2011年05月05日

妊婦さんや授乳婦さん、不妊治療中など、妊娠している可能性のある方が風邪を引いてしまった場合は?

妊娠している方、赤ちゃんにおっぱいをあげている方、また不妊治療中であったり妊娠をしている可能性がある場合、風邪を引いてしまった時にはどうしていますか?

おなかの赤ちゃんへの影響を心配したり、お子さんの育児に差し支えるため、早く治してしまいたいですよね。

当院を訪れるこれらの患者さんたちの考えは、大体以下に集約されています。

1.赤ちゃんへの影響を考え、薬は使わない、自力で治す。
2.市販薬を買いに行こうか、市販薬が安全なのか心配。
3.早く治すために、医療機関を受診し、処方してもらう。

まずは風邪に対する基本的な考えをおさらいします。

風邪はウィルスによって引き起こされる病気です。インフルエンザウィルスなど、幾つかのウィルスは特効薬があり、それを使うことで早く治ることもあります。
しかし、ほとんどの風邪の原因となるウィルスには、特効薬はありません。
それでも人体には免疫力があり、ウィルスはやがて身体から駆除されて風邪は治っていきます。誰でも経験のあることですね。

風邪ひいたら薬で治す、は当たり前の様な事ですが、実は基本的に誤っています。

ほとんどの風邪薬は「対症療法」にすぎず、上に挙げた特効薬を除いて、「根治療法」にはなりえないのです。
例えば熱があれば解熱鎮痛剤、咳には鎮咳剤、鼻水は抗アレルギー剤、胃腸障害には胃薬や整腸剤、といった対症療法がありますが、それは症状を軽くして、自然治癒するまでの時間稼ぎに過ぎないのです。

ちなみに風邪のときに抗生物質を希望する患者さん、また処方される先生方も未だにみられますが、既に通常の風邪に対する抗生物質は、なんら効果が無い、とは医学界では通説となっています。何故なら風邪の原因はウィルスであり、抗生物質は細菌に対する薬なので、風邪を治すことが出来ないからです。

もちろん風邪を契機に細菌性の気管支炎や肺炎を予防する目的に抗生物質が処方されることもありますので、あながち誤りではありません。特に黄色や汚い痰が出始めているときには、細菌感染が併発している可能性があり、抗生物質が有用なこともあります。


要するに、「風邪は薬で治る」という「神話」は、誤りと言っても過言ではありません。

では、我慢するしかないのか、と思われるでしょうが、辛い症状、それを我慢して他に困ったことが起こっているときには、どうぞ薬を使いましょう。

熱で眠れない、咳でお腹が張ってしまう、鼻がひどくてぼーっとして危ない、など、それは対症療法を施すべきです。

でも妊娠している、授乳しているんだから薬は使えないのでは? そう思われている方も少なくありませんが、どの産婦人科医も、妊婦さん、授乳婦さんに安全に使える薬、これは風邪薬に限りませんが、大体把握しています。最近では内科の先生方も薬を処方して下さいます。

例えば「アセトアミノフェン」(商品名 カロナールなど)は、アレルギー性がほとんどなく、妊婦さん、授乳婦さん、小児に安全に使える薬として、全医薬品の中でも国際的な評価がとても高い解熱鎮痛剤です。
ただし、処方された使用量を必ず守って下さい。使用量をオーバーすることは厳禁です。

また妊婦さん、授乳婦さんへの投薬の大原則です。

より少ない種類を、最低限の期間だけ投与する。

多くの種類を服用することによるリスクを低減します。また内服量に比例して起こるトラブルを回避します。


また薬を使う時期には、少し注意が必要です。

通常排卵するまでの時期は、薬に限らずレントゲン撮影に至るまで、ほとんど赤ちゃんへの影響はありません。これは薬にもよりますが、排卵から5、6日後の、着床期まで言えることです。

着床してから妊娠反応が分るまで、つまり排卵後2週間後までは「All or None」と表現される時期です。
この時期、薬や放射線の影響を受けた場合、不幸にも受精卵に悪影響があると、流産となります。
しかし、この時期の受精卵には、DNA、染色体が損傷しても治ることが知られています。そのため、この後の時期と異なり、赤ちゃんに異常を来たして生まれることが無く、流産してしまうか、健常なお子さんが生まれるか、それゆえに「All or None」と言われるのです。

そして妊娠反応が見られる時から約4週間が最も薬、放射線の影響を受ける時期です。
この時期は「臨界期」と呼ばれ、胎児の重要な臓器が形成される時期で、不幸な薬剤の影響を受けた「サリドマイド」の経験から、その時期が規定されたのです。
もちろん、この時期でも、ほとんど影響が無い、と言える薬も少なくありません。ですからこの時期でも、上に挙げた辛い症状、困っているときには遠慮なく相談してほしいのです。

臨界期を過ぎる妊娠週数8週になると、赤ちゃんへの影響はほとんど見られませんが、花粉症などで使われる抗ヒスタミン剤(第2世代以降)では、妊娠16週まで口唇口蓋裂が発症する可能性があります。
ポララミンと言う第1世代の抗ヒスタミン剤では、経験上口唇口蓋裂は発症しませんが、副作用の眠気がとても強い薬です。

授乳中のお薬はどうしましょう。妊娠中と同じように、使える薬、母乳からの分泌がわずかで、赤ちゃんに影響がほとんどない薬も沢山ありますが、心配される薬を服用した場合、おっぱいを搾乳して捨てる、と言う方法もあります。と簡単に言えない面もありますけどね。


最後に、最初に挙げた患者さんたちの考えに対するお答えです。

1.赤ちゃんへの影響を考え、薬は使わない、自力で治す。
辛い症状は我慢せず、使える薬を飲みましょう。

2.市販薬を買いに行こうか、市販薬が安全なのか心配。
市販薬はあまりお勧めできません。通常、総合感冒薬ですよね、これは風邪の諸症状に対して、効果があります。熱だけ困っている方に、咳止めや鼻を抑える薬、必要ですか? 上に挙げた妊婦さん、授乳婦さんへの投薬大原則、です。

3.早く治すために、医療機関を受診し、処方してもらう。
これは実は根の深い問題が孕んでいます。日本では国民皆保険制(だれでも保険診療を受けられる)が整備されているため、医療機関での受診、投薬が諸外国に比べて、とても安く済みます。これは素晴らしい制度なのですが、いわゆるコンビニ受診、気軽に受診することを招きかねないのです。
受診を否定するわけではないのですが、それくらいの症状であったら薬を服用するほどではないでしょう、とお話しすることも少なくありません。
また、今後悪くなりそうだから薬を下さい、という考えにも賛同しかねます。もうお分かりだと思いますが、薬は対症療法に過ぎないからです。症状が現れなければ、対症療法はできません。では諸症状に対する複数の薬を、、。もうお分かりですよね。


posted by 桜井明弘 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 産婦人科一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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