この春、日本産科婦人科学会は、34歳未満の体外受精では、原則移植する受精卵(胚)の数を一つとする、いわゆるSETを行うよう、会員向けに会告を出しました。
産婦人科クリニック さくらでは、昨年の開業以来、高度生殖医療における胚移植数は原則一つに限定していますが、いよいよ法的な効力はないものの、一定の規準が設定されました。
この研究会では、東京HARTクリニックの後藤哲也副院長先生が、初回体外受精と多胎妊娠、SETの妊娠率について触れられました。
興味深いデータとして、米国疾病センターが出した、34歳未満の高度生殖医療で、移植胚数1個と2個で妊娠率が変わらない(1個で47.4%、2個で51.8%)、もちろん多胎率は1個ではほとんど見られないものの、2個では38.8%%と高率になることを引用されていました。
高崎ARTクリニックの理事長、佐藤雄一先生は、以前にご紹介したように私の親しい先輩ですが、同クリニックで行っている自然周期採卵に限定した成績を発表されました。自然周期では、自然に排卵してくるため、採卵時に排卵後であったり、得られた卵が未熟卵であったり、とまだ改善の余地があるものの、多胎妊娠は当然ほとんどみられません。また排卵誘発剤を用いないため、低侵襲で安価な体外受精を実現している、ということでした。
杉山産婦人科の杉山力一理事長先生は、SETを行ううえで、患者さんに行ったアンケートをもとにSETに対する患者さんの考え、気持ちを発表されました。
また基調講演として、国立成育医療センターの周産期診療部胎児診療科の林聡先生が多胎妊娠の問題点を、周産期治療に当たるサイドの意見として発表されました。
同センターで出産される二絨毛膜性双胎、いわゆる二卵性の双子妊娠ですが、早産率がなんと60%にも上るそうです。他の合併症やトラブルにも触れられていましたが、私も開業前に勤務していた賛育会病院で周産期医療に当たっており、同様の印象を持っていました。
多胎妊娠では、早産だけでなく、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病などの重篤な妊娠合併症が起こりやすく、また帝王切開での分娩率も上昇します。さらに社会的問題として、慢性的な新生児センター(NICU)のベッドが不足している状況も、多胎妊娠が大きなウェイトを占めています。
高度生殖医療は、移植する卵の個数をコントロールすることで、胎児数を決定できる方法です。産婦人科クリニック さくらでも、今後もSETを基本に行って行きたいと考えています。
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高崎ARTクリニック見学
・桜井加那子医師記事「今月のきらきら人」、アクセス、コメントを頂いています。
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