この学会は、主に高度生殖医療を中心とした生殖医療とその基礎的研究が主に発表される学会で、私も大学院で基礎研究を行っている頃に基礎的な発表を行い、この学会で「世界体外受精記念賞」を受賞したり、また臨床研究も発表してきました。
今年は私の先輩で、敬愛するセントマザー産婦人科医院の田中温先生が学会長を勤められました。
賛育会病院勤務時代以降もほぼ毎年参加し、国内の先端研究の見聞を広めています。
今回もさまざまな刺激的な発表が多かったですが、特に加藤レディースクリニックの加藤修院長先生が発表された「自然周期・低刺激周期」での採卵、体外受精はとても興味深いものがありました。
産婦人科クリニックさくらでも、自然周期採卵やクロミッドのみによる低刺激周期採卵は行っており、良好卵を得ることができていますが、現在のところhMGやFSHによる刺激は通院できないため行えない、また刺激をしても多くの卵胞が発育せず、良好卵が得られない場合に行っていることが多いです。
診察室でも話していますが、自然周期ではほとんどの場合、一つの卵胞から一つの卵子のみが排卵されます。この卵は多くの発育予定の卵胞からセレクトされた良好な卵である、とも言えます。さらに注射製剤を用いないことにより、通院の手間やコストが省け、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)も回避することができます。
もちろん採卵する前に排卵してしまったり、卵が採取できない、採取できた一つの卵が受精・発育しない、といったデメリットもありますが、メリットも多いため、産婦人科クリニックさくら独自の方法を取り入れ、採卵する周期の選択として今後提示していきたいと思います。
また卵巣機能による卵の質の低下に対する治療法として、卵巣機能を改善するホルモン療法、カウフマン療法を取り入れていますが、DHEAなどのサプリメント、漢方療法など、もう少し検討した上で導入を考えていきたいと思います。
卵巣機能低下とともに高度生殖医療を行ううえでやっかいなのが採取された卵が「未熟卵」である場合です。採卵まで、発育してきた卵が最終的な成熟過程を迎えるのが、GnRHaの点鼻薬やhCGの注射薬によります。これは自然に排卵する周期におけるLHサージに相当します。
この刺激後36〜40時間で実際に排卵しますが、採卵は刺激後36時間で行います。つまり最終成熟刺激を行い、ぎりぎり排卵する直前に採卵するのです。
確かにこの時間は理論的ではありますが、中には36時間後で排卵してしまっている場合もあります。つまり個人差、周期差があります。
未熟卵が採取できるのは、この排卵してしまっている、とは反対にもうすこし卵胞内で成熟するのを待てばいいのかもしれません。
しかし、採取された未熟卵を卵胞内に戻すわけにはいかず、体外で培養をするしかありません。体外培養はなかなか良好な成績が得られないのが難しい点です。
今回学会で得た知見を、産婦人科クリニック さくらで行う生殖医療に活かしていきたいと思います。
これを機に、さらに妊娠率が上がることを願ってます。
先生、頑張ってください!
またコメント下さいね。
未熟卵は体外培養が困難で、その対策が問題になるとのことですよね。
確かに体外での培養期間が長くなることは、いろんな意味で問題が生じやすい(関門が多い)・・・ということは少しイメージしてもわかるような気がします。
しかし、一方で、PCOの患者さんに未熟卵体外受精が勧められることがあるようですが、一つの治療法として確立されたものなのでしょうか?
教えてください。
PCOS(多嚢胞性卵巣)は難治性の排卵障害を来すことがあります。排卵障害は体外受精においても大きな問題です。
一方で多嚢胞、と名前を付けられる多くの嚢胞の中から未熟な卵胞が採取できることがあり、成熟卵が採取できなければ最初から未熟卵を採取することを目的に行います。
今回の学会でも数題発表がありました。
ただ、ここまでの治療が必要である場合はそう多くはなく、PCOSの体外受精におけるオプション的な存在と考えてください。あくまでも成熟卵がえられる方はそのほうがいいです。