2010年07月12日

第26回国際パピローマ学会に参加して

7月5日(月)より7月7日(水)まで、カナダ・モントリオールで開かれた第26回国際パピローマ学会(International papillomavirus )に参加して来ました。診療に支障を来たし、大変申し訳ありませんでした。

産婦人科医の中でも、この学会は「婦人科腫瘍学」の専門領域で、どちらかと言えば生殖医療や婦人科内分泌学、婦人科腹腔鏡下手術を専門とする私にとって、縁遠い分野であったとも言えます。
昨年末から開始されたHPV予防ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)が、今回の参加に大きく関与しています。

学会で見聞きしてきた事柄を、幾つか報告したいと思います。
ツイッターでも、「国際パピローマ学会 即席レポート」としてつぶやいていたので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょうか。

学会では、主催しているカナダや欧米の先進国からの報告が多かったですが、中南米、アフリカ、アジアの途上国からの発表も少なくありませんでした。
日本では世界的にもワクチン認可が極めて遅く、ましてや全面公費助成もまだ達成されていないため、この学会では日本からの発表がとても少なく、技術先進国としては大変残念で、これも新薬の承認に時間がかかる体制の負の部分だと感じました。

よって、日本ではまだ、公費助成を進めようとか、臨床的に果たしてどれくらいの効果があるのだろうか、みなさんも自分や家族が受けるべきか、などと議論されていると思いますが、国際学会では論点が大分異っていました。

国内で現在認可されているワクチンは、16、18型のHPVを予防する、「2価ワクチン」(サーバリックス)で、いずれこれに6、11型が加わった4価ワクチンが、認可される見通しです。おさらいですが、16、18は子宮頸がんを起こすハイリスクのHPV、6、11は低リスクに分類されますが、尖圭コンジローマを引き起こします。

今回の発表の中で、最もインパクトがあったのは、4価ワクチンのコンジローマ抑制効果。オーストラリアでは、HPV予防に4価ワクチンの全例助成が始まって3年。2年経過した所で既にコンジローマ発症率が18%から6%になったそうです。これはHPV予防ワクチンの、コンジローマ発症予防効果を実証する臨床データとして大きな意味のある発表でした。
コンジローマは子宮頸がんとは異なり、死に至る病気ではありませんが、しつこく再発する病変で、心理的にもダメージが大きい病気です。

その他、日本でも徐々に進んでいますが、性行動の多様化に伴い、オーラルセックスによるHPV陽性の口腔咽頭がんが増加傾向だそうです。ここには低リスクHPVによる良性腫瘍も出来ることがあり、呼吸困難や小児の突然死との関連との可能性も言われています。

また性行動との関連では、今のところ日本では余り発症が考えにくいですが、ホモセクシュアル男性のHPVによる、肛門がんも大きな話題の一つ。
日本はまだ女性の接種だけを啓蒙していますが、既に国際的には、男性に対する投与が話題です。
男性に対してHPV予防ワクチンを投与すると、男性の肛門がん、口腔咽頭がん、コンジローマの発症が明らかに低下する報告も相次いでいました。

その他、HPV感染から子宮の上皮内がん、進行がんへ進展する事が、喫煙と相関するという報告も注目されていました。
また日本でも子宮頚がん検査やSTI(性行為感染症、いわゆる「性病」)の自己採取キットが市販されていますが、HPV検査の自己キットも数多く展示。私は自己採取では、偽陰性が明らかに増えると思っていますので、基本的には反対ですが、キットによっては自己採取でも十分検査結果が信頼できるものもあるそうです。

その他、いろいろなテーマや議題がありましたが、多岐に渡るため今後アップしていきたいと思います。


posted by 桜井明弘 at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 子宮頸がん・HPV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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