一般的に
子宮がん検診、と言うと、
子宮頚がんの検診を意味します。
子宮は子宮体部、頚部に大きく分かれ、前者は子宮の本体とも言うべき、赤ちゃんが宿る部分、また頚部は「子宮の出口」、と表現しますが、生理の血液が出たり、赤ちゃんが産まれてくる部分で、腟の一番奥にあります。
どちらも癌ができると、
子宮体がん、子宮頚がん、と言うように、その発生した部分の名前で呼ばれますが、子宮がんとひっくるめて言っても、体がんと頚がんは全く異なるものです。
今日は頚がんについて書きます。
HPV、ヒトパピローマウィルス、というウィルスの名前を聞いたことがありますか? ウィルス、は、インフルエンザやHIVなどでも知られるように微生物の一種ですが、細菌、いわゆるばい菌、と比べても、圧倒的に小さい生物です。
このHPVの感染が、子宮頚がんの原因として特定されました。
HPVは性交渉で感染します。極端に言えば、性交渉の経験が無ければ頚がんにはならない、反対に経験があれば、若くても頚がんになる可能性がある、ということを意味します。
性交の相手が多ければ多いほど、感染のリスクが高く、また感染してもすぐに癌になる訳ではないため、初めての性交渉が若ければ若いほど、癌が発生するリスクが高い、ともいえます。
子宮頚がんの若年化が問題になっていますが、原因として性行動が若年化しているからです。
このように子宮頚がんの原因が特定され、若年化しつつある現状をふまえて、数年前から子宮がん検診の公費負担、つまり市町村や区が主体となって行われるがん検診も、「20歳以降」と、がん検診の対象年齢としては驚くほど、若い人たちが検診を受けることが出来るようになりました。
これ自体は歓迎すべきことですが、残念なことに、「2年に1回」と、公費負担を受ける機会は少なくなってしまいました。
この「2年に1回」を、「2年に1回でいいんだ」と、安心してしまう方もあるでしょうが、がんの発生を、前がん病変である「異形成」の状態か、上皮内がん(早期がん)の状態で発見するためには、2年に1回では時間が開き過ぎです。
正常の細胞はいきなりがんになるわけではありません。HPVの影響を受けて、最初は「異形成」という病変になり、さらにがん化していくのです。
我々産婦人科医の常識では、1年に1回の検診を受けていれば、進行がんになる前に見つけることが出来ます。早期がんである上皮内がんまでの治療と、それより進行したがんの治療は、大きく異なります。前者では円錐切除術と言う腟式手術で、入院期間が2〜3日ですむ施設もありますが、後者では、広汎子宮全摘術という、婦人科領域では最も大きな手術の一つが行われ、更に術後に放射線療法、最近では術前に化学療法、いわゆる抗がん剤の治療を行うこともあります。全く両者の治療法は雲泥の差があります。
検診のこと、皆さんご存知でしたか?
HPV感染による子宮頚がん発がんのこと、検診によってなるべく早い段階で発見すべきこと。
では、HPVを予防する方法は?
難しいのは、これが性交で感染することは分かっているものの、いわゆるSTD 、性行為感染症として捉えられないことです。それだけ、誰が持っていても不思議がないくらい、ほとんどの人が持っているからです。
要するに予防法は、コンドームで避妊をする、というくらいですが、赤ちゃんが欲しい方は、感染のリスクを避けられませんね。
性行動が日本よりも活発な米国では、より深刻な問題であるため、かねてより開発中であった
HPVワクチンが臨床的にも使われ始めました。小学生くらいの女の子にワクチンを打っておくもので、既にHPV感染をしたかもしれない性交経験のある人はワクチンの効果はありません。日本では、小学生女児に、将来性交によるHPV感染のリスクを減らすためにワクチンを、という目的ではどうでしょうか、なかなか受け入れる土壌をまた形成するのに時間がかかりそうですが、上記リンク先のように既に国内でも承認申請が行われました(2008年5月6日補筆修正)。
子宮頚がん検診の重要性、必要性がわかっていただけたでしょうか。
以前に書いた「
市がん検診」のご案内を書いたブログへの反響を見て、意外とがん検診の重要性が知られていない、こんなに大切な検査なのに、と常々の診療の中でも感じています。
私の友人である、
江夏亜希子さんのブログ、大変人気があるのですが、ここでも、子宮頚がん検査の啓蒙をされています。ZARDの坂井泉水さんの事件の際に書かれました。是非ご一読を。