2008年07月06日

卵巣機能異常とその診断 〜卵巣機能不全・排卵障害〜

卵巣機能異常、と言っても、一言では言い表せない、多くの症状、そして多くの原因があります。
起こっている症状から、予測される原因を追究し、治療を行っていく、という順で治療は進みます。

前回のイントロダクションで述べたように、正常卵巣機能、
・排卵日が月経開始後10〜20日目に起こっていること
・高温期が10日以上持続していること
を逸脱している場合や不正出血、月経期間が長い遷延月経、出血量が少ない過少月経などの症状が見られる場合、排卵障害や卵巣機能不全を疑います。

もちろん、これまでずっと順調だったのに、今回初めて上に挙げたような異常が見られた、私は異常なのか? と思い悩むことはないです。1年に数回、位の割合で異常が見られることがすなわち「異常」ではないからです。

ただ、自分ではどうしても正常と思い込もうとしている、反対に異常と判断している、というように、ご自身で「正常」「異常」を見極めることは難しいことが多いです。このあたりは我々の出番だと思います。ぜひお手伝いしたいと思います。

ご自分で出来る最も有用な検査は、言うまでもなく基礎体温です。基礎体温だけで全てが分かるわけではありませんが、日々の変化、排卵の有無、卵巣の機能をある程度評価できます。基礎体温はどうしてもつけられない、続かない、という方、体温を測った日だけでも表にしませんか? もっと譲って(?)出血のある日付だけでもメモしてみてください。
診察所見と併せて診断に役立てることが出来ると思います。

次回は排卵障害について触れたいと思います。

posted by 桜井明弘 at 23:22| Comment(7) | TrackBack(2) | 卵巣機能不全・排卵障害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
桜井先生こんにちは。
最近、他の病院から先生のところへ転院したものです。
私は年に数回ですが、過小月経だったり、無排卵、生理が20日でくる・・・
など、おかしいと思う月があります。
前の病院では「様子を見ましょう」の一言で終わってしまい、不安に思っていましたが、このブログを見てほっとしました。
ありがとうございました。
ちなみに私は卵管に癒着がありますが、これらのことと卵管癒着は関係ありますか?
Posted by TY at 2008年07月07日 12:17
TYさん、こちらでは初めてですね。書き込みありがとうございます。

これまでの診察であまり月経不順について取り上げませんでしたね。今手元にカルテがないのですが、頻繁に起こっているのではないので、おそらく正常範囲、と判断したような気がします。私も詳細に取り上げて説明をしなかったような気がします。反省します。
卵管はホルモン分泌に関与せず、またホルモンの明らかな標的器官ではありません。ようするに視床下部ー下垂体ー卵巣ー子宮系から離れ、役割としては精子を通す、受精卵形成の場所、また受精卵を子宮に移送させるという機能です。よって卵巣と密接な関係にありながらも卵巣機能とは無関係。でも妊娠には協調して働くのです。

また診察の際にご質問がありましたら、どうぞご遠慮なくしてくださいね。またこのブログでもご質問やご意見、お待ちしていますので、今後もよろしくお願いします。
Posted by 桜井明弘 at 2008年07月08日 00:27
診察の時には月経不順の話は出さなかったと思います。
というか卵管癒着の方が気になっていて忘れてました。
なのでお気になさらずに。
卵管癒着とは無関係、よく分かりました。
ありがとうございました。
明日またお伺いします。
Posted by TY at 2008年07月08日 12:01
桜井先生こんにちは。
高温期と黄体ホルモン値についてご質問させて下さい。
今回、高温期が17日間あり妊娠をかなり期待していたのですが
生理がきてしまいました。(超音波での排卵チェックを行い、排卵予想日の翌日からを高温期1日目と数えています。)
今まではいつも高温期はほぼ正確に14日間でした。
今回17日間続いたということは妊娠初期の流産だったのでしょうか?
それとも排卵日が少し遅れたと考えたほうがよいのでしょうか?
その際、超音波検査で「明日が排卵日」と診断された場合でも、排卵が遅れることもあるのでしょうか?
また今回は排卵予定日後基礎体温がなかなか上がらず高温期8日目でやっといつもの高温期の体温になりました。
また高温期7日目の黄体ホルモン値も正常値ギリギリでした。もし今回は排卵が遅れたと考えると黄体ホルモンの測定ももう少し後にしたほうが高温期の正確な黄体ホルモン値が出たのでしょうか?(排卵後の黄体ホルモン値の推移が良く分からないので申し訳ありません。)検査で黄体ホルモン値が正常ギリギリだった為、黄体不全気味でその為着床しづらいのかなと心配になっていました。(先生には自然妊娠が可能とおっしゃっていただいたのですが)
次回来院の際お聞きすれば良いのですが、まだ来院まで日にちがあるので気になり、ご質問させていただきました。
分かりづらい文章で申し訳ありません。
どうぞよろしくお願い致します。
Posted by at 2008年07月09日 12:22
高温期と黄体ホルモン値についてご質問いただきましたが、我々が説明している内容を十分ご理解いただいているようですね。

排卵日の判定は超音波で行う、尿検査で行う、血液検査で行う、と違いがありますが、後者ほど精度が高くなります。
ただ、高温期の数え方が体温が高くなってから、とあるので、少なくとも排卵から17日以上経過していたのではないでしょうか。

不妊治療に限らず、普通の月経、と思われる中にもある程度の初期流産が含まれている、というのは、産婦人科医がもつ一定の見解です。

妊娠反応や血液検査で妊娠性ホルモン、hCGが証明されれば上記の診断となります。
これはとても大切なことで、流産になってしまったことは残念ですが、その方法で妊娠が出来ることの証明になります。
今後も同様の状態がありましたら、出血が起こるのを待たずにぜひ来院してください。

また、黄体ホルモンの解釈ですが、書き込みどおりの解釈もできます。
また次回の外来でご質問ください。それまででしたら、こちらで返答させていただきます。
ご質問ありがとうございました。
Posted by 桜井明弘 at 2008年07月10日 23:55
ご説明いただきありがとうございました。
次回同じような状態がありましたら、
なるべく早く受診しようと思います。
また外来時にご質問させていただきます。
よろしくお願い致します。

前回名前を記入し忘れ失礼致しました。
Posted by SA at 2008年07月14日 12:17
SAさん、我々も皆さんに気軽に質問していただけるよう、これからも努力していきたいと思います。また、受診時の説明に不足があったかと思います。是非これからもご意見ください。皆さんとともによりよい医療サービスを提供できるよう考えていきたいと思っております。
Posted by 桜井明弘 at 2008年07月15日 01:10
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