当院では、高度生殖医療で得られた受精卵は、妊娠率向上や卵巣過剰刺激症候群予防のため、原則全胚凍結を行っております。
受精卵凍結は、液体窒素中で行われ、従来凍結された受精卵は、他の方の受精卵と同じ液体窒素の中に保存されていました。
これまでの生殖医療に携わっている医療者の中で共通した認識として、-196℃の超低温の中では、細菌やウィルスも死滅するため、液体窒素を介した感染症はあり得ない、と言うものがありました。
しかし近年液体窒素中に感染した受精卵を胚移植することによって、感染が成立した報告があり、高度生殖医療にかかわる我々にとって憂慮すべき事態となっていました。
ここでいう感染症とは、血液や体液を介して感染する、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIVを指します。
当院ではこれまでもこれらの感染症を1年ごとに患者さんとご主人に採血して頂き、仮に感染症をご夫婦のどちらかがお持ちの場合、妊娠率の低下があるものの、他の方への感染を防止するため受精卵は凍結せず、採卵した周期に胚移植を行ってきました。
それでも未知の細菌、ウィルスや、血液検査の間に感染した場合、防ぎようがありませんでした。
この度、Vitrolife 社から、Closed法と称される「Rapid-i」というシステムが発売されました。
この方法を用いると、受精卵は液体窒素に直接触れることなく凍結保存することができ、これまで憂慮されてきた液体窒素中の感染を大幅に削減することが出来るようになりました。
既に当院ではこのシステムを導入しており、今後妊娠率の低下が無いことを確認しつつ継続して行きたいと考えています。
Rapid-iの器材に若干のコストがかかるため、凍結受精卵1個当たり10,000円の凍結管理料がかかっていましたが、Rapid-iの導入に伴い2,000円のコスト負担をお願いし、1個当たり12,000とさせていただきます。
詳しくは担当医、胚培養士にお尋ねください。
この記事は、当院の胚培養士と一緒に執筆しました。