2009年02月01日

非配偶者間体外受精

日本生殖医学会が、婚姻関係にない「非配偶者間」の体外受精を認める方針を決めました。

しかし、日本産科婦人科学会は、厚労省部会の決定を保持し、あくまでも配偶者間に限る、としています。

本論に入る前に、これらの「学会」や「厚労省」、先立って卵子提供の半公的なシステムを構築するとの発表をし、既に非配偶者間体外受精を行っているJISART(日本生殖補助医療標準化機関)との関係を紹介します。

国の医療行政を司る機関が厚生労働省。日本産科婦人科学会は、国内のほとんどの産婦人科医が所属している団体で、簡単に言うとギルドです。日本生殖医学会は国内の産婦人科、泌尿器科、生殖医療に関係した研究者が主な学会員で、多くの会員は前出の日本産科婦人科学会にも所属しています。他に日本受精着床学会もありますが、会員層が医師よりも胚培養士や研究者の比率が生殖医学会よりも多く、しかし数年前から生殖医学会との合併も考えられています。
JISARTは国内の生殖医療を扱う施設が作った組織です。

このように、産婦人科医、生殖医療に携わる医師はいくつかの学会、団体に所属しており、それぞれの学会、団体の方針に沿った医療を行わなければなりません。今回の生殖医学会の発表は非配偶者間の高度生殖医療を容認、日本産科婦人科学会は厚労省における部会の見解どおり、これまでと同様認めない、としています。また国はこれを法制化していないので、事実上規制することができません。さらに複雑なことに、各学会の理事のなど上部組織のメンバーは異なる学会を兼ねていることがあります。

さて、「非配偶者間」の体外受精、とはどのような方法で、どのような方が必要としているのでしょうか。
女性因子としては、「卵巣摘出術後」「卵巣機能低下」で、卵子提供が必要です。また男性因子として「無精子症」。JISARTでは卵子を提供するのは35歳以下のボランティア、としていますが日本生殖医学会では兄弟や友人にも適応を広げる、とのことです。

卵巣を摘出された方はもちろんですが、卵巣機能の低下により排卵しない、排卵誘発剤を用いた体外受精を行っても卵子が採取されない、といった状態は、妊娠ができません。
これまで卵子提供を受けるには国内でできる施設は公にはないとされ、海外で受けなければなりませんでした。国によっては卵子提供がビジネスとして行われている場合があります。しかしながら渡航費用や滞在費、現地で受ける医療費など、想像を絶するコストがかかってしまいます。

国内のこのような患者さんを救うべくJISARTが上に示した卵子提供のシステムを作っているのです。

日本では生殖医療、ことに卵子提供や代理母の国民的論議が活発ではなく、まだまだコンセンサスが得られません。国や政治家もそのためか法制化に積極ではなく、学会による規制が存在するのみです。

JISARTの方針が時期を得ているのか、時期尚早なのか、時代が下らないとわかりませんが、日本生殖医学会の今回の声明により、非配偶者間体外受精が一気に加速する可能性があります。ぜひ法制化が遅れているわが国で大きな話題となることを願います。その上で国民レベルで議論され、さまざまな意見を集約した上でコンセンサスを得た法制化がなされるべきだと思います。不妊、生殖医療から目を背けるべきではなく、むしろ積極的に誰もが考えなければならないことだと思っています。


posted by 桜井明弘 at 23:54| Comment(5) | TrackBack(0) | 高度生殖医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
桜井先生こんばんわ。いろいろと教えて頂きありがとうございました。明日は、いよいよ主治医の所に受診となります。でも受診のために、あれだけ桜井先生に質問している時点で、もうどちらが主治医だか…という感じですね。明日の結果と最終的にどうするかは、また報告させていただきます。話は変わりまして、非配偶者間体外受精についてです。不妊で悩んだ経験があるとはいえ、出産までこぎつけた私がコメントして良いものか悩みました。でも、この問題の根底にあるのは不妊ですよね。不妊治療は妊娠というゴールが必ずあるわけではなく、希望どうりにいかないケースでは、夫婦で話し合いの元に、なんらかの結論を出す事になるわけです。私の場合、もう7年も前の事で、今だから言える事ですが、当時ここまで行って妊娠できないなら、別れて独身に戻ろう…と、ひそかに考えて、加藤レディースクリニックへ行く事を決めたのです。独身になれば、もう誰も、お子さんは?とは聞いてきません。そこまで追い詰められていたのです。でも実際にクリニックを受診してみて、私なんて場違いなくらい深刻な人がたくさんいました。日曜日の朝8時に来て4時間待ち。マスクをした体外受精待ちの夫婦の列、夫以外の精子を使用する事を反対されて泣いている女性、こんなにも不妊で悩む人が多いのかと衝撃でしたし、この光景を一生忘れないと当時思いました。非配偶者間体外受精が良い選択かどうかは、それは当事者である夫婦が決める事です。でも選択の一つとして当事者の夫婦が安心して治療が受けられるように、法制化は必要だと思います。
Posted by R.T at 2009年02月03日 21:15
R.Tさん、意義深いコメントをありがとうございました。

おっしゃるとおり、選択肢の一つとして、コンセンサスが得られれば、きちんと法制化し、暴走の無いように行われるべきだと思います。しかし、現段階では議論の俎上に乗せられることがほとんどありませんね。
Posted by 桜井明弘 at 2009年02月03日 22:39
先生、こんばんは。

今後、どのように法制化されたとしても、非配偶者間体外受精の、本当の意味での ”当事者”である、それによって生まれてくる子どもたちが、元気に、幸せに育っていける環境を大事にしていけたらいいですね。
Posted by 横浜住民 at 2009年02月04日 00:13
先日の不妊カウンセラー学会で根津先生の講演を聞きながら代理出産や非配偶者間体外受精についてずっと考えてきました。
代理出産は、妹や娘が私を必要とした際、行いたいと思います。

卵子提供については、私自身子どもがいますし、この仕事をしながら何か役に立てばと日々考えているのでもし可能ならば是非提供したいと考えています。精子提供と違い、リスクも多少あるので難しいですが。
このような意見をコメントですべきか迷いましたが先生の意見がお聞きしたくコメント致しました。
Posted by maedomari at 2009年02月04日 00:24
横浜住民さん、maedomariさん、ありがとうございました。

以前精子・卵子提供について書いたように、横浜住民さんと同じく、産まれたお子さんたちの将来、「出自を知る権利」などに思いを巡らせます。
http://cl-sacra.seesaa.net/article/31930439.html
今回の方針でも、この権利を保証することをうたっています。

maedomariさんの書かれた内容も、とても貴重なご意見ですね。ご自身の考えを半分匿名とはいえ、公にされるのはとても勇気が要りますね。
代理出産や卵子提供をしてあげたい、というお考えも、損得を抜きにした、人間としての博愛精神なのでしょう。
産まれ来る子供の将来を含めて考えて上げられたら、と思います。

お二人とも、とても難しいことに対して、真摯なご意見をありがとうございます。
Posted by 桜井明弘 at 2009年02月05日 00:20
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