卵巣に内膜症病変が発生し、卵巣の中に血液がたまる病態があります。古くなった血液が、あたかもチョコレートを融かしたように見えるので、「卵巣チョコレートのう(嚢)胞」と呼ばれます。病気の名前にお菓子の名前が付くなんて、最初は珍しいな、と思いましたが、国際的にも「Chocolate cyst」でも通じます。
チョコレートのう胞は、その血液がたまるため、卵巣が腫大します。しかし、他の卵巣のう腫に比べて、茎捻転は起こしにくいです。茎捻転とは、卵巣のう腫がある程度大きくなると、一般的には5cmくらいからですが、卵巣の付け根の部分を「茎」とし、のう腫が回転(捻転)することで、この「茎」には卵巣を栄養する血管がありますから、卵巣に血液がいかなくなり、悪い言葉で言えば、卵巣が腐ってしまいます(壊死)。このときに非常に強い痛みを突然起こすことがあり、これを卵巣のう腫茎捻転といいます。
チョコレートのう胞は内膜症ですから、前に書いた「
癒着」を多かれ少なかれ伴うことが多いです。チョコレートのう胞は、周りの卵管、子宮、骨盤壁、腸管に癒着していることが多いので、茎捻転はほとんど起こしません。
しかし、チョコレートのう胞が出来ることによる圧迫された痛み、周囲の癒着による痛み、茎捻転ではなく破裂する可能性、チョコレートのう胞があると排卵される卵子の質が低下する可能性、わずかながらもチョコレートのう胞の
がん化も言われており、チョコレートのう胞は治療の対象となることが多いです。
治療の適応は、症状と大きさによります。
痛みがある場合、まずは鎮痛剤を使いますが、鎮痛剤が効かなければ、内膜症に対する治療の適応です。不妊症の場合、卵巣チョコレートのう胞 また大きさはおおむね5cmくらいを超えた場合に治療の適応となります。
治療は、「
子宮内膜症の治療、ラインナップ」をご覧下さい。
その他、最近チョコレートのう胞のがん化がよく言われるようになりました。
年齢や大きさでがん化のリスクが異なります。チョコレートのう胞全体からみると、がん化するのは僅かですが、他方、卵巣がん全体でみると、40〜50歳代でチョコレートのう胞ががん化した方、決して珍しくないのです。
がん化については、別に書きました。
(平成30年10月26日修正)