2011年03月26日

妊娠中・授乳中の水道水摂取は安全なの?? 〜福島第一原発事故に伴う放射線被害について〜

通院されている妊婦さんから質問されました。果たして都内でも検出されている水道水の安全性は、どれくらいのレベルなのでしょうか。

色々な情報が出されています。政府や保安院、そして各自治体。我々産婦人科医のほとんどが所属している日本産科婦人科学会では、いち早く学会としての声明を出しました。少し詳しいですが、良くまとまっていて分かりやすいです。

これによると3/23の東京都金町浄水場の水道水の放射線汚染のレベルは、妊娠中毎日1リットル飲用しても、学会の安全基準の8%程度です。さらに国際的には安全限界を2倍にする動きがあり、また実際に赤ちゃんにはお母さんが取り込んだ放射線がさらに低地となります。影響があるレベルは、学会基準の10倍とする報告もあるようです。

すると、この水道水を妊娠中に飲用しても、お母さんが取り込んだ放射線量でさえ、赤ちゃんに影響のあるレベルの0.8〜4%に過ぎません。これが学会や自治体が、妊娠中に接種しても赤ちゃんへの影響が心配するレベルに無い、としている根拠です。

また実際に3/25には、水道水の放射線は、3/23に比べて低くなっています。

授乳へのレベルは、お母さんの摂取量のどれくらい低くなるか明らかではない部分もありますが、低くなることは間違いがありません。

これを受けて、学会では、妊娠中・授乳中の水道水の摂取は問題が無い、ただし他の飲料水がある場合は、万一のことを考えてそれを飲用するように、としています。乳幼児も同じです。

これらの情報は、今後変化する恐れもあります。特に降雨後は放射線レベルの上昇も予想されますので、最新の情報に注意してください。


このような動きの中で、頭の下がるニュースもあります。

まずは東京都内に持ち込まれた大量のミネラルウォーター。杉並区では職員の皆さんが、乳幼児を抱えるご家庭に、それぞれミネラルウォーターを配布したとのことです。
特に小さなお子さんがいらっしゃるお母さんは、店舗に駆けつけたり、長時間待つことは不可能です。このような優しい取り組みは大いに評価されるべきだと思います。

また実際に最も危険な原発で、放射線被害の拡大を防ごうとしている職員の方々には感謝を申し上げます。この原発事故で東京電力や原発に対する非難も上がってきています。被災された方や、上述したように不安を煽られた皆さんには、心から同情しますが、今この時間も東京電力の職員、作業員の方々は自らの危険を顧みず、まさに不眠不休、カロリーメイトしか摂れない状況で懸命の作業を続けている方たちが大勢いらっしゃいます。実際に被曝された方もいらっしゃいますし、自分の命と多くの我々国民の命を引き換えにするかのような、崇高な意識で作業し続けています。

確かに東京電力が、オール電化を推進し、国もIT化を推奨し、電気に頼る生活スタイルを作って来たことは否めません。が、我々国民がその恩恵を享受してきたのではないでしょうか。

東京圏に住んでいる我々の東京電力の電気を、東京電力圏外の土地に原発を建てさせて頂いて、その事故の直接的な被害を受けるのはその土地の皆さん。
計画停電や電車運行の不便さを日々感じながら、もう一度電力に依存した我々一人ひとりの生活スタイルを、また社会構造を見直して、考える必要を痛切に感じています。
posted by 桜井明弘 at 01:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 産婦人科一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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