2008年07月03日

卵巣膿瘍 〜卵巣チョコレートのう胞への感染〜

卵巣膿瘍(のうよう)とは、卵巣に膿、つまり「うみ」がたまった状態を指します。

卵巣はお腹の中にある臓器で、外部との接触もないため、あまり感染を起こすところではないはずです。しかし一度感染を起こすと、なかなか抗生物質も効きにくく、手術的に膿を排出しなければならないことも多いです。
原因の第一に卵巣チョコレートのう胞が挙げられます。
細菌はどこからやってくるのか、血液に乗ってわずかな細菌が卵巣までやってくるのか、隣接する腸の壁を通じて細菌が入り込むのか、その患者さんによっても異なるでしょうし、まだ定説があるわけではありません。よって防ぎようもないのですが、チョコレートのう胞は卵巣に血液が貯留した状態なので、細菌にとっては格好の栄養源があることになります。

ほかの原因に、体外受精を行う際の採卵があります。経腟的に卵巣にある卵胞を穿刺するため、腟内の菌を卵巣に移植するかたちになるのです。ですから採卵前には、しつこい、と思われるほど腟内の消毒、洗浄を繰り返していますし、採卵の後に抗生物質を感染予防の目的に内服していただいています。

症状は腹痛、発熱で、進行すると腹膜炎に伴い全腹部に痛みが波及し、あたかも虫垂炎に伴う腹膜炎のようになります。

治療の第一は卵巣にたまった膿を排出する手術、ドレナージ術ですが、まず抗生物質の投与が試みられることが多いです。抗生物質だけで炎症が治まり、手術を避けることもできますし、手術をするにしても、細菌感染が沈静化してからのほうが、術後経過を改善し、再発を少なくします。
ただ、手術的な方法に踏み切るタイミングを逸すると、感染が重症化します。現在でも重症感染から敗血症、多臓器不全やショック、そして不幸な結末を迎えることもあるのです。よって、治療法の選択とそのタイミングはとても重要で、また難しいことがあります。

また手術法もドレナージ術にとどめるか、可能であれば卵巣摘出を行うかという選択、卵巣摘出を選択できない患者さんで、残すべきか切除すべきか、の選択もあり、その患者さんの将来も見据えて多くの問題点を抱えた疾患といえます。


関連記事補筆修正
子宮内膜症 〜子宮内膜症って? 今後の記事のご案内〜
posted by 桜井明弘 at 01:20| Comment(9) | TrackBack(0) | 子宮内膜症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする