2008年08月10日

卵管因子(卵管性不妊)の病態

様々な不妊因子の中で、卵管に原因があるものを「卵管因子」と呼び、卵管因子による不妊を卵管性不妊と呼びます。

卵管因子は、卵管閉塞、卵管周囲癒着に大きく分けられますが、卵管閉塞の原因が卵管周囲癒着であることが多く、厳密に分けないで考えることもできます。

卵管は妊娠にとって欠かせない場所です。
腟内に射精された精子が子宮内をのぼり、卵管を通過し、卵管膨大部に至ります。排卵された卵子は卵管采から卵管内に取り込まれ(Pick Up)、卵管膨大部に至ります。この卵管膨大部で卵子と精子が出会い、受精が起こる、その受精卵が赤ちゃんになるわけです。

つまり精子側からも、卵子側からも卵管は最低限、通っていないと妊娠は成立しないのです。卵管閉塞が、絶対不妊である理由です。

卵管は通っているものの、卵管の周りに癒着した組織が形成されている場合、卵管の通過性は劣ります。また卵子を取り込む卵管采が障害を受けている場合も同様です。ただし、卵管が通っている卵管周囲癒着では、妊娠できることもあります。この場合、絶対不妊ではなく、相対不妊、妊娠しにくい状態、といえます。

卵管因子の原因、治療法は別に書きますが、もうひとつ知っておきたいのが、卵管周囲癒着がある場合、妊娠に至っても子宮外妊娠が起こる恐れがあります。

卵管膨大部で受精した卵は、1細胞が2細胞に、2細胞が4細胞に、というように細胞数を2倍ずつに増やしながら卵管内を子宮に向かって移送されます。
やがて5日ほど後、胚盤胞と呼ばれる状態に至り、子宮に着床します。

卵管周囲癒着は、この受精卵の移送を妨げる可能性があります。つまり移送障害のため、途中で卵が胚盤胞になり卵管に着床してしまうのです。これが卵管妊娠、子宮外妊娠の中で最も多く見られる形です。妊娠反応が陽性に確認されても子宮内に着床したのを確認する、つまり子宮内に胎のうが見られるまでは、慎重に診察を要します。
posted by 桜井明弘 at 23:58| Comment(2) | TrackBack(2) | 生殖医療(不妊治療)一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
桜井先生こんにちは。
さっそくありがとうございます。
大変興味深く、また分かりやすく読ませていただきました。
質問ですが、卵管に癒着がある人は、どれぐらいの割合で子宮外妊娠するのでしょうか?
妊娠したとしても、子宮外妊娠が不安です。
Posted by TY at 2008年08月11日 12:00
TYさん、こんばんは。前回書いたようにこのシリーズ、3部作になりますので、また更新します。

子宮外妊娠のリスクですが、はっきりと分かりません。
子宮外妊娠の原因の半数が卵管因子だと思います。
反対に卵管因子を持っている人の総数が把握できない(手術などを行わないと実態が掴めない)ため、「卵管に癒着がある人は、どれぐらいの割合で子宮外妊娠する」かは不明です。

卵管因子の有無にかかわらず、妊娠された暁には正常妊娠か、子宮外妊娠ではないか、といった視点で診療は行います。

子宮外妊娠のリスクが大変高い方には、体外受精などの高度生殖医療、特に胚盤胞移植を行うこともあります。
Posted by 桜井明弘 at 2008年08月11日 21:11
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