通常卵巣は子宮と骨盤壁に固定されていますが、腫瘍が発育すると固定された部分を「茎」とし、腫瘍部分が捻じれ、これを茎捻転と呼びます。固定された部分からは卵巣を栄養する血管があり、捻転することにより卵巣が血流障害を起こし、しばしば激痛を起こします。救急疾患としても知られ、捻転してから時間が経過すると血流が途絶えるため、やがて卵巣が壊死し、この状態になると卵巣は摘出せざるを得ません。
皮様のう腫は薬物療法がなく、よって、皮様のう腫は、5cm以下は経過観察、5cmを超えたら手術適応と考えます。この何センチ、というのは、施設によって考えが異なり、7cmとしているところもありますし、4cmでも捻転を起こして痛みがあれば手術の適応です。
手術は腹腔鏡下に行われることが多くなり、通常、皮様のう腫のみ摘出し、正常卵巣部分は温存する、のう腫摘出術が行われます。閉経に近くなっている場合はのう腫ごと卵巣を摘出します。
再発率はあまり高くありませんが、皮様のう腫は両側の卵巣に発生することが多く、数年立ってから反対側に見つかったりすることもあります。頻度は低いながらも、60歳代くらいから悪性転化することがあり、この皮様のう腫が悪性化した卵巣がんは治療効果があまりよくありません。
よって閉経後では、むしろ積極的に手術が勧められることもあります。
また最近話題となっている「抗NMDA受容体抗体脳炎」についてはこちらをご覧下さい。
平成21年2月4日初出
平成31年3月20日補筆修正
卵巣のう腫の種類にもよりますが、いずれも再発の可能性は多からずあります。
どのような種類ののう腫だったのでしょうか。生理がなかったり、腹部が硬くなる、いずれも心配な症状です、頭にくる気持ちはわかりますが、早いうちに受診されることをお勧めします。
また何かありましたら教えてください。
インターネットでいろいろ見てもあまり脳が出てきたという話は聞きませんが珍しいのでしょうか?どのようにしてこのようなものが作られてしまったのか気になってしょうがないんです。
あと、皮様のう腫の場合再発はあまり多くないとのことでしたが、両側に発生することが多いとありますが、それぞれどれくらいの確率なのでしょうか?
主治医の先生に聞けないまま、あと1年後まで診察がないため大変不安に思ってしまいます。お忙しい中かと存じますが教えていただけるとありがたいです。どうかよろしくお願いいたします。
確かに皮様嚢腫は、多彩な組織を含んでいるため、一瞬、え、とたじろいでしまいますね。
ただ、どの組織も、完全なものではなく、どれも皮様、つまり皮膚と同じ起源の細胞から作られているものです。脳や神経組織が含まれていることも少なくなく、どのような組織があったか、なぜ出来るのかは、あまり問題となりません。
さて、再発率ですが、これも難しい問題です。皮様嚢腫が大きくなるのには、時間がかかるからです。
仰るとおり、多発性、つまり体側にあることも多く、今後の検診を必ず受けていって下さい。
検診必ず受けますね!!
のう腫が大きくなるには時間がかかるんですね。。。多発性つまり体側とはどういうことを言うのでしょうか?生まれつき卵巣に原因となるものが入っていたりするのでしょうか?
再発が怖くて常に気になってしまいます。
素人で全く分からず質問ばかりして申し訳ありません。
発生原因は、以前の記事
http://cl-sacra.seesaa.net/article/113633635.html
に書きましたので、ご覧ください。
偶発的に発生する病気のため、患者さんの生活習慣や、過去にきっかけがあったものではありません。
ご自身を責める様なお気持ちになる方もいらっしゃいますが、決してそのような必要はありませんので。
お忙しい中、本当にありがとうございました。
かつては、45歳くらいを過ぎた患者さんの子宮摘出の際には、「ついでに」卵巣も両方取りましょう、と提示されていました。子宮摘出の侵襲を考えると、卵巣を摘出するのは、とても容易いためです。医師の考えにも依りますが、卵巣摘出と同時に子宮摘出を提示してくださるのは、ある意味好意的なお話です。
子宮を摘出することで、女性のアイデンティティーが失われてしまう、と言う考えも分からないではないですが、医学的には、心配されている、「相手の方とうまく性交できるのでしょうか?更年期障害がひどいとか、男性化するとのことや、一気にふけるとか、膣の奥の縫合が出血するとか」は、全く御心配には及びません。
ぜひ、もう一度担当の先生とよく相談なさって、ベストと思われる治療をお受けください。
大変お忙しい毎日をお過ごしのなかコメントをくださり本当にありがとうございます。健康が1番ですし、担当のお医者様も私のことを考えて全摘を進めてくださったはずです。背中をぽんと押していただきたく相談していたのかもしれません。桜井先生のブログの脳腫の説明と今回のコメントで大きく不安だった事も解決してきました。担当の先生も何でも質問するようにと話してくださってるのですが後から後から湧き出る不安で夜も眠れなかった毎日でした。桜井先生のコメントで救われました。本当にありがとうございます。担当の先生とも再度話しをしましてしっかり治療したいと思います。HPで皮様脳腫を調べていた中、桜井先生のブログに出会えた事を心より感謝いたします。
昨年11月下旬に約9pのデルモイドを腹腔鏡手術で摘出(卵巣温存)した32歳既婚・子供なし(海外在住)の者です。
こちらの先生と医療システムに慣れず、また頼れる専門医を探して自分から会うことはできず・・・そんな時桜井先生のページにたどり着きました。
お忙しい中申し訳ないですが、そして長文になりそうですが、どうか質問させて下さい。
実はその手術の際、のう腫が破れ内容物が漏れたのですが、その事によってのう腫が出来やすくなることはあるのでしょうか?また他のリスクは考えられますか??
