと思います。ただ、ビジネスとなった場合、そこまで高額の研修費を、勤務医が捻出することは出来ないと思います。日米比較では、日本の医療費が圧倒的に安価に抑えられている点を看過してはいけないと思います。
さて、J&J vs タイコですが、ここでどちらも推奨出来る立場には私はありません。宜しければ個人的に連絡を下さい。