というのも、腹腔鏡手術だったのにも関わらず術後経過が悪く
(当時原因不明の腹痛。術後1週間後位から膀胱炎ではない排尿痛あり。そして徐々に歩くのも痛く、くしゃみ・寝がえりも激痛。)
エコーをとったところ、手術した側に5p位の血塊らしきもの?(押されると激痛)と反対側の卵巣に小さなのう腫が出来てると言われました。健康だった反対側の卵巣に術後1カ月もたたない位で・・・
血塊らしきの物については、最終的に手術で中を見ないと分からないと言われ、今年1月上旬に再度腹腔鏡手術を受けました。
結果は、血塊ではなく卵巣が変な所にストックしてたのが塊に見えてたのと、お腹の中の癒着が酷く(子宮と腸の癒着など)それも痛みの元だった様で、卵巣を定置に戻し、出来るだけの癒着を取り除き、小さなのう腫一緒にも摘出して頂きました。
2回目の術後の回復は良く、針に刺されるような痛みと相変わらずの生理痛はあるものの、これで普通の生活に戻れると思ってたのですが、4月位から特に横になると張り感が出てきました。
先月再度エコーをとってみたら、デルモイドがあった側にまたデルモイドが出来てる様です・・・ただしサイズはまだ小さい(2cm位)ので、100%ではない。2カ月後にエコーをとって、その時サイズが大きくなってれば間違いないとの事でした。(大きくなった際はCTもきっととる事になると思います。)
1回目の手術に関して、専門医の(執刀医でもある)先生は、術後洗浄を2回したしなんの心配はない。と言ってましたが、もうすでに再発?ですし・・・終わってしまった事ですが、どうしても内容物が漏れた件が引っ掛かります。
のう腫を発覚後、なるべく体を冷やさないようにして来たけど、再発は単にただ冷え症な私の体がのう腫を作りやすいのでしょうか。
仮にまた手術を受け、デルモイドを摘出しても、今後ずっとのう腫の事を心配していかなくてはいけないのでしょうか・・・
皮様嚢腫が破れても、再発や他の場所に出来ることはありません。良性疾患だからです。
反対側に出来たり、同じ側にできたり、と短期間にそんなに再発を繰り返す病気ではないので、病理組織診断(Pathological diagnosis)で、「Mature Cystic Teratoma」であることを確認した方がいいと思います。
また生活習慣が嚢腫を作るものではありません。ご自身を責めないでください。
初めまして、こんにちは。
先日、右側に4センチ程、左側にも小さ目(何センチかは聞いていません)の卵巣嚢腫(おそらく皮様嚢腫)が見つかりました。
6年前にも両方に卵巣嚢腫(皮様嚢腫)ができ、腹腔鏡手術をして皮様嚢腫のみ摘出しました。
私はもうすぐ29歳になり1年前から妊娠を希望しタイミング療法をしているのですが、ちょうど一週間前に卵管造影検査をしたばかり(ゴールデン期間に期待大)と言う事もあって、手術をするか否かを迷っています。
通っている病院では一人の先生には「妊娠前に手術を考えるべき」、もう一人の先生には「手術はまだ必要ない」と見解が分かれています。
いつ妊娠できるかも分かりませんし、素人の私には判断がつかず、とても悩んでいます。
桜井先生はどのようにお考えになりますか?
また血液検査(腫瘍マーカー)では特に問題はないとの事でしたが、5日後にMRI検査を受けるので、やはり今は避妊をしておいた方が良いでしょうか?
手術適応となる大きさには決まりが無く、施設基準が異なりますね。
MRIは妊娠初期への影響がまだよく分っていません。
よく先生とご相談なさってください。
はじめまして。
突然の書き込みを失礼致します。
先日、12cmの卵巣のう腫が発見されたのですが、手術までまだ先になると言われました。
捻転の可能性については、HPなどでも多くの人がおっしゃっていましたが、破裂の可能性はどうなのでしょうか?
捻転と破裂ではどちらの可能性の方が、高いのでしょうか?
卵巣のう腫、の診断だそうですが、内容は何が含まれている、と言われていますか?
水や脂、血液など、含まれているものによって異なります。
水や脂は破裂よりも捻転が多く、血液の場合は内膜症なので、あまり捻転することなく破裂が心配です。
12cmもの大きさになると、あまり捻転しにくくなりますが、手術は必要ですね。
突然すいません。
アドバイスを頂きたいと思い、書き込みました。
私は約1ヶ月前に皮様嚢腫を内視鏡手術で取り除きました。
もうほぼ平常通りに生活しているのですが、性行為はいつからしても大丈夫なのでしょうか。
糸が溶けるまで約3ヶ月から半年かかるそうなんですが。
コメントを頂けて安心しました。
私の主治医の先生は、とても優しい男性の先生なのですが、性交渉についてを面と向かって言うことが出来なくて悩んでいました。
昨日、術後1ヶ月目の診察を受け、『特に異常がないので通常の生活を送っても大丈夫』と言って下さいました。
次回の診察では、勇気を出して性交渉について聞いてみようと思います。
先生の話では特に触れられていないようですので、そろそろ大丈夫なのではないでしょうか。
デルモイドと言われ開腹手術予定です。
SCCが2.9と高く悪性転化が疑われるとのことでした。MRI・CTでは悪性所見はないということでしたが、悪性の可能性はかなり高いのでしょうか。心配です。
「悪性の可能性」と言われるととても心配ですよね。
悪性は画像所見が重要で、SCCが高くても良性の場合が多いです。しかし、悪性ではSCCが高いことが多いため、念のためお話しされているものと思います。